この世界には妖精が存在する。お伽話や架空としての幻想ではなく、ちゃんと実在している。
姿や性格も多種多様で、好き嫌いもあれば、得意不得意もある。その辺は妖精も人も同じ。
透明な翅と不思議な力を持ち、生まれた時からそばにいる、最も近しい存在。
家族や友だちよりも一番近い存在で、でもそうじゃない。
それが“妖精”。
妖精は、命が生まれる前から詩の調べを聞き、紡ぎ手を選ぶ。
だから妖精は、自ら選んだ紡ぎ手を何より大切に想い、優先し、守護しなければならない。――果たしてそれが、命に刻まれた詩による記憶のものなのか、自分の心実なのかは不明である。
悠遠の時からずっと、そうして紡ぎ手を選び、共に物語の終わりまで歩む。
それが妖精と紡ぎ手の、
――でも。
その
そう、誰も。