救急車の中でも、優星はずっと私の手を握り、「ごめんな」と言っていた。
「ううん」と首を横に振る。
吸入をしていたので、上手く話せない。
大滝さんは、優星に『私と同期だから、仲が良い!』という風に話していたようだ。
だから、優星は勘違いをして、それなら無下に出来ないと思ったようだ。
何度も謝るので、「ううん」と又首を振った。
病院に到着し、軽い低体温症になっていたので、点滴を受けた。
点滴が終わると帰って良いと言われたので、処置室から出ると、父と母も来てくれていた。
「え?」
「花怜! 大丈夫?」「大丈夫か?」と。
優星が連絡してくれたようだ。
「あ、ごめん。心配かけて……もう大丈夫!」
「良かった」「そうか……」
優星の元気がない。
父に何か言われたのか?
「あ、私が勝手に屋上に出てたら、警備員さんに鍵を掛けられちゃって……」と言うと、
「俺のせいです」と言う優星。
「「え?」」
「違う! 私が勝手に……」と言うと、
「どう言うことなの?」と言う母。
成り行きを話すと、
「そう〜! なら花怜の勘違いね」と母。
「うん」
「でもな、優星くんもなあ」と言う父。
「勘違いだから……優星は私のことを思って」
「いえ、俺のせいです。申し訳ありません」と謝罪する優星。
「違うから……」
「はいはい、もう分かったから」と父。
「そうよ。優星くん、もう交際をオープンにしたら?」と言う母。
「はい! そうします!」と言う優星。
「え?」
「何も隠すことはない! オープンにしよう」と言われた。
「いいの?」
「もちろん! 結婚するんだから!」と言うと、
父が、「まだ前提な!」と言う。
「あ、はい、結婚前提ですね」と言う。
「「ふふ」」と母と笑ってしまった。
「じゃあ帰ろうか」と父が言う。
私が優星の方を見たので、
母が「じゃあ、私たちは……お父さん!」と……父の背中を押した。
そして、「今日は、泊まって来たら? 優星くん花怜のこと、お願いね」と言ってくれた。
「ありがとう」
「ありがとうございました」と深々と頭を下げている優星。
「え? 花怜は?」
「お父さん! 早く車出してよ」と2人で帰って行った。
「良かったのか?」と言う優星。
「うん、話したいし……」
「うん」と手を繋いで歩く。
タクシーを止めて、乗り込み2人で優星の部屋へと帰った。
部屋に入ると、優星はいきなり私を抱きしめた。
「良かった〜」と……
更に、
「ごめんな」と又謝った。
「謝らないでよ」と言うと、
悲しそうな顔で見つめる。
「花怜に何かあったらと思うと、堪らなく怖かった」と言った。
「私だって……」
ジーッと見つめている。
「良かった」と両頬を撫でている。
いつもなら、とっくにキスしているのに、
何を遠慮しているのだろう。
「キスしてよ」と言うと、
「いいのか?」と聞いた。
「いいに決まってる!」と言うと、
ようやくキスを落とした。
そして、額と額を合わせる。
「どうして、すぐしなかったの?」と聞くと、
「病院帰りだし、それに、怒ってるかと思って……」と言うので、
「ふふ、怒ってる!」と言うと、
「え?」と不安そうな顔をしたので、
「すぐにしてくれなかったから、怒ってる!」と言うと、笑った。
もう一度ぎゅっと抱きしめられた。
「ごめん」と又謝った。
「また謝った」
「だって怒ってるって言ったから」と言うので、
「じゃあもう1回して」と言うと、
また、ゆっくり丁寧なキスが落ちてきた。
「許す!」
「フッ」
ようやく、ベッドに腰掛けた。
「横にならなくて大丈夫か?」と聞いてくれるが、
「もう大丈夫」と言うと、
「何か飲むか? あ、腹減ってないか?」とオロオロしている。
「1回ココに座って」と隣りに座るようお願いした。
すると、ゆっくりベッドに腰掛けた。
「優星こそお腹空いたよね? ごめんね」と言うと、
「ううん」と……
そして、私が最初から仲良くしている同期は、杏奈ちゃん、吉田、小野田だけだと話した。
「分かった!」
「小野田が入ってるのは、ちょっと……」とゴニョゴニョ言っているが、
「ふふ、もうオープンにするんでしょ?」
「うん、する! 誰にも隠さない!」と言った。
「分かった」とぎゅっと優星を抱きしめた。
「あっ!」と今日、吉田が同期の矢田くんを連れて来たことを思い出したので、ついでに話した。
「そっか……」
杏奈ちゃんにも、吉田に私たちが付き合ってることを話してもらって、矢田くんのことをこれ以上勧めることは、して欲しくない! と伝えてもらったところだと話した。
「そっか、分かった」と言った。
「あ〜花怜〜」と又苦しいぐらいに抱きしめる。
「ふふ苦しいよ」
「あ、ごめん、大丈夫か?」
「折れる」と言うと、
「え?」と本当に慌てている。
今は、冗談も通じないようだ。
「冗談だから、大丈夫だよ!」と言うと、
「そうか……」と微笑む。
「何か食べる? 作ろうか?」と言うと、
「何言ってんの! まだ動いちゃダメ!
自分で出来るから、花怜はうどん? 雑炊?」と聞いてくれる。
「じゃあ雑炊にしてもらおうかなあ」と言うと、
「分かった! 得意だ!」と言った。
「ふふ、ありがとう」
「うん」
優星は、私が作り置きしていたおかずとご飯を解凍した。私には玉子雑炊を作ってくれた。
きっと1人なら何も食べる元気もないか、もしくは、下のコンビニで何か買っただろうに……
嬉しかった。凄く愛を感じた。
優星が作ってくれた、ふわふわ玉子が入った雑炊は、カラダにも心にも沁みる温かい心の籠った雑炊だった。
一口食べると、
「美味しい〜」
「良かった」と心配そうに見ている優星。
そう言うと、涙が溢れた。
「生きてて良かった……」
「うん……」と、背中を摩ってくれる。
ジッと心配そうに見ているので、
「あ、優星も食べて」と言うと、
「うん! 花怜の料理は最高に美味いからな」と、解凍した鶏肉の甘酢あんを食べている。
「う〜ん、美味い! 最高〜世界一だな」と喜んでいる。
「ふふ、大袈裟だな」
「本当に!」と言う。
──やっぱり大好きだ!
ずっと、この人の隣りに居たい!
そう思わせてくれる人だ。
「花怜、明日は念の為、1日休んで寝てなよ」と言う。
「え、大丈夫だよ」
「ダメダメ! 山岸さんには言っとくから」
「う〜ん、退屈だなぁ」
「眠れなくても、出歩いちゃダメだよ!」
「分かった……」
──翌日
「じゃあ、なるべく早く帰って来るから、休んでて」と言う優星。
「うん、行ってらっしゃい」と言うと、
「なんだか、新婚みたいだな」と喜んでいる。
「ふふ」
「新婚なら、行って来ますのチューとかするんじゃないの?」と言う優星。
──なんだか楽しそうだ
「する?」
「うん、する!」
昨日は、躊躇してたくせに、今日は、簡単にした。
「ふふ、行ってらっしゃ〜い!」
「行って来ます」と言って、一旦ドアノブに触れたが……
「やっぱり、もう1回」と、朝から濃厚なキスをする。
「ふふ、頑張ってね!」
「うん! 頑張る!」と手を振って出て行った。と思ったら、
「鍵掛けて!」と又開けた。
「ハハッ、分かったから遅刻するよ」
「行って来ます」と頭を撫で撫でされた。
「ふふ」
山岸さんに、昨日のお詫びとお礼、そして、今日お休みする旨のメッセージを送った。
〈了解〜! 旦那は見張っておくから!〉と返ってきた。
そっか、山岸さんは、優星が大滝さんに言い寄られてるのをご存知だから……
でも、『もうオープンにする!』って言ってくれたから、そのタイミングがいつなのかは、分からないけど、私は優星を信じる。
もう、ずっと寝ている必要もないので、
お昼寝はするとして、洗濯機を回して、軽く掃除機をかけた。
少し一息ついて……
「あ〜ん、暇だ!」
外に出ちゃダメって言ってたし、冷蔵庫を開けて、食材を出し、私は又作り置きをしておこうと料理をした。
夜ご飯は……
「ビーフカレーで良いか」と、カレーを作る。
お昼は、一応まだ温かいうどんを食べた。
〈ジッとしてるか?〉と来たので、
〈うん〉と返しておく。
そして、優星の本棚に高校の卒業アルバムを見つけて、
「良いのがあるじゃん!」
〈卒アル見ても良い?〉と送ると、
〈うん〉とOKマークが返って来た。
「うわ、優星だ!」
この頃は、やっぱり優輝先輩とソックリで、2人共カッコイイサッカー部の写真。
「懐かしいな」
私が好きだった頃の優輝先輩だ。
今は、もう優星のお兄さん!
「え?」
1枚の写真を見て驚いた!
私が友達と一緒に写り込んでいる。
しかも、私たちは優輝先輩の方を向き、
優星が私たちの方を見ている写真だ!
凄いショット!
優星は、気づいているのだろうか……
だから、大事に持ってくれているのだろうか……