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第43話 弁慶Ⅱ

「おおぉぉ!」


 シーカーたちは驚いた。しかしその驚き方には違いがある。ナミやデンちゃんたちは光の球が出たことへの驚き。イイネ様たちもこの反応だ。そして仁は光る球が出ることは分かっていたようだ、しかしいつもと違うのか、予想と違うことへの驚きのようだ。

 そしてシーカー以外の人間には光る球が見えていないだろうことは想定内。呆気に取られているナミたちにイイネ様が叫ぶ! 反射的に身構える義経陣営。


「なにしてんだい、あんたたち! それ・・を捕まえなっ」


 その言葉より早く、バズとエモが光の球目がけて飛び出す。しかしバズとエモの眼前で仁が手に収めて義経の側から飛び除ける。弁慶らは『それ』を仁・武蘭不審者と受け取ったようだ。何事もなく義経から離れた仁を見て取り、逆に騒ぎ立てたイイネ様の方へ不審を向ける。


「たったこれだけ……?!?」


 仁は手中に収めた光の球を身体に収めたのなら、義経に丁寧に頭を下げて『どちらの道を選んでも吉』と告げて暇した。




「あれは、なんですか?」


 藍がその場の全員に問う。今ここにはシーカーしかいない。


「あれは『真球』っていうんだよ、『電子』と呼ぶものもいるね……それに……『酸化反応』という現象らしいね」

「あれが金になるんださ」

「一番真球を稼げると思った義経様の分を、みんな奴に盗られてまったべ」


 イイネ様は相変わらずバズの膨らませたボールをクッションにリラックスしている。


「どーいうこと?」


 シーカーと関わった歴史上の人物たちは必ず電子を放出する。そのほとんどは目に見えない大きさだと言われている。

 シーカーは電子それを帯びて帰還する。メディエはそこから歴史の情報を得る。それが真の目的。そしてその電子の塊りが『真球』と呼ばれる光の球。真球は歴史を書き換えるパワーを持っている。これがあれば思う世界に書き換えられる、と言われている。


「あーでも、他所よその電子を帯びるってことは、本来人間には不相応だって話だそうよ?!」

「細胞レベルで疲弊して、早死にしやすくなるって聞いたことがあるでばら」

「『時間を越える』って言うのはそう言うことなべ……リスクがあるがし」


 現在する球に完全な真円の集まりはない、電子が一番真球に近いと言われている。そして原子の大きさは『1ミリメートルの1000万分の1ほど』……原子を地球サイズまで拡大すると原子核は野球場、そして電子は最大でも野球ボールくらい。

 それを聞くと大石から出た光の球=真球は、ソフトボール程の大きさであった。義経から出たのは、せいぜい梅干しの種程度の大きさであった。

 どの人物からどれ程放出されるか、分析できていない。関わった時間に比例するわけでもなく、その人の歴史の変化量にも左右されていない。『クエストの主たる人格から』とか『クエストの成功の有無』も関係がない。ましてや目に見える大きさの真球を放出する人物を当てることなど不可能と言われている。


「そんな真球、見たことないね! ね、ね、そのクエストの報酬、一体いくら出たのさ? すごい金額、もらえただろ? ね、ね?」


「人物たちが放出する電子を帯びて持ち帰ることで報酬が支払われる、ってことは俺たち今回、査定低いの?」

「えー?! じゃデンちゃん、わたしたち今回新型十手に改造したり、如意龍のレッドヴァージョン改造費とかクエスト持ち込み料を割り増ししたのに、どーなっちゃうの?」

「それに槍だって」


「赤字にはなんないだろうけど……クエスト達成は達成だし……あれ? これ達成報酬は6人割?」

「そうざんすね。6人割だからこそ、目に見える程の真球は欲しかったでげす」


「みすみす鳶に揚げを盗られちまったってわけさ」

「それにしても、あの鳶は義経様が真球を放出するのが分かっていたってことですよね?」

「そうね、鳶の正体はレジスタンスだろうね」


「反主流派組織の狙いとは一体?!」


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