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第42話 リーとの約束

「なあ、リー。ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」


 リーは赤黒い帽子を集めていた。


「さっきの木で攻撃したのと最初の草を絡みつかせた魔法って別の魔法か?」


 俺もレッドキャップから金目のものを探る。宝石が一つと一万マル金貨が二枚出てきた。


「ああ、あれはおんなじ魔法だよ。少し系列を変えただけの」


 レッドキャップから帽子を集めたあと、鹿の首を再度切り始めた。


「同じ魔法でもはじめは草を、二回目は木を操ったのさ」

「こ奴らエルフ族は魔法の使い方が長けておるんじゃよ。マナ量は人と対して変わらんが、使い方に工夫をこらしておる」


 ムサシマルは鹿の腹を裂き、内臓を取り出した。そして腸と胃をもって川へ移動した。


「なあ、リー。俺にその魔法の使い方のコツを教えてくれないか?」


 リーは少し、考えた後、答えた。


「いいけど、条件が二つある。一つはオレが教えたことは秘密にしといてくれ。里の古い連中にはまだ、人間を信用してない連中もいて、うるさいんだ」

「了解だ。そもそも俺たちがエルフの里と接触すること自体難しいんだろう。それともう一つは?」

「姉さんに手紙を届けてほしいんだ。十日ほど前に手紙を送ったんだけど返事がなくて。オレが街に行く許しが出るのもいつになるかわからないから……」


 初めの勢いに比べるとえらくしおらしい。よっぽど姉の事が好きなんだろう。


「わかった。手紙を届けてやる。お姉さんの名前と住んでる場所を教えてくれ」


 リーの顔がパッと明るくなり、笑みがこぼれた。憎たらしいガキだと思ってたが、なかなかかわいいところもあるんだな。もともとエルフ族自体美男美女の多い種族だ。敵意がなくなれば、なかなかきれいな顔立ちをしている。

 リーの姉の名前はユリ。西地区に住んでいるらしい。手紙については明日、この同じ場所に持ってくるということだ。その時に魔法をうまく使うコツも教えてくれることになった。


「詳しくは明日、話すけど、魔法をかける対象とマナ量の調整。自分と魔法の相性なんかだ。それじゃ、また明日」


 そう言ってリーは森の奥に消えていった。


「なんじゃ、あいつ飯食わずに帰ったんじゃな」


 ムサシマルは鹿の腸と胃の中身をきれいに洗って帰ってきた。

 鹿の内臓は捨てるにはもったいなかったので、焼いて俺とムサシマルの昼飯になった。

 俺は人の頭ほどの木切れを見つけると鹿と一緒に持って帰ることにした。

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