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第17話 エルフの女性



 ある日、アリスが森の奥を歩いていると、薄いローブを身にまとった女性が倒れていた。


「大丈夫ですか?」


 アリスは駆け寄ると、声をかけ、軽く女性の肩を叩いた。


「う……ん? ここは?」


 女性の耳は尖っていて、その目は美しいエメラルドグリーンに輝いていた。


「あなたはエルフの方ですか?」



 アリスの問いかけに、女性は身構えようとしたが、立ち上がるのがやっとだった。


「危ないですよ? 急に立ち上がっては。私はアリス。森に住んでいます」


 エルフの女性は座り込むと、アリスに聞いた。


「……アリスさん? 森に住んでいる? もしかしてマリーの知り合い?」


「マリーは私のおばあさまの名前です」



 エルフの女性はふらふらと立ち上がると、アリスに向かって礼をした。


「私の名前はレーン。ここからずっと北に行った場所、エルフの谷から逃げてきました」


「エルフの谷……おばあさまのメモに書かれていました」


 アリスはそう言ってから、荷物の中からポーションを探し出して女性に渡した。


「はい、どうぞお飲み下さい」


「……ありがとう」


 レーンはポーションを飲み干すと、深いため息を付いた。



「体が軽くなりました。怪我も治ったようです」


「それは良かったです。ところで、エルフの谷でなにがあったのですか?」


 アリスが尋ねると、レーンは暗い表情で答えた。


「ウォーウルフの群れが現れて、村を襲ったのです。エルフ達はそれぞれ逃げ出したので、だれが助かったのかも分からない状況です」


 アリスは少し考えてから言った。



「おばあさまのメモに、強力な眠り薬のレシピがありました。それをつかえば、ウォーウルフたちを眠らせて、その隙に倒すことが出来るのでは無いでしょうか?」


 アリスはそう言うと、更に森の奥に向かって歩き出した。


「もう少し行ったところに、眠り草が沢山生えているはずです。取って帰りましょう」


 それを聞いて、レーンは言った。


「私も手伝います」



 アリスとレーンは森の最も奥の方に生えている、眠り草をかご一杯に採取してから、アリスの家に向かった。


 家に着くとアリスはいそいで、強力な眠り薬を作り始めた。


「アリスさん、ありがとうございます」


 レーンが礼を言うとアリスは首を横に振った。


「困ったときはお互い様です」


 レーンは椅子に腰掛けると、家の中を見渡してから言った。



「ところで、マリーは元気ですか?」


「……もう、ずいぶん前に亡くなりました」


 アリスの答えに、レーンは俯いた。


「そうですか……。人の命は短いですね」


「あの、眠り薬が出来ました。これを持って帰れば、村を救えると思います」


「ありがとうございます、アリスさん」


 レーンはアリスから眠り薬を受け取ると、森の中に入り、北の方に駆けていった。



「エルフの村が助かれば良いのですが」


 アリスは一人、レーンとエルフの村の無事を祈った。


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