たぶん木星か土星のどっかにある、ローション家の保有するコロニー『サイドキック69』。
人口はたぶん100万から1000万くらいで、面積は香川県か北海道くらい。都市っぽいような、田舎くせーようなそんな雰囲気が漂う!
なんかガバガバ設定な気もしないでもないが、広大な超宇宙に比べればカレーライスかライスカレーぐらいにどーでもいい矮小な問題に過ぎない!
超宇宙からすれば、超地球なんて耳カスみたいなもんで、ぶっちゃけそこに生活している男子が童貞かどうかなんて取るに足らない問題であり、女子と同じ耳ん中に居て、同じ空気を吸ってんだからして、これはもう接合していると言ってもいいんじゃね? いや、もしくは結婚してるとか言っても過言じゃなくね? ……と、そんなアバウトさで、きっとこれを読んでいる読者も童貞を卒業したと言ってもいいだろう! おめでとう!!
んでもって、サイドキック69のオッパイみたいな形をした王宮があーった!
え? オッパイの形の王宮がどんなだかわかんね?
カー! なんて貧素な想像力なんだ!
仕方ない。まずは君のふくよかな体型をしたカーチャンに布団の上に仰向けになってもらいなさい。
そしてカーチャンの足元に回り、君は腹ばいになりなさい。
そしてヘソの方から、カーチャンの顔を見る……その時に誰の得にもならない乳房が見えるでしょう。
見えましたか? それが王宮の形です。
え? カーチャンの三段腹で見えない?
もういい! なら、その三段腹が王宮だ!
え? そもそもカーチャンがいない? 一人暮らしの寂しい独身のメンズだ?
うるさい! そこまで面倒みきれるか!
そこら辺を歩いてるオバハンをナンパして連れ込んでやればいいでしょ!!
それで彼女になってもらえれば万々歳ですね!!
……と、話はそれてしまったが、その王宮の中で、真夏の夜の部屋で右へ左へ行ったり来たりする鬱陶しい蝿蚊の如く、皇帝陛下がウロウロされあそばされていた!!
「うーん、またかな、まだかなぁ~」
どこかの学習教材もってくるオバハンを待つような台詞をのたまう皇帝陛下。
そりゃ、貴族なんだからウメェもんをしこたま食って、ふくよかな体型をされておられる、チブサー帝国の皇帝ことサドマゾン・ローションであーる!!
さてはて、サドマゾンはなぜ部屋を行ったり来たりされておられるのか!?
「エスドエムの誕生日パーチィー……サプライズ……喜んでくれるかのぉ?」
サドマゾンはチラッと老執事の顔を見やる。
「大丈夫でございましょう。万事順調でございます」
臣下の礼を捧げる老執事の後ろには、超スカイツリー並の巨大な建造物…いや、違う! それはホールケーキだった! が、そびえ立ち、超新宿のクリスマスイルミネーションばりの装飾の数々により、豪華絢爛なご馳走の数々がテカリにテカッていた!!
豚の丸焼きがピラミッド上に積み上げられ、冷めたら即座に交換とコックたちが忙しく走り回る!!
その脇ではハレンチ極まりない水着を着た美女たちが、高級ワインをなみなみと注いだプールではしゃいでいた!!
プロの万人超えの超大合唱隊が全力で歌うので周囲が震える! 気絶したら交代で、ローション家を讃える歌詞を、スピーカーもなしに国中に朗々と響かせる!!
嗚呼! まさにこれぞ、酒池肉林!!
贅沢の贅を尽くしすぎた、そんな超宇宙規模のパーチィーが国家予算を投じて催されていたのであーーる!!
「ウフフ。楽しみじゃのぅ。幾つになっても、元帥なったとしても、子供というものは可愛いものじゃて」
子供のようなキラキラした純真なお目々をして、サドマゾンは微笑む。
果たして、これがあの残虐非道のチブサー帝国皇帝なのか不思議に思われるだろう!
それは金があるからの余裕なのだ!
経済的成功は心に大きなゆとりをもたらし、まさに金持ち喧嘩せずの高い精神領域に達せさせる!
つまり世の中は金だってことだ!
金がある奴こそが強い!! 金がある奴こそが偉い!!
そしてサドマゾンは軍の最高位を息子たちに譲ってしまったため、皇帝としてはやることのない怠惰の日々を送り続けてしまったが故に、白痴に……いや、親バカになったのだ!!
「はやく、帰ってこないかのぉ〜。エスドエムとエムドエズと一緒に凧揚げするんじゃあい♡」
「それは正月だろ」とは誰も言わない。皇帝が便器を炊飯釜だと言ったら、炊飯釜になるのがこのコロニーの鉄の掟なのだからして。
ウッキウキのサドマゾンを止められるものはおらんのだった!!
しかーし!
「コーポー…コーポー」
電子音の混じった奇妙な呼吸音に、客である貴族たちや、その臣下たちはビクッと身をすくませる。
そして入口の方から、不気味な黒衣の黒仮面が姿を現した。
「おやおや、アール・バイター卿」
サドマゾンがニカッと笑った。
彼はチブサー帝国が誇る最強の戦士であり、最も信頼する前線における最高指揮官であったからである。
「皇帝陛下。此度は残念な報告をせねばなりませぬ…」
アール・バイターは挨拶を省略し、片膝を付いて頭を軽く下げた。彼だから許される非礼だ。
「ホホホ。これは珍しい事もあるものじゃ。常勝無敗のバイター卿から、そのような話を聞かされる時が来ようとはな」
深刻には捉えなかったサドマゾンが茶化して言うと、周りの貴族たちもクスクスと笑う。しかし、アール・バイターは沈痛の雰囲気のまま顔を上げない。
「苦しゅうない。バイター卿。そちと朕の仲ぞ」
貴族の1人が「粗チンw?」とか言ったので、兵士たちによって外へと連れて行かれた。
「さあさ、報告してたもれ」
「……元帥閣下と大将閣下のムラムラを感じられませぬ」
「え?」
普通の人なら、「なに言ってんだコイツ?」案件だが、アール・バイターの持つなんか不思議な能力……ぶっちゃけ超能力が、彼の言う『ムラムラ』と関係していることを知るサドマゾンは真顔となる。
「それってどういう…」
「……端的に申し上げますと、命を失ったものかと」
「へ、陛下!」
サドマゾンがその場にヘタリ込むのに、老執事が慌ててその身を支える。
「バイター卿! ふ、不敬であるぞ! なにを根拠にそのような不吉なことを申すか!」
大物貴族のひとりが憤って拳を上げる!
「……生物とは、大なり小なりムラムラしているもの。それが突如として無くなったとあれば、考えられる結論はひとつしかありませぬ」
「んだから、そのムラムラってなによ! そのムラムラがなんだって…ンブゥッ!!」
怒っていた貴族が突然青い顔をして内股になる。
アール・バイターが手の平を上にし、ゆっくりと指を回す仕草をする。
「……2回転半」
アール・バイターが指を動かすたけで、貴族の顔がさらに青くなって脂汗をしとどに垂らす。
「一体これはなにが…」
老執事が尋ねると、アール・バイターは指を止めて立ち上がる。
「…これがムラムラの力、『ムラムラッティ』なのです」
「ムラムラッティ?」
「いま彼のムラムラに、我がムラムラを同調させ、金の玉を横回転させ申した」
「「ッッッ!!!」」
その場にいたメンズどもは心なしか内股になって股間を押さえる。レディースどもはキョトンとしていた。
「……このまま、さらに1回転。捻り切ることも可能です」
「や、やゔぇてくれー! お、俺が悪かったぁ!!」
金の玉を拗られておられる貴族が泣いて謝ると、アール・バイターは手をパッと開いた。瞬間、その場に貴族は失神して崩れ落ちる。
「こ、これがスケベッティでもエロッティでもない…第三の力か」
老執事がびっくら仰天してるのに、アール・バイターはチッチッチと指を振る。
「……スケベッティとエロッティの基となる力こそがムラムラッティなのです。全てはムラムラから始まる」
「そんなことは今はどーでもいい! な、なら、バイター卿! 朕の愛するエスドエムとエムドエズは!?」
「……ムラムラが消えたのは、出会系喫茶惑星コロニー」
「確かにふたりはバカンスに……しかし、あそこは非武装中立地帯ではないか! なら、事故かなにかに…」
「……同時刻、超連邦の戦艦が1隻入港しておりました」
「! ま、まさか……」
「暗殺された線が強いかと」
ビキビキビキッと、サドマゾンの額に青筋が立つ!!
「あ、あんのムッツリどもが!! 暗殺だなんて卑怯な真似しくさりがって!!」
サドマゾンは好々爺から一転、現役だった頃の修羅の血走ったお目々となっていた!
「バイター卿!
「……超宇宙戦艦兼強襲揚陸艦モモジリ級」
誰かが「第22手【締め小股】艦隊のサカリがついた銭太郎艦長を倒した…」と解説したが、サドマゾンは「誰それ?」という顔をした。
「…首謀者の名は猫五郎」
「猫五郎…? そんな猫なんだか五郎なんだかよくわからんヤツにッッッ!!!」
怒り狂うサドマゾンがケーキを蹴り倒したせいで都市が半壊する!
料理を平らげ、豚の丸焼きの残った頭蓋骨をコックたちに投げつける!
ワインプールを飲み干し、美女たちのブラを奪い取る!
合唱隊の歌声を、衝撃波を伴う雄叫びで粉微塵に吹っ飛ばす!
さながらキ○グコングの如き傍若無人!
これこそがまさにサドマゾン・ローションの本性であーーった!!
「ブブブブッ頃シKILL YOU!!」
「へ、陛下が現役時代のお姿に…」
ぽっちゃり系だった贅肉が引き締まり、エスドエムやエムドエズのような巨躯へと変貌する!
老執事は在りし日の勇壮な皇帝の姿を見て感涙に咽び泣いた!
「朕がその猫五郎とやらの引導を渡してくれよう!!」
「陛下。油断めされることなきように」
「んなにぃ!?」
「猫五郎は私と同じムラムラの使い手です」
「マジ?」
アール・バイターは頷く。
「恐らく、彼奴らめは我らが本土を狙う精鋭部隊でしょう。しかしながら、陛下の御手を煩わせるには及びませぬ。なにとぞ、このまま首都に御身をお留め下さい。この私めが隊を率い、敵将を討ち取ってご覧にいれましょう」
「なんとも頼もしい! バイター卿! 卿に一任しようぞ! 朕の前に、猫五郎なる者の首を持ってくるのじゃ!」
「かしこまりました」
アール・バイターはバッとマントを翻して退出する。
「猫五郎。いや、ルックミー・チタイストーカー。もしや、あの者はワシの……」
アール・バイターは胸元にあったロケットペンダントを開く。そこには幼いハチワレの写真が写っていた。
「だとすれば、取り戻さねばならぬ…。超連邦のゴミ溜めの中からな」
拳を握りしめ、アール・バイターはそう決意する。
「向かうぞ! フェロモン要塞にてモモジリを迎え撃つ!!」