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❁妖精と紡ぎ手〜❀〜

 この世界には妖精が存在する。お伽話や架空としての幻想ではなく、ちゃんと実在している。


 姿や性格も多種多様で、好き嫌いもあれば、得意不得意もある。その辺は妖精も人も同じ。


 透明な翅と不思議な力を持ち、生まれた時からそばにいる、最も近しい存在。


 家族や友だちよりも一番近い存在で、でもそうじゃない。


 それが“妖精”。



 妖精は、命が生まれる前から詩の調べを聞き、紡ぎ手を選ぶ。うたは妖精にとって、自分の命そのもの。


 だから妖精は、自ら選んだ紡ぎ手を何より大切に想い、優先し、守護しなければならない。――果たしてそれが、命に刻まれた詩による記憶のものなのか、自分の心実なのかは不明である。



 悠遠の時からずっと、そうして紡ぎ手を選び、共に物語の終わりまで歩む。




 それが妖精と紡ぎ手の、いにしえから変わることのない盟約やくそくである。



 ――でも。



 その理由しんじつを誰も知らない。


 そう、誰も。

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