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0012 本当にいた神様

「ぎええぇぇぇぇーーーーっっ!!!!」


さすがは、天界の暴れん坊です。

人間が三人程度では相手にならないようです。

三人同時に神様に向って来ましたが、既に地べたに這いつくばっています。

私の目でギリギリ追いかける事が出来る速さでした。

ユウキ達には何が起きたか分からないでしょう。


最初に襲って来たのは三人の中では一番背の低い男です。

一番背が低いと言っても三人の中では、ということです。

175センチは越えているでしょう。

他の男達の身長は180センチを越えていそうです。


神様は、最初に襲って来た一番小さい男のあご先を拳ではたきました。

あごが千切れるのでは無いかと思える程に横移動しました。

そして、頭が90度横を向き地表に水平になりました。

その男は、声も出せずにひざから崩れ落ち失神したようです。

口の中がズタズタに切れたのか、倒れた男の口から三本ほど血の糸が地表にぶら下がっています。


そして悲鳴を上げたのは二番目に襲って来た男達のリーダーです。

リーダーはひざを横に蹴り飛ばされ、後ろにしか曲がらないはずのひざ関節が横にくの字になっています。

その時に、怪獣映画の怪獣のような声を出しました。

今も、ひざを押さえて苦痛を我慢しているようです。

うめき声が聞こえます。完全に折れているようですね。


三番目に襲って来た毛深い男は最初の男同様、あごをはたかれて地面に這いつくばっています。

口から、血の糸を三本ぶら下げています。

糸の先に血の水たまりが出来て、それがみるみる大きく広がります。


「かみしゃまーー!! かみしゃまーーーー!!!!」


ユウキは、神様に抱きつきました。

神様は、とてもうれしそうです。

ユウキの頭をやさしく撫でています。

まるで、父親が幼児をあやすようです。


「こ、この方が、ユウキさんのいつも言っている神様ですか……何も無いところから急に現れました」


エイリが、目を見開き神様を見つめ、まばたきを忘れています。


「実在していたのですね。と、とても美しいですわ」


ノブコは神様の顔を見てうっとりしています。


「あのぉー、エイリちゃん、ノブちゃん、はやくその見苦しい物をしまってください」


ユウキは光を失った暗い目をして、首だけ動かし、エイリとノブコを見て冷たく言い放ちました。

エイリとノブコは男達に突き飛ばされた時に、尻もちをついています。

二人はユウキとの外出がうれしかったのか、可愛い服を着てきました。

当然、スカートは短い可愛いスカートです。

今、そのスカートがめくれて、中身が丸出しになっています。


二人はお金持ちなのでシルクの高級品でもはいているのか、つやつやで光り輝いています。

可愛いリボンのついた、それでも勝負下着なのかちょっとエッチな下着です。


「あら……って、ユウキさん。見苦しいは、ひどいです」

「本当です。何があってもいいように、これでも一番良い奴をはいてきたのですよ」


エイリとノブコが頬を赤らめて恥じらいながらスカートを押さえて、見えなくしました。

こうしてみると、この二人も本当に美人で可愛いですね。

でも、神様は可愛いユウキの顔を夢中で見つめているため気がついていないようです。

スカートがなおってから、やっと二人の方を見ました。


「ふむ、ケガをしているね。見せてごらん」


神様は、二人のそばに行くと右手をエイリのケガ、左手をノブコのケガに向けました。


「う、うそ!! ケガが治りました!!」


エイリとノブコが目をまん丸にしています。


「うふふっ!!」


その顔を見て、ユウキが得意そうに笑いました。


「立てるかい?」


神様がエイリとノブコに手を差し出しました。

二人はそれに、がっつり抱きつき立ち上がり、そのままつかんだ手をはなしません。


「ふぅーーーーっ」


そして、二人は大きくため息をつきました。


「ユウキさん!! 神様のこの服装は何ですか!!」

「本当です!!」


エイリとノブコがキッと目をつり上げてユウキを見つめました。


「えっ!?」


「神様にまでこの服を着せているのですかーー!!」


神様は、アンナダメダーマンのティーシャツと茶色の変なズボンをはいています。


「ふふふ、この服はユウキとおそろいなんだ。ユウキが買って来てくれたんだよ。三百円もしたんだ」


神様はとてもうれしそうです。

きっと、ユウキに呼ばれて街に来るから、おめかししてきたのでしょう。


「はーーーっ」


エイリとノブコは大きなため息をついて下を向きました。

神様は、二人の暗い表情の意味がわからない為に、どうしようかという表情に一瞬なりましたが、急に明るい表情になり言います。


「ユウキ!! すごい!! すごいね!! 大きな建物が一杯ある。すごい街だよここは、こんなすごい場所ははじめて見た。僕は感動しているよ」


神様は、目をキラキラさせて、ぐるりとまわりを見わたしました。


「でも、ゴミが多いし、臭い、それに落書きも多いわ。二ヶ月前はもっと綺麗でしたのに」


エイリがキッと眉をつり上げて言いました。


「本当に、こんなに治安が悪くなっているなんて知りませんでした」


ノブコは暗い表情で言いました。


「それにしても神様が、こんな美しい方とは思いませんでした。ユウキさんの美しさにそん色がありません。さすがは神様です」


エイリは神様にしがみついたまま、神様の顔を見つめます。

エイリは女の子としては背が高い方なので目線が神様と同じ位です。

顔が近すぎです。

おかげでユウキの体から黒いもやのようなものが立ち上っています。


「本当です。歳も同じ位にしか見えません。わたしは神様を信じていませんでしたが、今日から神様の信者になりました。身も心も捧げます」


ノブコは標準的な身長ですので、必然的に少し上目遣いになり、頬を赤らめて潤んだ瞳で神様の顔を見つめました。

そしてつかんだ神様の腕に体を押しつけました。

うん、可愛いですね。

でも、そのせいで、ユウキの黒いもやが一回り大きくなりました。


「ぐっ、くっ……おい! がきっ!! てめーは俺達の恐ろしさを知らねえようだな。俺達はファミリーを作っている。やられたら必ず仲間が倍返しで仕返しをする。ぜってー逃げられねえぜ!! 覚悟するんだな」


悪党のリーダーが、どうやら足の痛みを耐えられるようになったようです。

人間の体は、どんな激痛も時間と共に耐えられるようになります。

やっと、声を出せるくらいには我慢が出来る様になったようですね。

ユウキが、悪党の言葉を聞いて怯えるように神様の背中に抱きつきました。


「ユウキ。大丈夫だよ、安心して。昔はこういうヤカラに下手を打ちましたが、今の僕は学習しています。それに、力もつけました。おそれる事は何もありません。ところでユウキ時間があるのなら、これからこいつらのファミリーをつぶしたいと思うのですが」


「あっ、ごめんなさい。これから、お友達と買い物に行きます」


「そうか。じゃあ、無理ですね。今度にしましょう。山神様」


神様は不意に私を呼びました。

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