※2024年■月■日。
※朱雀機関・調査員塚森レイジのスマートフォンに残された留守録。
※発信者は塚森レイジの娘、塚森キミカ(13)。
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(録音開始)
……あ、お父さん?
うち、キミカ。
お勤め、どない?
いつもみたいに上手くお鎮めできそう?
……って、いらん心配やんな。
お父さんやったらどんな厄介な怪異が相手でもちゃちゃっと解決してまうし。
それで……うちの方、なんやけど……。
ちょっとお父さんに相談したいことがあんねん。
あ、いや。
うちの身には特に何も起きてへんよ。
ココロもいつも通り元気。
リョウや氏子の人達もうちのこと、よう気にかけてくれてて代わる代わる家に来てくれるから……。
ほんでな。
電話したんは、その、同級生の男の子の話を聞いて欲しいからやねん。
お父さん、ハマジュン……浜田ジュンイチって子のこと覚えてる?
そう。小学校の間、ずっと同じクラスやった子。
ハマジュンとやっぱり同級生の岡部シロウ、小松タカオの三人まとめて三バカトリオってみんなから呼ばれとったんよね。
(笑い声)
……三バカ言うてもハマジュンは他の二人と違って頭良かったけどね。
学年でもトップクラスに入るぐらいできて、うちも勉強みてもらったりしてたんよね。
時々、塚森家にも遊びに来てくれてたし、夏休みの子どもキャンプの時も同じグループでカブトムシ捕まえるの手伝ってもろたり、花火を一緒に見たりしたわ。
まあ、仲良かったゆーてもハマジュンは中学からは私学通うようになったし、一応電話番号交換もしてたけど、ほとんど連絡取ることもなくてすっかり疎遠になってたんよ。
それは同じ中学校に進学したシロウとタカもおんなじで……。
うちは女子であっちは男子やからそうなるのもしょーがないかもしれんね。
でも、今日の夕方……久しぶりに声かけてきたんよ。
下校中、シロウとタカのほうからうちに。
最初は向こうが「キミちゃん元気~?」って二人して手を振って来て、
うちも「お~。あんたらこそ、元気してたん?」みたいな感じで……。
でも、二人ともなんか顔色悪かったし、そのなんて言うか無理矢理声を明るくしてる感じがハンパないっていうか……。
いわゆる空元気ってやつやろか?
そんで、うちな。
冗談半分に、つい軽口を叩いてしもうた。
「二人とも、何かしんどそうやけどどないしたん? 道に落ちてる、変なモンでも食べた?」
そしたら――シロウもタカもサア―ッて顔色かえたかと思ったら、わってすごい泣き出してん。
そんで、うちもビックリしてもうて……。
「待って待って。何で、そんなに泣くん? うち、なんか悪い事言った?」
って聞いたら、
「違う! 食べたのは僕らじゃなくてハマジュンだよ! 僕らは二人とも、こんなの絶対おかしいからやめとけって必死で止めたのに……! あいつ、見る見るうちに様子がおかしくなっちゃって……!ハマジュンのやつ、全部、ムシャムシャ平らげちゃったんだ!」
って、正直、意味不明やってんけど……。
シロウもタカも本気で怯えているみたいやったから、
「……ひょっとしてハマジュンに何かあったん?」
って聞いたんよ。
そしたら……
「キミちゃんの家って神社だったよね? だったら、お祓いとかお清めができるんでしょ? だったらハマジュンのこと助けてくれよ!」
僕たち友達じゃないか! って二人ともすっかり興奮してもうて。
うち、往来のど真ん中で男の子に囲まれてワーワー大声出されて、何か舞い上がってしもうた。
「わかった! ようわからへんけど、とにかくわかった! ……ていうか、今、うちにあれこれ言われても何もでけへんから、とにかくハマジュンの話お父さんに聞いてもらうわ!」
……ごめん、お父さん。
大切なお勤め中に勝手な約束してもうて。
でも、ハマジュンは――シロウとタカもやけど――最近、付き合いがなかったとはいえ、うちにとっては大事な友達やし……。
もし、何らかの怪異に苦しめられてるんやったら助けてあげて欲しくて……。
勝手なことばっかり言ってごめんなさい。
返事の電話、出来るだけ早く貰えたら嬉しいです。
(録音終了)