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第50話 お金

「は?」


 なんでここで金の話になる?


「アリシア殿の救出にいくら出せると聞いとるんじゃ」

「持ってる金を集めれば五十万マルくらいにはなると思う」

「それじゃ、全然足らん」


 ムサシマルは首を横に振った。


「警備隊がダメなら冒険者や傭兵を雇うしかない。それにゴブリンの巣までどのくらいかかるか知らんが、そこまで行く馬や兵糧、その他の装備も揃えなけれならんじゃろ」

「お金を出せば警備隊に民間依頼として受理されれば、もしかしたら僕たちが動けるかもね」


 アレックスが案を出した。


「それでどれくらい必要なんだ?」

「警備隊の場合、クエストにもよるけど、おそらく一人百万マルくらいかかるかもな。危険地域の派遣だからね」

「それじゃ一人も雇えないじゃないか」

「私、二百万マルある。お姉ちゃんと二人の貯金だけどお姉ちゃん帰って来ないと意味がないもの」


 二人合わせても二百五十万マル。


「ごめん。わたし貯金ないんだよ。アリシアさんには悪いけど」


 俺はムサシマルを見た。


「キヨ、悪いが儂は出せんぞ。ただし、雇われれば同行を拒否するつもりは無いぞ」


 あと、考えられるのは借金か? しかし、どこから? 俺にツテがない。


「警備隊で分割払いは出来ないのか?」

「キヨ君よ。君はどれだけ警備隊に信用があるのかね」

「何か手は無いのか?」


 どのくらい沈黙の時間が流れたのだろうか?

 警備隊は動けない。二人の金を合わせてもムサシマルを雇う程度にしかならない。だが二人で警備隊精鋭三部隊を退けた相手に敵うのか? そもそも情報が少なすぎる。情報だけでも警備隊から得ないと無駄な時間ばかりすぎてしまう。


「大丈夫よ。お姉ちゃんは強いんだもん。きっと無事に帰って来るわ。わたしたちはわたしたちが出来ることをしましょう」

「レイティア、本当にそれでいいのか?」

「良いわけないじゃない! でもどうしようもないのよ」


 レイティアの瞳にはそれまで我慢していた涙があふれ出していた。

 そうだよな。平気なわけじゃない。


「わかった! 師匠。いや、ムサシマル。あんたを雇わせてくれ」

「良いが、二人ではまず、成功は難しいぞ。悪いが危ないと判断したら儂は逃げるからの」


 その時、個室の扉が静かに開いた。


「お金でしたら、これで足りますか? ご主人様」


 ソフィアは一人の女性を連れて入ってきた。

 魔法習得の儀の時に迎えに来ていた女性だ。

 革製の大きな鞄を開けるとそこには一万マル金貨が多量に入っている。


「いくらあるんだ!?」


 俺が尋ねるとソフィアはもう一人の女性を見た。


「およそ一千万マルでございます。お嬢様」

「これを全てご主人様にお渡しします」

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