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第32話 沁みる想い

 救急車の中でも、優星はずっと私の手を握り、「ごめんな」と言っていた。

「ううん」と首を横に振る。

吸入をしていたので、上手く話せない。


大滝さんは、優星に『私と同期だから、仲が良い!』という風に話していたようだ。

だから、優星は勘違いをして、それなら無下に出来ないと思ったようだ。

何度も謝るので、「ううん」と又首を振った。


病院に到着し、軽い低体温症になっていたので、点滴を受けた。

点滴が終わると帰って良いと言われたので、処置室から出ると、父と母も来てくれていた。


「え?」

「花怜! 大丈夫?」「大丈夫か?」と。

優星が連絡してくれたようだ。


「あ、ごめん。心配かけて……もう大丈夫!」

「良かった」「そうか……」


優星の元気がない。

父に何か言われたのか?


「あ、私が勝手に屋上に出てたら、警備員さんに鍵を掛けられちゃって……」と言うと、

「俺のせいです」と言う優星。

「「え?」」

「違う! 私が勝手に……」と言うと、

「どう言うことなの?」と言う母。


成り行きを話すと、

「そう〜! なら花怜の勘違いね」と母。

「うん」

「でもな、優星くんもなあ」と言う父。

「勘違いだから……優星は私のことを思って」

「いえ、俺のせいです。申し訳ありません」と謝罪する優星。

「違うから……」


「はいはい、もう分かったから」と父。

「そうよ。優星くん、もう交際をオープンにしたら?」と言う母。

「はい! そうします!」と言う優星。


「え?」

「何も隠すことはない! オープンにしよう」と言われた。

「いいの?」

「もちろん! 結婚するんだから!」と言うと、

父が、「まだ前提な!」と言う。

「あ、はい、結婚前提ですね」と言う。

「「ふふ」」と母と笑ってしまった。

「じゃあ帰ろうか」と父が言う。


私が優星の方を見たので、

母が「じゃあ、私たちは……お父さん!」と……父の背中を押した。

そして、「今日は、泊まって来たら? 優星くん花怜のこと、お願いね」と言ってくれた。

「ありがとう」

「ありがとうございました」と深々と頭を下げている優星。


「え? 花怜は?」

「お父さん! 早く車出してよ」と2人で帰って行った。


「良かったのか?」と言う優星。

「うん、話したいし……」

「うん」と手を繋いで歩く。


タクシーを止めて、乗り込み2人で優星の部屋へと帰った。


部屋に入ると、優星はいきなり私を抱きしめた。

「良かった〜」と……

更に、

「ごめんな」と又謝った。

「謝らないでよ」と言うと、

悲しそうな顔で見つめる。

「花怜に何かあったらと思うと、堪らなく怖かった」と言った。

「私だって……」


ジーッと見つめている。

「良かった」と両頬を撫でている。

いつもなら、とっくにキスしているのに、

何を遠慮しているのだろう。


「キスしてよ」と言うと、

「いいのか?」と聞いた。

「いいに決まってる!」と言うと、

ようやくキスを落とした。


そして、額と額を合わせる。

「どうして、すぐしなかったの?」と聞くと、

「病院帰りだし、それに、怒ってるかと思って……」と言うので、

「ふふ、怒ってる!」と言うと、

「え?」と不安そうな顔をしたので、

「すぐにしてくれなかったから、怒ってる!」と言うと、笑った。


もう一度ぎゅっと抱きしめられた。

「ごめん」と又謝った。

「また謝った」

「だって怒ってるって言ったから」と言うので、

「じゃあもう1回して」と言うと、

また、ゆっくり丁寧なキスが落ちてきた。

「許す!」

「フッ」


ようやく、ベッドに腰掛けた。

「横にならなくて大丈夫か?」と聞いてくれるが、

「もう大丈夫」と言うと、

「何か飲むか? あ、腹減ってないか?」とオロオロしている。


「1回ココに座って」と隣りに座るようお願いした。

すると、ゆっくりベッドに腰掛けた。

「優星こそお腹空いたよね? ごめんね」と言うと、

「ううん」と……


そして、私が最初から仲良くしている同期は、杏奈ちゃん、吉田、小野田だけだと話した。

「分かった!」

「小野田が入ってるのは、ちょっと……」とゴニョゴニョ言っているが、

「ふふ、もうオープンにするんでしょ?」

「うん、する! 誰にも隠さない!」と言った。

「分かった」とぎゅっと優星を抱きしめた。


「あっ!」と今日、吉田が同期の矢田くんを連れて来たことを思い出したので、ついでに話した。

「そっか……」


杏奈ちゃんにも、吉田に私たちが付き合ってることを話してもらって、矢田くんのことをこれ以上勧めることは、して欲しくない! と伝えてもらったところだと話した。

「そっか、分かった」と言った。


「あ〜花怜〜」と又苦しいぐらいに抱きしめる。

「ふふ苦しいよ」

「あ、ごめん、大丈夫か?」

「折れる」と言うと、

「え?」と本当に慌てている。


今は、冗談も通じないようだ。

「冗談だから、大丈夫だよ!」と言うと、

「そうか……」と微笑む。


「何か食べる? 作ろうか?」と言うと、

「何言ってんの! まだ動いちゃダメ!

自分で出来るから、花怜はうどん? 雑炊?」と聞いてくれる。

「じゃあ雑炊にしてもらおうかなあ」と言うと、

「分かった! 得意だ!」と言った。

「ふふ、ありがとう」

「うん」


優星は、私が作り置きしていたおかずとご飯を解凍した。私には玉子雑炊を作ってくれた。

きっと1人なら何も食べる元気もないか、もしくは、下のコンビニで何か買っただろうに……


嬉しかった。凄く愛を感じた。

優星が作ってくれた、ふわふわ玉子が入った雑炊は、カラダにも心にも沁みる温かい心の籠った雑炊だった。


一口食べると、

「美味しい〜」

「良かった」と心配そうに見ている優星。


そう言うと、涙が溢れた。

「生きてて良かった……」

「うん……」と、背中を摩ってくれる。


ジッと心配そうに見ているので、

「あ、優星も食べて」と言うと、

「うん! 花怜の料理は最高に美味いからな」と、解凍した鶏肉の甘酢あんを食べている。

「う〜ん、美味い! 最高〜世界一だな」と喜んでいる。

「ふふ、大袈裟だな」

「本当に!」と言う。


──やっぱり大好きだ! 

ずっと、この人の隣りに居たい!


そう思わせてくれる人だ。


「花怜、明日は念の為、1日休んで寝てなよ」と言う。

「え、大丈夫だよ」

「ダメダメ! 山岸さんには言っとくから」

「う〜ん、退屈だなぁ」

「眠れなくても、出歩いちゃダメだよ!」

「分かった……」



──翌日

「じゃあ、なるべく早く帰って来るから、休んでて」と言う優星。

「うん、行ってらっしゃい」と言うと、

「なんだか、新婚みたいだな」と喜んでいる。

「ふふ」

「新婚なら、行って来ますのチューとかするんじゃないの?」と言う優星。

──なんだか楽しそうだ

「する?」

「うん、する!」


昨日は、躊躇してたくせに、今日は、簡単にした。


「ふふ、行ってらっしゃ〜い!」

「行って来ます」と言って、一旦ドアノブに触れたが……

「やっぱり、もう1回」と、朝から濃厚なキスをする。


「ふふ、頑張ってね!」

「うん! 頑張る!」と手を振って出て行った。と思ったら、

「鍵掛けて!」と又開けた。

「ハハッ、分かったから遅刻するよ」

「行って来ます」と頭を撫で撫でされた。

「ふふ」


山岸さんに、昨日のお詫びとお礼、そして、今日お休みする旨のメッセージを送った。


〈了解〜! 旦那は見張っておくから!〉と返ってきた。


そっか、山岸さんは、優星が大滝さんに言い寄られてるのをご存知だから……

でも、『もうオープンにする!』って言ってくれたから、そのタイミングがいつなのかは、分からないけど、私は優星を信じる。



もう、ずっと寝ている必要もないので、

お昼寝はするとして、洗濯機を回して、軽く掃除機をかけた。

少し一息ついて……


「あ〜ん、暇だ!」

外に出ちゃダメって言ってたし、冷蔵庫を開けて、食材を出し、私は又作り置きをしておこうと料理をした。


夜ご飯は……

「ビーフカレーで良いか」と、カレーを作る。

お昼は、一応まだ温かいうどんを食べた。


〈ジッとしてるか?〉と来たので、

〈うん〉と返しておく。


そして、優星の本棚に高校の卒業アルバムを見つけて、

「良いのがあるじゃん!」


〈卒アル見ても良い?〉と送ると、

〈うん〉とOKマークが返って来た。


「うわ、優星だ!」

この頃は、やっぱり優輝先輩とソックリで、2人共カッコイイサッカー部の写真。


「懐かしいな」

私が好きだった頃の優輝先輩だ。

今は、もう優星のお兄さん!


「え?」

1枚の写真を見て驚いた!


私が友達と一緒に写り込んでいる。

しかも、私たちは優輝先輩の方を向き、

優星が私たちの方を見ている写真だ!

凄いショット! 

優星は、気づいているのだろうか……

だから、大事に持ってくれているのだろうか……


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