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第33話 オープンにする

「ただいま〜!」

優星が帰って来た。


本当に仕事を早く終わらせて帰って来たようだ。

「おかえり〜」と、優星の胸に飛び込む。

「いい子にしてたか?」と聞くので、

「うん! すっかり元気!」と言うと、

「良かった」と頬にチュッとした。


手を洗って、着替えているのをストーカーのように、付き纏いジッと見ている。

「あっ!」と胸のキスマークが見えたので、

「まだ消えてないね〜」と言うと、

「そうなんだよ、今日大変だったんだよ〜」と笑っている。


聞くと、暑かったので外回りから帰って、更衣室で着替えていると、同期の山下さんに見つかり茶化されたようだ。


「だから、俺の彼女はエロい子って思ってるみたいだよ」と言う。

「ヤダ〜もう〜!」

「羨ましいって言ってたけどな」と笑う。


そして、

「花怜のは消えた?」と、聞くので、襟の隙間から見ようとすると、同じように覗いている。

「何見てるのよ?」と言うと、

「いや、胸を見てるんじゃなくて、キスマークを見てるんだよ」

「ふ〜ん、そうなんだ〜じゃあ胸には興味ないわよね〜」と言うと、

「有る! 大有りに決まってんだろが」と笑っている。

「ふふ、いやらしい〜!」と言うと、

「花怜のしか興味無いよ」と、私の腰を抱き寄せる。

「そうなの〜?」と、胸をぐりぐりしてあげると、

「ウッ」と言っている。

「ふふ」


「あ〜良い匂い〜今日は、カレーだな」と嬉しそうに言う。

「うん」

「休んでてって言ったのに」

「だって退屈だったんだもん」と言うと、

「そっか、ありがとうな」と今度は唇にチュッとした。


そして、卒業アルバムの話をした。


「ね〜優星、気づいてた? 私写り込んでるよね?」と言うと、

「そうなの?」と目を見開いて言った。

「あれ? 気づいてなかったの?」

「どれ?」と言うので、卒アルを開いた。


「ほら、見て〜ココ!」と言うと、

「あ〜本当だな〜可愛い花怜だな〜〜」と棒読みで言う。


「ん? 絶対気づいてたよね?」と言うと、

「うん!」と笑っている。

「やっぱり!」

「ずっと眺めてたもん! 花怜のこと」

「え?」

「他に写真なんてないから」と言った。

『花怜に片想い中』の話なんだと思うと嬉しかった。


優星の首に腕を回してキスをした。

すると、しっかりとしたキスをしてくれた。

──あ〜大好きなキスだ〜

う〜ん、ふわふわして、落ちそうになる〜


「今日は、ここまで」と言われる。

「どうして?」

「昨日、あんなことがあったばかりなのに」と言う。


もう一度、自分からキスした。

「花怜〜」と困った顔をしている。

「キスだけで良いから……」と言うと、また、キスをしてくれる。


私の方が優星を欲しがってしまっている。

ベッドに座ったが、

「ダ〜メ」とぎゅっと抱きしめられた。


「嫌がってるんじゃないぞ、もちろん俺は、いつでも花怜を抱きたいと思ってる。でも、昨日辛かったでしょう?」

「うん」

「もっと体調が良くなったら、いっぱい愛し合おう」と言われた。

「……分かった」と言いながら、優星を抱きしめたまま離せない。


「花怜、愛してるよ」と言う。

「うん」と言うと、

「ん?」と私の顔を見ている。

「あれ? 花怜は? もう俺嫌われた?」と言っている。

「ふふ」

「え? それだけ?」

「もっとキスしてくれたら、言ってあげる」と言うと、苦笑いしている。

「ホント……可愛いな」と言う。


そして……とろんとした目をして、

私のカラダに負担がかからないようにベッドに寝かせてくれて、唇に触れるか触れないかの意地悪なキスで焦らされながら、唇を啄み、時折チュッと音を響かせると、高揚させられてしまう。


ゆっくりゆっくり舌を口内に滑り込ませると、優しく動かす舌は、私のそれを捉え絡ませる。堪らなく気持ち良くなる。

これだけで思わず声が漏れてしまうほど心地よくなってしまう。

まるでセックスしているかのような気持ちになってしまう。

優星が上手なんだと思う。だから、それだけで満足してしまう。

きっと、優星は、そうでは無いのかもしれないけれど……

私は、優星のこのキスが大好きだ。

最も愛を感じられるキスだから……


「今日は、帰らなきゃだもんな」と優星が言う。

「うん……」

母とは、連絡を取っているものの、きっと父も心配しているだろう。


「帰っちゃうよ」と言うと、

もう一度念入りにキスをする。

そして、

「あ────っ!」

と、ぎゅっと抱きしめられる。優星も我慢してくれているんだ。


「ご飯食べよう!」と気持ちを切り替えているようだ。

「うん」


2人で準備をした。

「「いただきます」」

「う〜ん、美味っ!」といつも褒めてくれる。

それをニコニコしながら見るのが好きだ。

本当に美味しそうに食べてくれるのだもの。

「ん? 大丈夫か?」

「うん! 明日は会社行くね」

「うん」

「あ、山下に彼女居る! ってバレたから、明日噂になってたら、アイツだから、ごめんな」と言った。

「そっか……分かった。ん? エロい彼女って思われてるんじゃ?」

「ハハッ、ごめん」

「ヤダ〜!」


でも、いよいよ、隠さずオープンな交際が出来るんだと思うと嬉しかった。



そして、またタクシーで家まで送ってくれた。

「やっぱ、車要るよなあ〜次の休み、車見に行きたいから、付き合って」と言った。

「うん、分かった」

「じゃあ、また明日な」と言うと、母が家から出て来た。


「あ、こんばんは」

「こんばんは、ありがとうね。送ってもらって」

「いえ……じゃあ、失礼します」

「上がって行かないの?」と母に言われたが、

「あ、今日はもう……」

「そう、じゃあ又ゆっくり来てね」

「はい、ありがとうございます」

「ありがとう」と言って手を振った。

優星は、電車で帰るようだ。


「大丈夫?」

「うん、もうスッカリ元気!」

「そう」

「明日、会社行く。明後日から又お休みだし」

「うん」


「ただいま〜」と言うと、既に帰っていた父が、「お帰り」と。

「もう大丈夫か?」

「うん、大丈夫! ご心配をおかけしました」と言うと、

「いや……」と言った。




──翌日


「おはようございます」と出勤した。

「おはよう〜」と山岸さん、

「おはようございます」

「大丈夫?」

「はい、ご心配をおかけしました」と言うと、「ううん、良かった」と言ってくださった。


そして、いつも通り優星が出勤した。

「おはようございます」

「おはようございます」と目配せをする。

「桐生! おはよう〜」

「オッス」


そして、山岸さんには、もうオープンにすることにしたことを話すと、

「分かった!」とニコニコされている。

「良かったね」

「はい」


すると、早速、小野田が

「高橋! おはよう〜」

「おはよう」と言うと、

「なんか一昨日、大変だったんだって?」と来た。


「あ〜まあ……」と言うと、

「矢田がさあ、ほら同期の……」

「うん」

「高橋には、彼氏が居るって、言ってたからさ」

「そうなんだ!」

「大滝さんって居るだろ?」

「うん」

「2人は、同じ部署でさあ、話してると、山下さんって先輩が『高橋さんって、桐生と付き合ってるの?』って聞いたらしい」


──うわぁオールキャストが揃ったなあ、

皆んな同じ部署だったんだ! と面白かった。


「あ〜なるほど」と言うと、優星が笑っている。

「フッ」

「ふふ」と山岸さんも笑っている。


「そうだよ!」と言うと、

「え? そうなの?」と驚く小野田。

「うん」と言うと、

優星が、

「悪りぃな、小野田! 事実だ」と言ってくれた。

「あ、そうなんですね」

「もう隠すつもりもないから」と言ってくれたから嬉しかった。

「あ、分かりました」と、自分の席へと戻って行った。


優星を見てニコッとした。

山岸さんもニコニコされている。


そして、噂好きな人のおかげで、みるみる噂は広まり、私たちが交際しているということは、社内放送でもしたのか? と思うほど多くの人に知れ渡ったようだ。


「どうして? 1社員のことなのに……」

でも、何も悪いことをしているわけでもないし、どちらかと言うと応援してくれている人の方が多くて良かったと思った。


吉田に、

「矢田の事、悪かったな」と言われた。

「ううん、こちらこそ、言えなくてごめん」と謝った。


大滝さんにも会ったので、

「おめでとう! 言ってくれれば良かったのに」と言われた。

その時は、オープンにするつもりはなかったと話すと、理解してくれた。


優星も同期の横野さんに、

「おめでとう!」と言われたようだ。

なので、やっと私が高校の後輩だと言えたようで喜んでいた。


ようやく誰に遠慮することなく、オープンに出来たので嬉しい!

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