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占い魔術研究部へようこそ~天使も悪魔も先輩も妹も、俺の血を取り合っていて困るんだが?
占い魔術研究部へようこそ~天使も悪魔も先輩も妹も、俺の血を取り合っていて困るんだが?
奇蹟あい
現代ファンタジー異能バトル
2025年04月07日
公開日
1.1万字
連載中
今から20年前。 ≪世界≫と≪ナニカ≫が――交差した。 接触はほんの少しだけ。 たった数分間の出来事。 点と点で触れあった。 たったそれだけの出来事だった。 だったのだが、俺たちの≪世界≫は大きく変わってしまった、らしい。 ≪世界≫と≪ナニカ≫が交差したことによる影響はすぐに表れた。 日本の、ごく一部の地域に住む人間たちに、おかしな能力を持った者が現れ始めたのだ。 異能力(アビリティ)――。 SNSで相次ぐおかしな投稿。 最初はフェイク動画か何かだと相手にされなかった。 しかしそんな中、事件は起こった。 異能力(アビリティ)を使用した殺人事件が全世界に生配信されたのだ。 日本政府は国連からの強い要請を受けて、周辺地域を閉鎖し人の出入りを制限。 異能力(アビリティ)を持った者たちは、≪特別自治区≫と呼ばれる檻の中に閉じ込められることとなった。 それから20年の月日が流れた。 封鎖された≪特別自治区≫の中で、俺たちは生きている。 俺たちはここで生まれ、この≪世界≫しか知らず『第2世代』と呼ばれている。 だけどとくに不自由も感じないし、楽しく暮らせている、と思う。 たった1つの問題を除けば――。 ここ≪特別自治区≫は、交差した向こうの≪セカイ≫からやってきた、自称『天使族』と『悪魔族』によって支配されているのだ。 人族は発現した異能力によってランク付けされ、『天使族』と『悪魔族』に管理されている。 ちなみに『天使族』と『悪魔族』は冷戦状態にあるらしい。 俺たち人族は『天使族』と『悪魔族』、そのどちらの側に着くのか。 その選択が求められている。 -------------------------------- ※注意※ 長々とシリアスっぽいあらすじが書かれていますが、本作品はコメディー作品です。 理屈っぽく独り言が多い主人公の【無能力者(アンチ)】竹井カケル(たけいかける)16歳が、2年生ながら『占い魔術研究部』に入部するところから物語が始まります。 ツンデレ系ヒロイン(大天使)、幼馴染み属性お姉さん系先輩(魔族)、ボクっ娘後輩(鬼族と魔族の混血)などなどとハーレムを作ったり作らなかったりする、表向きは非常に緩い感じのストーリーです。 なお、妹はお兄ちゃん(主人公・カケル)のことが大好きすぎて、堕天してしまったという設定の中二病の女の子です。

第1話 恐怖⁉ エロ悪魔教師の呼び出し!

「起立! 気をつけ! 礼! 着席!」


 日直の……田……なんとかって女子の号令。

 今日も無事にSHRショートホームルームが終わりを告げる。つまりは授業強制労働からの解放を意味するわけだ。


 よっしゃ、やっと帰れる……。


 あー、腹減ったな。

 短縮4時間授業のはずなのに、今日は一段と長く……まさかと思うが、誰か『体感時間が伸びる』異能力アビリティなんか使ってないだろうな? そんなものが存在するかは知らんが。


 しっかし中間テスト前だからって、どの教科も内容詰め込み過ぎだろ。

「ここは試験に出るぞ~」「ここは覚えておくべきポイントよ」って、先生たちさあ。そうやって問題のヒントを小出しにしてくるくらいだったら、いっそのこと最初から試験問題全問配ってくれよな? どうせさー、勉強なんて大して役にも立たないんだから、授業も試験ももっと和気あいあい、アットホームな雰囲気でやってくれよな。そうじゃないと俺みたいな無能力者落ちこぼれは不登校になるぞ?


「お兄ちゃん、何難しい顔してるの? 早く帰ってご飯にしよ~よ~」


 俺の双子の妹・ミウが現れた。

 グイグイと俺の腕を引いてくる。


 俺たちは双子だが、顔はぜんぜん似ていない。ま、二卵性双生児だしな。

 俺は父さん似で地味顔だけど、ミウはアイドル並みに顔が整っている。だけど背が低くて体も細い。高2になった今でも小学生に間違われることもある。まあ、アイドルはアイドルでも、ジュニアアイドル止まりってところか。


 ミウはなー、たぶん母さん似なんだろうな。たぶんだけどな……。父さんは、頑なに母さんの写真を見せてくれないからさ……。


 母さんは、俺たちを出産した時に亡くなったらしい。父さんからそう聞かされている。

 父さんは再婚もせずに男手一つ、俺たち兄妹を育ててくれた。毎日朝から晩まで働いて……父さんにだけは頭が上がらない。ミウは父さんのことを「オヤジ」「臭い」って言って遠ざけようとするがな。


「お兄ちゃんどうしたの? 今度は黙ってわたしの顔を見つめたりして……キスしたいの? も~、明るいうちから恥ずかしいよぅ。しょうがないな~、ちょっとだけだよ~♡ 激しいのはおうちに帰ってからね♡ ん~」


 目を閉じて顔を寄せてくるミウ。

 周りから「キャー」と黄色い声が上がる。

 どうやらクラスの女子たちが俺たちの会話を盗み聞きしていたらしい……。


 男女の双子ってだけでもいろいろ言われがちなのに、ミウがこういう態度ばかり取るから、ガチでそういう関係なんじゃないかって疑っているヤツも出てきているんだぞ……。


「バカ言ってないで早く帰るぞっ、と」


 ミウの頭頂部の真ん中、髪の分け目辺りに照準を合わせて、強めにチョップをお見舞いする。


「痛いっ!」


 ミウが頭を押さえて後ずさりしたのを見計らい、イスから立ち上がる。


「もう! お兄ちゃんのバカッ! 禿げたらどうするのよっ!」


「便秘に効くツボを押しただけだ。安心しろ」


「わたし、便秘じゃないもん!」


 おいおい、大声で便秘とか叫ぶから、みんなざわついてるじゃんか。

 下ネタはたいがいにしておけよ?


「はいはい、今日は食物繊維がたくさん取れる昼飯にしようぜ。帰るぞ~」


「だからわたし、便秘じゃないもん!」


 今日から3日間は短縮4時間授業で給食はなしだ。中間テスト前の勉強に集中する期間という名目でな。

 つまり――。

 早く飯食って遊ぶぞー! 明日は土曜日で休みだし、徹夜でゲームだな! 試験勉強? そんなん知らんわ! どうせ勉強なんてしたって、俺の場合は何の役にも立たないしな。


 ピンポンパンポーン。

 校内放送前のお知らせ音が鳴る。


 うっ、なんだか嫌な予感がする……。


『2年1組、竹井カケルたけいかける。2年1組、竹井カケル。大至急、生徒指導室まで来い。3秒以内だ。繰り返す。2年1組、竹井カケル。さっさと生徒指導室まで来いっ!』


 あーあ、こういう時だけは俺の勘って、当たるんだよな……。

 この声は、学年主任の咲坂さきさか先生……。ったく、どこから声出してるんだよ。ドスが効き過ぎてて怖いって……。マジ行きたくねー。


「お兄ちゃん……呼び出し……何かしたの?」


 ミウが不安そうな表情で見つめてくる。


「あー、なんだろうな? 今朝出した進路の紙のせい、かな……」


 まあ、十中八九あれのせいだな。

 さすがに適当に書きすぎたか……。

 マジできついな。咲坂先生サッキーの説教は長いからなあ。昼飯……。夕飯までに帰れれば御の字か……。こんなことなら終礼ダッシュで家に帰っておけば良かった……。


「お兄ちゃん……わたし、ついて行こうか?」


「いやいや、さすがに1人で平気だって。心配するなよ」


 ミウの頭に手を乗せる。

 またもや黄色い声が。


 しまった。つい、いつもの癖で……。

 だから違うよ? 俺たちはただの双子、健全な家族だからね? って、コラッ、ミウ! 頭に乗ったお兄ちゃんの手を撫でまわしながらうっとりした表情をやめなさい! みんなに勘違いされるでしょ!


「痛っ! 何すんだよ⁉」


 やたらと手を撫でまわしてくると思ったら、急に手の甲をつねられたんだが⁉


「だってお兄ちゃん、生徒指導室に咲坂先生と2人きりになったら……エッチなことを期待してるでしょ」


「してねーよ⁉ ミウは生活指導の先生を何だと思ってるんだ⁉」


 たしかにな、咲坂先生サッキーは見た目、超エロいよ? いつもピチピチのスーツを着ているし、胸元が開いていて今にも胸が飛び出そうだし、お尻のラインもくっきりだけどさ……。


「絶対お兄ちゃんのこと狙ってるよ……。咲坂先生って、授業の時お兄ちゃんのことばっかり見てるもん。あの露出狂のエロ悪魔教師!」


 それはたぶん、俺がいつも授業中に居眠りしたり、マンガ読んだりしているせいですねー。


「あの人……たぶんお兄ちゃんの血を狙ってるのよ……」


 周りに聞こえないように配慮した、小さな声でのつぶやき。

 俺はそれを即座に否定することができなかった。


 たしかに、咲坂先生サッキーは純粋な悪魔族だ。

 そして、そんじょそこらの悪魔族とはわけが違う。

 この≪特別自治区≫の治安維持と発展のために、≪セカイ≫から派遣されている≪監察官≫様なのだ。


 さすがに指導的立場の≪監察官≫が俺の血を欲するなんてことは……。


 まあ……ないとは言えないか。


 俺のような無能力者アンチの血には、異能力アビリティの効果や威力を爆発的に向上させる力があることがわかっている。

 とくに≪セカイ≫からやってきた、純粋な天使族や悪魔族と無能力者アンチの血は非常に相性が良いらしい。そのせいで、過去、≪セカイ≫と≪特別自治区≫の交流が始まったばかりの頃、無能力者アンチの血を狙った事件が多発した時期もあるとか。


 まあ、今は『異能力行使制限法アビリティリミット』と『無能力者保護法アンチプロテクション』のおかげで、俺たち無能力者アンチの安全と社会保障に関する制度は充実しまくっている。月に一度、役所で血を提供してさえいれば、一生遊んで暮らせるって寸法さ。


「ホントに気をつけてよね……。一応、生徒指導室の前で待ってようか?」


 今にも泣きそうな顔のミウ。


「大丈夫だって。前に生徒指導室に呼ばれた時も咲坂先生サッキーと2人きりだったが、別に何もなかったぞ? あれだ。もし襲われそうになったら、逆に俺のほうから襲ってやるさ。あの巨乳を揉みしだいて反撃してやる。な?」


 なーんてな。

 お兄ちゃんを信じろ。


「それもダメ……。お兄ちゃんはわたしのものだから」


 ガチ目のトーンで俺だけに聞こえるように囁くのはやめようね?

 さすがにお兄ちゃんでも、ちょっとドキッとしちゃうからさ……。


「お前は考えすぎだ。何にもないって! さてと、お兄ちゃんはちょっと説教されに行ってくるわー。晩飯までには帰るから、食物繊維の多い料理頼むなー」


 スクールバックを片手に、ひらひらと手を振りながら、教室を後にする。


「だからわたし、便秘じゃないもんっ!」


 というミウの絶叫に後押しされるようにして、生徒指導室へダッシュ。


 待ってろー、エロ悪魔教師サッキー

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