都会の夜景がガラス越しに広がる。

煌めく光の海が無数の命を映し出す中、どこまでも続く闇がそれらを優しく包み込む。

光と闇。その狭間に立つ僕の目には、ただ一つの目的しか映らない。

──"君"。

「愛しい君はどこにいるんだろうね……」

"君"を思い浮かべるたびに、胸の奥が温かくなる。けれど同時に、焦げ付くような熱も広がる。

僕がここまでの力を手に入れた理由、それはすべて"君"のためだった。

僕は生まれた時から「魔王」という宿命を背負っていた。

繰り返す復活と眠り。それはただ力を蓄えるだけの行為だった。戯れに世界征服なんてのもしてみたが、たいして面白くもなかった。そして、また眠る。……意味もない、終わりのない生をただ続けるだけの存在だった僕に、"君"が色をくれた。

"君"と過ごす日々は、僕の世界を鮮やかに染めた。

それまで知らなかった喜び、温もり、そして……愛という名の感情を。

"君"が僕に与えてくれたものは、あまりにも眩しくて、僕はそれに魅了されていた。

──けれど、人の生は儚く、あまりにも短い。

君は僕の腕の中で朽ちていく。時に僕に微笑みながら、時に僕を愛してくれたまま。

僕が何度眠りにつこうと、"君"を追いかけてこの世界を彷徨い続けるのは当然のことだった。めぐり合っては別れ……。

「この世界でも見つけるよ、君を。絶対に」

──失敗は繰り返さない。

僕の力は今、闇も光もすべてを内包している。そう、僕はこの世界で、"君"を手に入れるために以前の世界ではすべてを手にした。

僕はそっと手を伸ばし、目の前のガラスに触れる。

けれど、その手が触れるのは"君"の面影ではなく、ただ冷たい反射像。

僕が欲しい温もりはそこにはない。

「君は僕を愛していると、あの時言ったよね。僕も同じだよ……ずっとずっと、愛している」

僕の胸に渦巻くこの感情は甘美な愛であり、同時に狂おしいほどの渇望だ。

そのすべてを飲み込んだ僕は、今や自分を止める術さえ忘れてしまった。

「君の幸せは、僕と一緒にいることだけだ……。たとえそうでなくとも、僕が、そうしてみせる」

僕は薄く笑みを浮かべる。きっとその笑みは少しだけ歪んでいるのだろう。

それでも構わない。僕の心は、ただ"君"に向いている。

「どれだけ遠くに逃げてもいい。僕は必ず君を見つけるよ。そして……。」

僕はもう一度ガラス越しに広がる夜景を見やる。

眼下に広がる世界に"君"を見つけるためなら、この力のすべてを使い尽くしても構わない。

「必ず僕の隣に戻ってきてもらうよ……」

光と闇が絡み合うこの感情は、僕の中で永遠に消えることはないだろう。

そして僕はそれを……甘んじて受け入れるのだ。