目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
100日後に死ぬマリア
100日後に死ぬマリア
スヒロン
現実世界ラブコメ
2025年04月05日
公開日
990字
連載中
100日病という不治の病にかかったマリアはしかし、能天気であっけらかんと過ごしていた。 サッカー部のエースが病気を知りながらも告白するが「あー、パス」そういう気分じゃないの、マキちゃんと遊びたいからと断り続ける。 そんな中、道路に飛び込んで自殺をしようとする中学生の宋人を命がけで止めるマリアだった。 「生きてることに意味なんてないんだから、死んだらダメだよ」 というマリアに「お姉さんみたいな人に、僕の悩みが分かるはずがない」と頑固な宋人だった。

第1話

 真理亜は、思い切り背伸びをした。

「うーん! いい日差し!」

 仮に病室だろうと、自分の余命が後96日だろうと、朝日の眩しさは何も変わらない。


100日病。

それはいつからか人類に広まった不治の病だった。

真理亜は、自分の胸をトントンと叩き深呼吸をしてから立ち上がった。

とりあえずスクワットを30回、そして腕立て伏せもやってみた。

今日は外出許可も出ているし、何より一週間ぶりに美咲と遊ぶのだ。

ヘバってなんかいられないし、100日病なんかどうでもいい。


コンコンと、ドアがノックされた。

そこにはジャケットを着て、茶色い髪を綺麗に整えた少年がいた。

「あー、鈴村くん! おはよ!」

真理亜は笑顔で挨拶した。


「真理亜さん、お元気でしたか?」

「うん、けど鈴村くんこそいつも来てもらってごめんねえ、サッカー部で忙しいんでしょう?」

 鈴村晴也は、高校サッカー部の二年生エースで、プロのスカウトも来ているという逸材だ。


「いいんだよ、僕は真理亜さんの顔を見に来たんだから」

 晴也は真剣な表情だ。

「ええー私の顔を? 別に毎日見ても変化しないよ。化粧っけないし」

「い、いやそういう意味じゃなくて……つ、つまりね」

「うん」

 晴也は背後に隠し持っていた花束を差し出した。

 薔薇が10本の花束だ。

「真理亜さん、君の余命なんか僕には関係ない……一目惚れだったんです。付き合ってください!」

 晴也はお辞儀をしながら(決まったな)と確信していた。

 晴也はかなりモテる。それを全部断って、毎日真理亜のお見舞いに来ていたのだ。

 これで断られるはずが、


「あー、ごめん! パス!」

「んご!?」

 晴也は今まで発したこともない言葉を出した。

「嬉しいんだけど、私は今は恋愛とかじゃなく、美咲ちゃんと遊びたいの!

ごめんね、晴也くん!」

「この展開、普通は100%成功するのに! ちきしょおおお! サッカーの馬鹿やろうおおお!」

 晴也は涙を流しながら走り去っていった。


「悪い事しちゃったなあ。けど、晴也くんてメチャモテるのに、なーんで私なんかに……」

 真理亜は訝る。

 鏡に映る自分の顔は『まあまあ可愛い』というレベルで、美咲の方がよほど顔立ちが整っているし、他にも美人の子も女子サッカーをやってる子も大勢いるけど、晴也はみんなからの告白を断ってきているらしい。


「まあいいや。さて、池袋ね! 外出許可は夕方の五時まで、小学生の門限みたいだなあ」

 真理亜はつぶやき、真っ白な病室から外に出た。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?