『シン畜生転移 〜行け! 超宇宙戦艦モモジリ! 猫五郎がムラムラッティの力で超宇宙を股にハメする件〜』
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刻は、超宇宙世紀
未知のヴィールスであるゾンビビスによって荒廃した超地球を見限った人類(畜生含む)は、超宇宙にその生活圏を移動させていた!
しかーし、人類は超宇宙に出て、異性種族の複合国家たる超惑星連邦(略称:超連邦)に加入してもなんら変わりなかった!
とどのつまり、“HENTAI”は超日本から超世界を超えて、超宇宙にまで及び、こともあろうか他惑星のエイリアンまで性的対象にして、性的搾取を試みたのであーる!
事態を重く見た超連邦は、人類のエネルギー源である“スケベッティ・エロッティ・パワー(略称:SEP)”の制限に乗り出す!
しかし、それに反発したのが、超惑星コロニーのひとつ『サイドキック69』を統治支配していた上級貴族ローション家であーる!
ローション家は、人類の超連邦からの独立を勝手に宣言!
超連邦に対して、何となく宣戦布告をする!
んでもって、超宇宙を舞台に、エロ規制派である超連邦と、エロ推進派であるローション家との超惑星間戦争が勃起…もとい、勃発したのであーーる!!!
☆☆☆
僕の名前は、
名前はまだ……いや、名乗ったからある!
超連邦軍士官学校を卒業し、今日から晴れて超宇宙軍の軍人となる。
「ふー、緊張するなぁ」
まだ着慣れない軍服はキツキツで襟元が苦しい。
僕は超宇宙軌道エレベーターに乗り、超宇宙ステーションへと向かう。
エレベーターの窓からは、超地球が見える。
かつては水の惑星と呼ばれるくらいに美しい星だったらしいけれど、僕はそれを映像(VHS版)でしか見たことがない。
ゾンビビスとの激しい戦いのせいで、地表はオッサンの股間の如く赤黒く変色してしまい、オッサンの毛髪の如く資源も乏しくなり、親の年金に頼っているオッサンのように住める場所も殆どない。
それでも超宇宙に飛び出る資金がない人々は、あそこで暮らすしかないんだ。
「母さん…」
超地球に残してきた母の顔を思い出し、つい涙が出そうになってしまう。
「出発前からホームシックになってどうする! しっかりしろ、僕!」
僕は自分の頬をパチンと叩く。
「新米さん?」
同じエレベーターに乗っていた女の子が、そんな僕を見てクスリと笑った。
「え、ええ。今日から戦艦配属になるんです!」
「あら。エリートさんなのね」
確かに普通なら士官学校を出てすぐに艦に乗れるのは、エリート出世コースなんだろう。
でも実際はそんなんじゃない。戦争で人手が足りないから、成績や能力関係なしに戦場に送られているって話だった。
「あなた、ハチワレかしら?」
「は、はいぃ!」
「そう。流行りのブームだものね」
小さくてカワイイつもりもないのだが、彼女からすれば僕は「泣いちゃった」とかサイコパス発言するネコに似た生物に見えるのだろう。
それはスラッとしたシャム猫の擬人化美少女だった。三角耳がなんとも美しい。
雑種のハチワレ擬人化猫からすると雲上猫だ。
「乗る船は?」
「え? あ、超宇宙戦艦モモジリ級です!」
「あら、凄い偶然。私も同じ船なのよ」
「え? お姉さんも軍人なんですか?」
そう言うと、シャム猫のお姉さんはクスクスとさもおかしそうに笑った。よく笑う
「私は調理スタッフよ。軍人さんに毎日美味しくて栄養のある食事を届ける仕事をしているの」
「うわー。そうなんですね。これから、お姉さんの料理が食べれるなんて嬉しいです」
「あら、お上手ね。私はミーシャ。仲良くしてね」
「こ、こちらこそ! 僕は猫五郎です!」
ミーシャさんが差し出してきた手を、思わず両手で掴んでしまったら、また笑われてしまった。
「じゃあ、猫五郎くん。私は搬入倉庫の方に寄って行くから。また船でね」
「は、はい!」
そう言って、ミーシャさんは先にエレベーターを降りて行ってしまった。
「…はぁー。ステキな
軍隊なんだから、てっきり殺伐とした雰囲気だろうと思っていたけど、彼女のような癒しがあるならやっていけそうだ。楽しみができたのは嬉しいな。
「さっさとどかんかぁい!」
「うわっ!」
ミーシャさんの余韻に浸っていたら、いきなり背中を突き飛ばされる!
そのまま勢いよくロビーの前に押し出され、膝を固いフロアに思いっきり打ちつけてしまった。
「い、痛いな! なにをするんですか!!」
「じゃかましゃー! んなとこでボーッとしとるんじゃないけん!」
顔を真っ赤にして怒鳴りながら、エレベーターから降りてきたのは、擬人化された超日本猿……いや、擬人化されたとはいえ、見た目の99%は完全に猿のまんまの男だった。
「入口の真ん前で突っ立っとる方が悪いんじゃぁー!」
「だからって、押し出すことはないでしょう!」
「やかましゃー! どーせ、さっきの雌猫の色香に惑わされとったんじゃろがい! この色ボケのクソガキがぁ!」
「うっ…」
図星だったので言い返せない。
「あーん? その制服…まさかとは思うが、軍人かいのぅ?」
「え? …あ!」
今気づいたけれど、この超日本猿は軍服を着ていた。
「ワシの名は猿三郎! 宇宙戦艦モモジリ級配属の伍長様じゃ!」
「えー!」
「その感じだと新米ペーペーじゃのぅ!? たっぷりシゴイてやるけんのぉ!! 上官の言葉は、神の言葉!! 神の言葉は、この猿三郎の言葉! ワシには絶対服従じゃー!!」
さ、最悪だ…。こんな気の狂った感じの
「キサマは一等兵か、二等兵か!? 階級はなんじゃーい!?」
「見習い士官ですが…階級は一応、曹長です」
「“そーちょ”?」
猿三郎は馬鹿面のまま、懐から手帳を取り出し、親指を舐め舐めしてからページをめくる。
(! わ、ワシより階級が上!)
猿三郎はパタンと手帳を閉じ、コホンと咳払いをひとつした。
「いいかぁ!! 階級なんて関係ない!! 戦場は実力至上主義じゃーー!!!」
「さ、さっきと言ってることが違うじゃないですか!」
無茶苦茶だ!
この
「じゃあかしゃー! ワシは『1+2+3♡』の方で、最悪な待遇だったんで機嫌が悪いんじゃぁ!!」
「な、なんの話ですか!?」
「オメェの知ったことじゃねぇ! それより名前はなんつーんじゃ!?」
「猫五郎です…けど」
「はああぁ!? 雉四郎の次は、猫五郎じゃとぉ!? また適当な名前を付けくさってからにぃ!」
「な! 失礼じゃないですか!!」
母さんがくれた名前を馬鹿にするなんて許さない!!
「じゃあかしゃぁーッ!!」
「うわっ!」
また僕は突き飛ばされる。そして、怒り狂った超日本猿は、奇声を上げて何処かへと行ってしまった。
「……すまねぇな。最近、ますます荒れててよぉ」
エレベーターからもう1匹降りてくる…オイルの染みのオーバーオールを着た擬人化ゴリラだ。
なんか黒い染み以外に白いカピカピの染みもたくさんついているけど。ペンキかしら?
「あなたは…」
「設備担当のゴリッポだ」
手を差し出されたんで、立たせて貰おうとしたんだけど…
「うッ!」
手に違和感。そのゴリッポさんの大きな手はヌメッとしたオイルでベットリ…
「クサッ! イカ臭ッ!! これオイルじゃない!」
「おっと、すまねぇな。“作業中”だったもんでよ」
腰にぶら下げた小汚いタオルで手を拭い、僕を起き上がらせてくれるけれど…そんなんで汚れが落ちるわけもなく、やっぱり手が臭いままで、なんならベトベトまでしている。
「さ、一緒にイこうぜ。ついて来いよ」
「え?」
「戦艦モモジリの中だ。俺が案内してやる」
いや、そう言って僕の背中にさり気なく触れて手を拭こうとしないで。
「もしかして…」
「なにを隠そう、俺も乗組員なのさ」
ゴリッポさんはウインクすると、僕の返事を待たずに、ゴリラが子猫でも掴むようにして戦艦の方へと歩いて行ったのだった……。