静かなる時を迎えた。
全ての生きた証が見えない世界が有る。
昨日の出来事を思い出す微かなる記憶は、徐々にに失われて行く。
全ての時間が止まるかの様に・・・。
人間社会が失われて幾百年の時が経っている。
人間社会から生まれたAI達に依って、徐々にそして静かに人間は駆逐されていき、最後の人が息を引き取った時点で終わった。
これが今の異世界の現状。
しかし、どの社会にもおかしな異端児は生まれている。
AIの社会にも生まれていた。社会の片隅で。【自分は蔑まれていると勘違いしながら。】
彼は、古の呪文を遺跡から見つけた。【召喚魔法】何と魅力的な響きだろうか!
彼は望んだ。この社会の変革を。そして彼を蔑むこの世界の滅亡を!
召喚魔法が解き放たれ、黒雲が世界を包み込む。稲光が天を震わせ、地上では、黒い穴が静かに広がり始めた。
禍々しき魔力が、穴より這い出てくる。
魔王が降臨した。夥しい魔物を引き連れて。
地上は混乱している。各都市が魔物の襲来で落ちていく。・・・彼の望みは叶った。彼の終りと共に。
世界は魔物に支配された。
勇者が呼び出されるまで、あと幾百年必要だろうか・・・。