覚えのある甘い香り。

「何やってるんだ！？　ソフィア！　ご主人様って何だ？」

　目を覚めるとソフィアがベットに潜り込んでいた。

「おはようございます。今日から魔法の練習をするって言ったのは、ご主人様ですよ」

　確かに言った。しかしソフィアも仕事があり、俺も仕事と訓練があるため夕方からだと言った筈だ。

「魔法技術院の仕事は行かなくていいのか？」

「それなら辞めました」

　ソフィアは俺のベットのシーツを綺麗にしながらさらりと答えた。

「はぁ～。なんで？　高給な職場だったんだろう」

　意味が分からない。

「もともとあそこには、魔法習得の素質と親子の関係についての研究をするために入っただけなので、今はもう行く必要性を感じません。ですから辞めました。スン」

　俺が服を着替えていると脱いだ服をまとめながら言った。お前、最後に俺の服の匂い嗅いでなかったか？

「お前、辞めてこれからどうするつもりだよ」

「両親ともに話し合って、これからはあたしの好きに生きてみることにしました」

　まあ、自分がしたい事をするのは大事だな。それは分かる。

「で、具体的に何をするんだ？　魔法も覚えたんだから、冒険者か？　警備隊か？　それならとりあえず一緒に訓練するか？」

　ソフィアはお茶を入れてくれながら、答える。

「あたしは一生、清人様にお仕えしようと思います。あたしの身も心も全て捧げに来ました！」

「ぶっふぁ！」

　お茶吹いた！

「ちょっと待った！　なんでそうなる」

　俺は口を拭いながらソフィアを見た。今気がついたが、今日はメイド服？

「あたしの口から言わせるおつもりですか？　……恥ずかしい。あたしに全てを与えてくれたご主人様に、あたしの全てを返したいのです。ご迷惑でしょうか？」

　ちょっと恥ずかしそうにしながら俺の腕を胸に押し付けながら上目遣いでそう言った。

　魔法を得て浮かれているだけだろ。落ち着けば元に戻るだろう……か？

「わかった、わかった。だが、今日は朝から狩りに行く予定だ。まだ覚えたてのソフィアにはまだ危ないから午後の三時頃に来てくれ」

「分かりました。その間、洗濯と掃除をしてもよろしいでしょうか？」

「それはありがたいけど、俺は給料を出す余裕はないぞ」

　俺の言葉にソフィアは嬉しそうに微笑んだ。

「ご主人様。御心配いただき、大変ありがとうございます。お金については幾ばくかの貯えがございますので御心配無用です」

　そうしてソフィアは強引に俺のメイドになった。