ヨナ達がグラッスへ向かっている中、ギン達はプレツに残り魔族の動きに備えていたが魔族の情報は得られずにいた。
また、プレツと帝国との同盟交渉も帝国内の混乱が影響しており、難航していた。
そんな会話をしている中、ギンがルルーに尋ねていた。
「ルルー、ムルカ殿はどうしている?あの人も書物を調べているのか」
「ううん、ムルカ様は今は神官戦士に稽古をつけているわ。来るべく戦いに備えるためだって」
「来るべく戦いか、できりゃあ帝国の協力も欲しいよな」
ブライアンがそうぼやくとルルーが言葉を返す。
「そうね、でも仮に帝国との同盟が上手くいっても帝国がどれほどの戦力を出せるかは未知だわ」
「俺達との戦いだけでなく、皇帝ギガスの死が独立や離反を招き、俺達と戦っていた頃より戦力が落ちているのは事実だからな」
改めて現在の状況を確認し終えると帝国と戦っていた頃より過酷な道を歩んでいるかも知れないことを一同は実感し、一瞬、静かな空気が流れるが、とっさにルルーが話題を変えて一同に言葉を発する。
「そうだ、最近スップの兵団が人員の増加に伴って防衛の範囲を街の外にも広げたのよ」
「まあ、いつどこで魔物が動くか分かんねえし、いいんじゃないのか」
ブライアンとルルーの話を聞いてからギンが自らの考えを口にする。
「魔族がどれほどの戦力を有しているかは不明だが、奴らはあまり表に出ずに暗躍している印象がどうにも強い」
「確かにそうね、私達が遭遇した回数も少ないし」
「奴らはどうにも帝国の強大な戦力を警戒していたふしも見られた。俺達と帝国の潰し合いを期待していたが、俺達と帝国が会談をしたからギガスの殺害に留めてそれ以降大きな動きを見せていないな」
「そうすると彼らだけでは人間の国家全てに対抗するだけの戦力を用意できない可能性もあるから先に彼らの根城を見つければ勝機はあるかもしれないわ」
ルルーの言葉を聞いて、エイムも自らの考えを発する。
「それまで私達はしっかり備えて戦えるようにしなくちゃですね」
「そうね、じゃあ私はまた部屋に戻っているから、またね」
そう言ってルルーはテーブルを離れて自室へと戻っていった。
ルルーの姿が見えなくなるとギンが言葉を発する。
「俺達は少し街の様子を見回ってみるか」
「いいけどよ見回りは兵団がしてくれてるし、わざわざ俺達が行く必要はあるのか?」
「エイムがいれば人間に擬態した魔物も発見しやすいだろうし、できることはしたほうがいいだろう」
それぞれができることを行い、平穏を取り戻すべく奮闘する。