女性の叫び声と同時にオークの動きが鈍くなる。
続けざまに別の女性の叫びが聞こえる。
「ファイアアロー!」
「エアースラッシュ!」
炎の矢が数本オークの胸に突き刺さり燃え上がる。
見えない刃が斧を持っている太い腕を切り落とした。
ムサシマルがオークに向かって走り出した。
俺もそれに続いて走り出す。
子熊はオークから逃げて森の奥に消えて行ったのが視界の片隅に映る。
ちょうど逆方向から四人の女性がオークに向かって行くのが見えた。
見覚えのある金髪と赤毛。レイティアとリタ!?
「ファイアアロー!」
槍を片手にオークと距離を詰めながらリタが再度、炎の矢を放ち豚面が燃え上がる。
流石のオークも怯んだようだ。
その隙にムサシマルがオークにすれ違いざま横腹を切る。
「ムサシマル! なんで?」
リタがもう一人の女性とオークに対峙しながら、叫んだ。
レイティアは最後の一人の女性と少し離れた所で警戒をしていた。
勢いで、飛び出してしまった俺はどうする?
オークが落とした斧が目に入る。
行けるか?
ムサシマルを含む三人がオークと戦闘を繰り広げている側に落ちている斧へ一直線に走る。
斧を掴んだが……。
重い!
何とか持ち上げられたが、オークから離れなければ……。
「キヨ!」
ムサシマルの声に振り向くとオークが目の前に迫って来た。
まだ無事な左手が俺に向かって伸ばされている。
捕まれば『死』
相手の動きは遅い。逃げろ!
体が重い! 足が動かない! 動け!