──神を殺す。
猛々しく燃え盛る松明の
我らが"母"に対する反抗心が薪火となり、その対になる片方の手には、一振の剣が固く握られている。
それは神への叛逆であれば、例え我らが死しても、到底輪廻転生が叶う行いでなく……。
なればこそ我らはみな、己が正しいと信じた未来だけを胸に、今こうして此処に立って在るのだ。
「本当に来てしまったのね……
我らの目には、部屋の窓から月夜を眺める母が一人。
本来であれば母なる女神である彼女の瞳は、穢れの無い愛に満ち満ちていて美しいのが必然であるが。
しかし、綺麗な紙に垂れた墨の如く、たった一筋の憂いがその清らかで美しい貴方を犯している。
それが如何に我らの愚行が原因だとしても、いざ目の当たりにしたとき、これを悲しまない子は居ないだろう。
悲しい。苦しい。虚しい。
でも……それでも……。
我ら人の知識欲は、未来を知りたいこの高まりは。
簡単に棄てられるモノでなければ、我らはこの歩を停める訳にはいかないのだ。
「我らは知識欲の下僕なれば! 人の未来を阻むモノ、例え"母なる原初の女神"と言えど、断ち切るのみ!!」
「……そう。それが貴方達の選んだ未来なのですね……」
「うおおおおおおおおおおおお───!!!!!」
我が手に神殺しの槍を携えて、目の前に鎮座している女神様に肉薄し、その身体を貫いたとき──。
無責任な涙が頬を垂れている我らとは対象的に、当の本人である彼女は我ら人間を慈しむ様に微笑んでいた。
「
◆◆◆
一人の半神と、一匹の元神がいた。
二人は一緒に海へと堕ちる。
そこは暗くて冷たくて、深いから。
二人離れないように、互いの光を抱き合うのです。
何時か訪れるその時に向けて、この愛が消えぬように。
「エヴィー!!」
「ツュッツ!!」
神歴一万五千年、ユグドラシル、神の神殿にて。
神と人が共存する神代の世に終末が訪れた──。