あおいは朝起きると、棚にたまった錬金術で作った物達を眺めていた。
「これ、どこかに売れないかな? 市場で売る物でもないし……」
あおいはちょっと考えて、思い当たった。
「そうだ! ロイドさんの言ってた冒険者の館に行ってみよう!」
あおいは大きなバスケットに、素早さUPキャンディと防御力UPクッキーを入れた。
「よし。場所は確か、町の中心からちょっと外れたところだったよね」
あおいは荷物を抱え、町に向かって家をでた。
「あ、あそこかな?」
あおいは古びた大きな洋館を見つけた。看板には冒険者の館と書いてある。
「こんにちは、はじめまして」
「いらっしゃい! 冒険者の館にようこそ! なにか依頼かな?」
冒険者の館の主人が現れた。30代くらいの男性で、髪はそり上げた坊主頭だった。
「こんにちは、川崎あおいといいます。一応、錬金術師です」
「僕はカイ。よろしくね。なんか聞いた名前だね」
「よろしくお願いします」
「はいはい。じゃあ、これ書いてね。冒険者登録の書類だよ」
「わかりました」
あおいは渡された紙に名前と年齢、職種にはクレープ屋と錬金術師の両方を書いた。
「ああ、クレープ屋のあおいさんか! 有名だから分かるよ。食べ物しか錬成できないって話だよね」
「はい」
「それで、今日の用事は何?」
カイは気さくに聞いてくる。
「これを買い取って頂けないかと思って」
「キャンディにクッキー? 市場に持って行った方が良いんじゃない?」
「いえ、これは素早さUPのキャンディに、防御力UPのクッキーなんです」
「あ、錬成した物だったんだ。そうか。売れるかな?」
カイは少し悩んだ末、あおいに聞いた。
「試食してみて良い?」
「どうぞ」
「それじゃ、いただきます」
カイはキャンディとクッキーをそれぞれ一つずつ食べて、うーんとうなった。
「美味しいね。なんか体が軽くなった気もする。防御力は……」
そう言った後、カイは自分の体を軽く叩いた。
「おお、堅くなってるね。いいよ。これ買うよ」
「どれくらいの金額ですか?」
「うーん。ひとつ100シルバーでどう?」
「分かりました」
あおいは持ってきた、キャンディとクッキーをすべて売ると、代金として2000シルバーを受け取った。
「また、面白い物出来たら持ってきてね」
「はい!」
あおいは冒険者の館を出ると、町を見渡した。
「今日は臨時収入もあったし、飲み屋さんでも行ってみようかな?」
すこし歩いてみると、ちょっと洒落たビストロがあった。
「よし、ここに入ってみよう」
あおいはビストロのドアを開けた。