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07 恐怖の48手性艦隊

 チブサー帝国が誇る、全48手性感…もとい、性艦隊が1つ!


 第22手【締め小股】艦隊!


 交差させた太腿のよーな旗艦が、金魚のフンみてぇな99隻の艦を率いていた!!


「……グフフ。我らの只中に、たった1隻で乗り込んでくるとはなぁ。その勇気は褒めてやろう。褒め称えてやろう。しかーし、それは出会系サイトで、無料ポイントだけを使い地雷系女子に突撃するがごとき無謀でもあるわーい!」


 艦長である“サカリがついた銭太郎”は、オカッパ頭と恰幅の良い身体を前後に揺らし笑っていた。


「全包囲完了、攻撃射程範囲に捕捉。いつでもいけます!」


「フム。ここで超宇宙の藻屑にしてやるのは容易すぎてつまらん。…そうだな。全艦微速前進!」


 銭太郎の指示に、慌ててオペレーターたちは「微速前進」と繰り返す。


「敵艦の鼻先まで近づけろ! ビビリ散らかして、命乞いし、小便を漏らしているのがオイドンのお目々に入るまで! 追い詰めて、追い詰めて、追い詰め尽くしてやれい!」


 恍惚の笑顔で、銭太郎はビクンビクンと痙攣する! 性癖はSだったからだ!


「銭太郎提督! 敵戦艦になにやら動きあり!」


「なにぃ? モニターに映せい! ロンモチ、ズームアップでな!」


 銭太郎の指示通り、モニターにモモジリの様子がアップで映し出される。


 下方からASが出撃したのを見て、銭太郎はニヤリと笑った。


「ほう! この期に及んで近接戦闘で挑むというか面白い。何十機、積んでるかは知らぬが…」


 銭太郎は身を乗り出してお目々をパチパチさせる。というのも、ASが出てきたのに大きく展開した形跡がなかったからだ。


「むぅ? もしや何かの陽動作戦か? 周辺に反応は?」


「ありません。依然として、大型戦艦1隻、出撃したAS2機のままです」


「たった2機だと!? ば、ば、バカじゃねーw」


 銭太郎は鼻水を飛ばしながら笑うと、オペレーター陣もクスクスも笑い声を漏らす。


「……しかーし、おかしくはあるが、舐められているのだとしたらそれはそれで不快であるな!」


 銭太郎は笑みを浮かべていたが、その額に青筋が立っているのに、ブリッジが再び緊張に包まれる。


「特攻玉砕のつもりか。大馬鹿三太郎が。そんなモンでオイドンの艦隊が潰せるわけあるまい。…なあ、“玉毛箱の裏本太郎”よ」


 銭太郎の後ろから、細身の丸メガネがニヤリと笑って出てくる。


「艦長。小生が出ましょうぞ」


「グフフ。そうか。我が艦隊きってのエースパイロットであるキサマが出れば、カップラーメンが出来上がる前に終わってしまうな」


 そう言いつつ、銭太郎はカップ麺に湯を注ぐ。


「ご期待通り、3分で片をつけましょうぞ。

 “ジョジー号”出るであります!」




☆☆☆




 シバキイーヌとウルトラフールーが超宇宙に出る!


「吐いちゃダメだ…吐いちゃダメだ……オゲェー!」


 某人型決戦兵器に乗せられた主人公みたいなことを言っていた猫五郎は吐いた。


 なぜ吐いたのか!? 説明するまでもなく、それは緊張のせいであーった!


 死と紙一重の超宇宙空間に放り出された上、そこでいきなり戦えなんて言われて、普通のメンタリティじゃいられるはずがない!


 民間人がいきなり戦場で大活躍だなんて、ネオペ小説(ネオペ小説)でしかありえないのであーる!


『あー! ゲロが視界を塞ぐぅ! うぐうッ! お、オンゲゲェー! ゲンゲロゲーッ!』


 そして密閉された宇宙服の中で、嘔吐と放屁は厳禁であることは言うまでもない!


 ヘルメット内に漂うゲロは行き場を失い、また漂う臭いも抜けることはなく、再び嘔気を催すという最悪の循環に猫五郎は陥ったのであーる!


『騒がしい奴だ。戦場など、保健所の注射に比べれば大したことがない』


 犬次郎は呆れたように言う。柴犬からすれば狂犬病注射の方がより恐るべきものだったのであーる!


『そんなこと言ったって…僕、初戦ですよ。もう胃がひっくり返って……』


『悪いことばかりを考えるからそうなる。そういう時は“怒り”を思い出すんだ』


『怒り?』


『そうだ。俺たちの失敗を写真や動画に撮って「カワイイ」だのと宣い、SNSに投稿して“映え”を狙うあこぎな人間どもめ』


『え?』


 犬次郎がグルルルと喉で唸るのに、猫五郎は驚く。


『逆の立場ならどうだ? 上司に怒られたり、階段でつまづいたり、家の鍵を閉め忘れたりしたのをネット上にアップされて喜ぶのか? それを「カワイイ」だなんていう言葉だけで許せるのか?』


『犬次郎さん、何を言って…』


『とても許せん! 犬族の仇をとってやる!』


『ちょっと! 犬次郎さーん!』


 怒りが沸騰し始めた犬次郎の耳に、猫五郎の言葉はまったく届かない!


『俺は覚えているぞ! 八百屋のオヤジに蹴られたことを、魚屋のオヤジに魚を無理やり食わされたことを、そしてどこぞの学校教師に極太油性ペンで眉毛を描かれたことを……許せん!! 人間めが!! 駆逐してやる!!』


『それと今回の戦闘と何の関係が!?』


 犬次郎の怒りは頂点に達し、その怒りに呼応するかのようにシバキイーヌが真っ赤なオーラに燃える!


 そんな中、2体に近づいてくる敵機が居た!


『やあやあ! 我こそは、チブサー帝国が誇る第22手【締め小股】艦隊、玉毛箱の裏本太郎と申す者!

 我が愛機は還暦型決戦兵器…略称KGK、“鮫島魚政さめじまうおまさ型ジョジー号”也!!』


 やたら情報量が多いが、とりあえずリーゼントのような頭に、デカいレンコンみたいなカタパッドを付けたロボットが飛んできたのであーる!!


『犬次郎さん! 敵ですよ! 名乗ってることから、たぶんエースパイロットですよ!』


『グルルルッ!』


『だ、ダメだ! 怒りに我を忘れている!』


 シバキイーヌの股間の蓋がパカンと開く!


『こ、これは!!』


 ポロリンチョとトゲトゲの付いた鉄の玉っころが2個ほど転がり出てきたのを見て、猫五郎はびっくら仰天する!


『ガフルルルルルッ!!』


 まるでキャベツに親を殺されたイッヌになったかの如く、犬次郎の怒りは限界突破する!!


 シバキイーヌは、股間の如意棒の如きレバーのような棒を掴むとおもむろ引っ張りだす!


 それはモーニングスターもしくはモルゲンシュテルンもしくは星球式鎚矛であった!


 正式には形状的には鎖で繋がっているのでフレイルと呼ぶべきかもだが、なんだかモーニングスターと呼ぶ場合も多いんでそうさせてもらう!!


 さらに敢えて言わせて貰えれば、シバキイーヌ・ザ・ハンマーとでも言うべきか!!


『ハハハ! そんな原始的な武器でなにをどうするの!? 見なされ! この肩に装着したリボルバー型の連発式レーザー…』


『うおりゃぁッ!』



 ズコゴーンッ!



 裏本太郎が何か言っていたが、最後まで言い終わることはなかったのは、シバキイーヌが鉄球を振り回したからであーった!!


 大宇宙は真空なんで鉄球なんて振り回せないとか言われそうだが、怒り狂った柴犬によって、大宇宙の法則なんて乱れっぱなしなのであーった!


『ぐあー!』



 チュボボボーン!!



 大破して大宇宙の塵屑となるジョジー号!


 悲劇! まさに悲劇!! まさしく悲劇!!!


 登場からわずか3分以内の出来事であーった!!


 そしてシバキイーヌは大暴れし、次から次へとKGKと艦を沈めていくのだーった!!






☆☆☆




「何故に斯様な事に…」


 非常サイレンが鳴り響く中、銭太郎は惨状を見やりながら唖然と呟く。


 そりゃそうだ。どこのロボットSFものか知らないが、1機で無双なんてされた日にゃ、何の為に無数の艦隊なんているのかよくわからなくなる!!


 しかーし、多数が少数を圧倒するなんて面白くない。数に不利という逆境を覆してこそ、そこに面白みが生じるのであーる!


「オイドンは咬ませ犬なんかでは…」


 モニターに迫りくる玉陰囊たまふぐり…もとい大鉄球!!!


 銭太郎の最期の言葉は、シバキイーヌの鉄球攻撃に雲散霧消したのであーった!!

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