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第10話 未来へ

 半年後。


「ほう、随分立派になったな、二人とも」


 修行を終えた二人は無事に再会を果たした。

 トウヤは宣言通り、霊力を自在にコントロールできるようになっていた。

 顔つきも逞しく成長し、以前より人間に近い変化ができるようになっていた。


 楪は権現より正式に巫女として認められていた。

 元々才能に恵まれた彼女ではあったが、ここ半年はメキメキと力をつけており、いずれ後継として神籬家を支えていけるだろうとのことだ。


 半年ぶりに会う二人は、何を言ったらいいのかわからず困惑していたが、見かねた雅が楪の背中を押した。彼女は我慢できずにトウヤの胸に飛び込んだ。

 二人の気持ちはより一層強くなっていた。強く抱きしめ、それを確かめ合った。


「これからはずっと一緒だよ。トウヤ――」

「あぁ、もうこの手は離さない。君を愛している、楪――」




 それから三年後。


 そよそよと風が吹き抜ける森の中を、小さな男の子が走っている。


「おーい! 一人で行くと危ないよー!」


 遠くから呼びかける女性の声。


「平気だよー! ……うわっ!」


 太い木の根に躓いて倒れそうになる。


「おっと」


 大きな体の男性が、男の子を受け止める。


「まったく……だから危ないって、お母さんが言っただろう」

「ご、ごめんなさ〜い……」


 母親が二人の元へ小走りでやってきた。


「ありがとうあなた。ちょっと目を話すとすぐにどこかに行っちゃうんだから……誰に似たのかしら」

「お転婆なところは、君かな」

「たしかに、そうかも……」

「でも、優しいところも君そっくりだね」


 父親は男の子を抱え上げる。


「さぁ、そろそろ屋敷に帰ろうか」



 帰り道、男の子は父親の腕の中で寝てしまった。

 頭部から生えた耳が、へたりと前に垂れている。


「……耳の形は、俺の方に似ちゃったな」

「そうね。そろそろこの子も修行が必要かしら」

「僕らの子供なら、きっと大丈夫だよ」

「だといいのだけど」


 母親はふふっと笑った。


「そうだね。振り返れば色々あったけど、今日までなんとかやってこれたなぁ」

「だけど、これからもっと忙しくなるんだから。頑張ってね、パパ」


 彼女はそう言って、大きなお腹をさすった。


 二人は願う。

 この幸せな時間が、少しでも長く続きますように。

 私たちの子供が、少しでも平和な世界で暮らせますように。


 満点の星空に、一筋の流れ星が見えた。

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