モモジリーの左臀部最下層に、キグルミと呼ばれる畜生型機動兵器……略称ASの格納庫デッキが存在した!
猫五郎は、犬次郎に半ば強制されてここまで連れて来られるハメになる! 超宇宙を股にハメるどころの話じゃぁ決してねぇ!!
だだっ広い空間に、整備足場が組まれており、各ドックには高さ十数メートルのASが配置されて、整備員たちが忙しくメンテナンスを行っていた!!
「なにやってんだっぺよ! そのメイン・エロテック・ローリング・シックスナイン・アダプターはそっちじゃねぇ! こっちだ! あ! こっちじゃねぇ! あっちだ! あ! いっけね! 間違えた! やっぱそっちださぁー!!」
白衣を着た牛乳瓶の底みたいな眼鏡をかけたオランウータン(もちろん擬人化されてる)が、バインダーをバッコンバッコン叩きながら指示を出す。
「ドクター・ベンザー! 出撃の用意はできたんじゃろな!?」
猿三郎が、ベンザーというらしいオランウータンの背中に話しかける。
「オラは見ての通り忙しいだ! パイロット以外は話しかけてねぇでくんろ!
カーッ! なにやってんだそこ! ビーム兵器は股間に装着が常識だべ! 工学部でなぁにさ学んで来たんだっぺ! 言うてみい! 言うてみいよ!」
「こんバカがァッ!! ワシらはパイロットじゃけん!!」
「はぁー!? …あ! サブでねぇか! パイロットならパイロットだって、はよ言うてくんろ!」
「そんなん声でわかるじゃろーが!!」
猿三郎がベンザーの襟首を掴んでガクガク揺するが、本人はヘラヘラと笑っていた。
「この
「ベンザー博士よ。この艦の整備責任者にして、アタシたちのキグルミのメンテも担当してるの」
雉四郎がそう説明する。
「んださ! よろしく頼むな! 猫坊主!」
「猫坊主!? なんですかそれは!?」
「コイツは誰でも適当なあだ名で呼ぶから気にしても無駄じゃい」
猿三郎がしつこくもベンザーを揺すりながら言う。
「それはそうと、ワシのマシンの整備は終わってるんじゃろーな!?」
「当たり前だっぺ! オラを誰だと思ってるだ! 整備どころか、オラの天才的な頭脳はちゃんとこの危機を予想して、前もってパゥワーアップも施してるべさ!」
「ほほう! 余計な事しかしくさらんクソみたいなボケ科学者とばかりに思うちょったが、少しは役立つこともあるんじゃのう!」
滅茶苦茶ひどい言い様だと猫五郎は思ったが、ベンザーはまったく気にしていなく、それどころか「そんなに褒められると照れるっぺ!」などと、埼玉在住の嵐を呼ぶ5歳児並のことを言う始末だった!
「そしたら早速出るッペ! グルコサミン・大爆関嵐!」
「ドスコーイ!!」
シャッターが開き、奥から力士型の巨大ロボが現れる!
「な、なんですかあれは!?」
猫五郎の疑問も当然だった!
「見ればわかるっぺ! キグルミを搬出するためのハンガー兼カタパルトだっぺよ!」
「そんなの見てもわかんないですよ!!」
猫五郎の戸惑いも無視して、グルコサミンは格納庫を開き、中から畜生型機動兵器を引きずり出す!
ズカンッ!
ガダガタンッ!!
そりゃ、不器用を通り越してガサツだった! 仕切板に当てまくり、畜生らしい力任せの強引なやり方だ!
「あ、あれ大丈夫なんですか?」
「大丈夫だぁ! いつもやってることだっぺ! ルーチンチンワークださぁ!! グルコサミンはプロフェッショナルだっぺ! 黙って安心して見てろさぁ!!」
ズカンッ!
ガダガタンッ!!
ゴキャッ! ボキンッ!
「エッ?!」
なんか聞き慣れない変な音がした!
「なんかこれ…」
いやはや、グルコサミンが機動兵器を出すその姿は、まるで犬小屋から無理やり嫌がるワンコを引きずり出すかのようだった!!
「よし! 出てきたっぺ! サブ、オメェさの相棒だべさ!」
【糞猿型機動兵器2号…エロエテッキー】
まるで猿三郎を模した様な馬鹿面! 薄いベニヤ板を張り付けてビス止めしただけの様な安っぽい造りの黄色いカラーリングのロボットであーった!
それがグルコサミンに首根っこ引っ掴まれて引っ張り出されていた!
なんか頭のアンテナがベッキベキに折れてしまってるのはご愛嬌であーーる(さっきの変な音の正体)!
「よーし! 乗るぞい! 犬次郎! 雉四郎! オメェらは後から来いや! 敵の残骸見物しかやることはねぇけんどなぁ! ゲブォハハハッ!!」
調子ぶっこいた猿三郎が、意気揚々とエロエテッキーにと向う。
「サブを乗せてやれい! グルコサミン!」
「ドスコイ!」
ベンザーの指示にコクリと頷き、グルコサミンは猿三郎を喉輪の要領で鷲掴みにした!
「なにするんじゃい! 物みたいに掴むんじゃないわーい!!」
怒り狂う猿三郎だが、グルコサミンはまったく意に介さない!!
「もっと大事に扱えや! 漬物みてぇに押し込むんじゃねぇーけん!」と騒ぐ猿三郎を、グルコサミンが無理やりコクピットへギュウギュウと押し込んだ!
「行け! 行って来いださぁ! サブゥー!!」
ベンザーが泣きながら拳を握る。
ふと、ベンザーが持つデカい六角ボルトが猫五郎の目に入った。
「それは…」
「行くだぁ!! グルコサミン! スタンバーイセッターップッ!!」
猿三郎をコクピットに押し込み、バタンと勢いよくハッチを閉めたせいでヒンジがブッ飛んで弾け散る! 閉まったはずのハッチがベロンとめくれた!
グルコサミンはまったくそんなこと気にせず、エロエテッキーの背後に回って、押出しの要領で張り手を当てる!
「ハー! ドスコイ! ドスコイ!」
『こりゃー! 突き飛ばすんじゃないけぇ!』
エロエテッキーのスピーカーから、猿三郎の怒声が響く!
「ドスドスドスコイ!」
猿三郎の乗り込んだエロエテッキーを張り手で滑走路にまで移送するグルコサミン。出撃前に破片が飛び散りボッコボコである!
滑走路に到着したエロエテッキーを、今度は腰を吊り出しの要領で抱える様にするグルコサミン。まさにこれがカタパルト態勢である!
『ふざけおってからに! モニターにヒビが入ったぞ!!』
「大丈夫だっぺ! モニターなんて飾りださぁ!!」
そんなわけねぇだろと誰もがそう思った。
『クソがぁ! 敵を絶滅させたら、ベンザーにグルコサミン! 次はキサマらじゃけんなぁ! 覚悟しとけ!』
猿三郎とエロエテッキーは中指をおっ立てて滑走路で構える。
「ほんなら発進だべさ!」
『猿三郎! エロエテッキー出るぞぉーッ!』
「ドスコーイ!!」
グルコサミンのカタパルト的な動きに支えられ、エロエテッキーは走り出す!
「ベンザー博士、その手に持っているものは…」
今になって猫五郎が尋ねると、ベンザーは自分の手にしたボルトをしげしげと眺めた。なんなら眼鏡を上げたり下げたりもする。
「あいや! こりゃマズイだぁ!」
「え!?」
ベンザーは慌ててマイクを手にする。
「サブゥー! 戻れ! 戻るんださぁ!」
『はぁ!? なにを今更言うちょるんじゃ!? 出撃しとる最中じゃぞ!!』
「でなければタヒぬべさ!」
『はぁ?! タヒぬぅ!? なにを馬鹿なことを…』
「コイツはエロエテッキーの主要部品の一部だっぺ! そのまま出撃したら爆死するんださぁ!!」
ベンザーはボルトを掲げる!
『ふ、ふざけ! ってか、まずグルコサミンを止めんかーい!!』
「ドスコーイ! ドスコーイ!!」
力一杯押し出してエロエテッキーを排出しようとするグルコサミンは止まらない!!
『コラァー! やめんかーい!! あ!!』
賢明にブレーキをかけていたエロエテッキーが、滑走路から超宇宙空間に排出される!!
決まり手…吊り出し!
チュボボボーーン!!
超宇宙に飛び出て、突如として大爆発するエロエテッキー!
こうして猿三郎はお星さまになったのであーーった!!
犬次郎はそれを無表情に見やり、猫五郎と雉四郎は鼻水をくったらかして「あわわ」と言う。
「サブゥ!! なしてタヒんだぁ?! 戻って来いちゅーたーろーがぁぁぁ!!」
ベンザーは泣き喚き、グルコサミンも貰い泣きする。
「……ま、やっちまったもんは仕方ねぇっぺ。次いってみよー!」
ベンザーは涙を拭うと、唇を捲ってニカッと歯を光らせ、雉四郎を指差す。
「シロッ
「ふ、ふざけるんじゃないわよ! は、離しなさい!」
逃げ出そうとした雉四郎だったが、鼻息の荒いグルコサミンに取っ捕まったのであーった!!