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フェアリーガーデン
フェアリーガーデン
椿灯夏
現代ファンタジー都市ファンタジー
2025年04月09日
公開日
661字
連載中
この世界には架空である妖精が存在する そして学園には 妖精の庭(フェアリーガーデン)が存在し、どんな幻想でも叶えてくれるという 詩(かぎ)を探し、妖精と共に詩(うた)を結べば たどり着ける “妖精の楽園” 妖精と紡ぎ手が織り成す幻想物語――

第1話 妖精と紡ぎ手

 新緑の緑が眩しい。澄んだ風が、木々の葉擦れの音を紡ぐ度美しい詩を聴いているようだ。自然から発せられる詩は人が紡ぐものより清らかで、汚れがない。


 穏やかな昼下がり。淡い金髪の少年は読みかけの本を顔に乗せ、微睡んでいる。


 こういう時間の過ごし方は貴重で、贅沢だ。


 少年がいるこの庭園は、学園が所有するうちの一つで、アンティーク調のベンチが置いてあるだけの小さな庭園。


 ここはお気に入りの場所で、千思万考せんしばんこうするには丁度い。


 いつも通りの日常風景で終わるはずだった。が、少年の傍にいる、淡い光の蝶が呆れた口調で言ってきた。


 しかもこれは、一回目じゃない。


あさひ。もうすぐ式はじまるんじゃねーのか? 仮にもお前、学園の代表者だろ』


「……深紅しんく。最近、また蒼馬そうまに似てきたんじゃない?」


『あいつより悠かにマシだっての。言っとくけど、行かねーのナシだからな! 妖精にとっても大事な式なんだぞ、絶対わかってると思うけど』



 少年はやれやれと言わんばかりに身体を起こす。


 たった今、自分の聖域ともいえる楽園に息を切らせながら、“話題の中心人物”が呼びに来たのだ。いい加減痺れを切らしたのだろう、式の時間に遅刻するなど前代未聞。


(ふたりして、真面目だなあ。間に合えば問題ないのに)


 噂をすれば、である。


「旭! 深紅! お前たちわかってるのか? 今日が、どれほど大切な日なのかを。特に旭、大体お前は昔から……」



 始まった。知識の象徴である眼鏡をかけた少年からの第一声、お説教である。


 深紅からしたらとばっちりでしかない。


 真田蒼馬さなだそうまとはそういう男だ。本人に自覚はないらしく、毎回これである。


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