半年後。
「ほう、随分立派になったな、二人とも」
修行を終えた二人は無事に再会を果たした。
トウヤは宣言通り、霊力を自在にコントロールできるようになっていた。
顔つきも逞しく成長し、以前より人間に近い変化ができるようになっていた。
楪は権現より正式に巫女として認められていた。
元々才能に恵まれた彼女ではあったが、ここ半年はメキメキと力をつけており、いずれ後継として神籬家を支えていけるだろうとのことだ。
半年ぶりに会う二人は、何を言ったらいいのかわからず困惑していたが、見かねた雅が楪の背中を押した。彼女は我慢できずにトウヤの胸に飛び込んだ。
二人の気持ちはより一層強くなっていた。強く抱きしめ、それを確かめ合った。
「これからはずっと一緒だよ。トウヤ――」
「あぁ、もうこの手は離さない。君を愛している、楪――」
それから三年後。
そよそよと風が吹き抜ける森の中を、小さな男の子が走っている。
「おーい! 一人で行くと危ないよー!」
遠くから呼びかける女性の声。
「平気だよー! ……うわっ!」
太い木の根に躓いて倒れそうになる。
「おっと」
大きな体の男性が、男の子を受け止める。
「まったく……だから危ないって、お母さんが言っただろう」
「ご、ごめんなさ〜い……」
母親が二人の元へ小走りでやってきた。
「ありがとうあなた。ちょっと目を話すとすぐにどこかに行っちゃうんだから……誰に似たのかしら」
「お転婆なところは、君かな」
「たしかに、そうかも……」
「でも、優しいところも君そっくりだね」
父親は男の子を抱え上げる。
「さぁ、そろそろ屋敷に帰ろうか」
帰り道、男の子は父親の腕の中で寝てしまった。
頭部から生えた耳が、へたりと前に垂れている。
「……耳の形は、俺の方に似ちゃったな」
「そうね。そろそろこの子も修行が必要かしら」
「僕らの子供なら、きっと大丈夫だよ」
「だといいのだけど」
母親はふふっと笑った。
「そうだね。振り返れば色々あったけど、今日までなんとかやってこれたなぁ」
「だけど、これからもっと忙しくなるんだから。頑張ってね、パパ」
彼女はそう言って、大きなお腹をさすった。
二人は願う。
この幸せな時間が、少しでも長く続きますように。
私たちの子供が、少しでも平和な世界で暮らせますように。
満点の星空に、一筋の流れ星が見えた。