まだ早いとは思いつつ、
[異世界人きたー]
[助けてくれたー!]
[ウダヤマだー]
異世界のスタート村に着いた感慨もなく、ひたすら
受け取って、腕の中の猫宮に飲ませようとすると猫宮にも飲み物が渡される。
言葉は分からないが、好意で渡してくれたことだけはわかった。猫宮とそれぞれ口を付けると、以前兎田山に貰ったベリとチリィのジュースに良く似ている。
「魔力切れは、十五分もすれば少しは回復しますよ。犬丸くんもゆっくりしてくださいね――とはいえ、ふふっ大事な猫宮さんから目が離せませんか?」
「うっせーな!!分かってんなら言うな!!――ありがとな」
ぶっきらぼうでも兎田山の目を見て感謝した犬丸に、兎田山はまたカメラを向けた。
「カシャカシャやめろッッ!!」
「いえ、ついでに委員会に見せるためにもビックスパイダーとかの写真をとる為にも必要かと」
「そっちがメインだろーが!!」
ゲート関連の情報を取り仕切る本部の委員会。兎田山は直接は知らないが、
兎田山の懸念は、ゲート攻略が何故自衛隊がメインなのかということだ。魔道具や
――つまり、海外にも各地にあるのだ。このゲートが。
兎田山の知り合いには、海外の人間に会ったことは無いと言っていた。ゲートはそれぞれ違う場所で展開していると言っていい。もしかすると違う異世界なのかもしれないのだ。
不穏なことは、滅多に口にしない方がいい。兎田山はこの心配を犬丸たちに告げる気はなかった。
[ウダヤマ、今日の『メモ帳』はあるかい?]
[ええ、持ってきています]
兎田山に話しかけてきた老爺は、杖をついている。新しく顔を見る二人をしみじみと眺めた。
[ウルトラビューティな推しとハイパービューティの推しですからね、じろじろ見ないでくださいよ]
[友達かね?ウダヤマはいつも新人の異世界人の世話をしていて無理しているけど今日は楽しそうだ。――いつだったか、アイテムボックスに十五人分のスライム素材と魔核をフラフラになって届けに来たじゃないか]
[いつの話です?まあ、僕も新人の時は無茶を言われましたよ]
兎田山がアイテムボックスからダンボールを出すと、犬丸はギョッとする。
老爺は手馴れた様子で梱包の上からメモ帳とボールペンの数を数え、兎田山に金貨を幾つも渡した。
「兎田山、おまえ!こっちの世界にそんなもの持ち込んでんのか?!ありなのか?!」
「グレーゾーンですかねー、でも本部から止められてないですし。中にはマヨネーズ持ち込んで大儲けしたり、石鹸売ってウハウハな人も前例にいますよ?」
老爺は、兎田山に噛み付く犬丸を見て違う想像をしたらしい。
[この人も売り物があるのかね?]
[いいえ、顔面は国宝級ですがあれは売り物ではありませんので、気にしないでください]
「てめぇ、なんか余計なこと言ってねぇか??」