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0013 禁断症状

「いるニャ」


私は返事をして、神様の正面に立ちました。


「うわあぁ!! かわいいーー!! すごくかわいいーー!!」


ユウキが言いました。


「ユウキ、山神様が見えるのですか?」


神様が驚いてユウキに問いかけます。


「えっ!? 見えますよ。髪の長い猫耳の幼女の巫女さん。滅茶苦茶可愛いです。あら、尻尾まで生えています。神様の視線の先を見たら急に見えました」


今、見えるようになったようです。

きっと、ユウキはあの安土山の神社にいる時間が長かったので、霊感が強くなっていたのかも知れませんね。

でもねユウキ、私を可愛いというのは、自分を褒めているようなものですよ。

私の姿はあなたの幼い頃の姿なのですから。


「なにを言っているのですか??」


ユウキの視線の先、私の立っているところを見つめて、エイリとノブコが不思議そうに首を傾けます。

どうやら、二人には見えていないようです。


「山神様、こいつらの様子を見張ってもらう事は出来ますか」


神様は、倒れている四人の外国人を、嫌な物を見る目をしてあごで示しました。


「ふふ、その位の事は簡単にできます」


私は、肩の辺りに小さな分身を出して外国人の上に飛ばしました。


「わあ、かわいい!! マスコットみたぁーい!」


ユウキは、外人の上に飛んで行く私の分身を目で追って、瞳を輝かせました。


「ユウキ、この二人は、ユウキのお友達なのかい?」


「はい。大切なお友達です」


「じゃあ、僕にとっても大切な存在だね。二人にもユウキと同じお守りをあげたほうがいいかな?」


「出来るのですか?」


「もちろん」


「お願いします。神様、お願いします。二人も私と同じように守護して下さい」


「ユウキと同じにはならないけど、ユウキの次くらいには護ります。それでいいかな?」


「はい!! エイリちゃん、ノブちゃん、両手の小指を出して下さい」


エイリとノブコは、ユウキに言われるまま何の事か分からないという表情で、両手の小指を神様の前に出しました。

神様はその小指を自分の手のひらで包みました。


「終わりました。これでいいでしょう。ユウキ、買い物があるのでしょ、行って来てください。困った事があったら、すぐに呼んで良いからね」


「はい! 皆、行きましょう」


ユウキに言われて、三人は繁華街の方へ歩いて行きます。

エイリとノブコは時々振り返り神様の顔を見つめています。

神様は、三人が辻を曲がって見えなくなるまで見送りました。

そして、倒れている悪党達に視線を移しました。


「あなたは、ちゃんと添え木をして支えないと足が千切れます。あごが折れている人は、服を脱いであごを包んで移動してください。でないと、あごが落ちてしまいますよ。そうなったら再起不能です。気を付けて帰ってください」


神様は、悪党四人に言ってその姿を見つめます。

神様なら一瞬で治せるはずですが、それはしないようですね。

まあ、当然です。

ユウキ達に悪さをしようとしたのですから。


「てめーの顔は覚えた。俺達は絶対に仕返しをする。いいか、絶対だ!!」


足の折れているリーダーが恐い顔で凄みます。

髭面の強面で眉をつり上げてにらみ付けられれば、たいていの人なら恐怖で身がすくみますが、神様は涼しい顔をしています。


「分かっています。あなた達が手段を選ばないことも知っています。せいぜい頑張って仕返しをしてください」


「てっ、てめーは、俺達が恐くねーのかー!?」


「うふふ、小さな子供のいたずらくらいには恐怖を感じていますよ。じゃあ、僕も帰ります」


そう言うと、神様は神社に帰って行きました。


「ぐわあぁ、き、消えたーー!!!! まっ、まさか、本当に神様なのかー!!??」


リーダーが驚いて声を出しました。

回りで様子を見ていた外国人と思われる男達も全員驚いています。

悪党達は、神様に言われたように折れた足には添え木をして、顔に服を巻きあごを保護してお互いの体を支えながらヨロヨロと歩きだしました。

私は、この後四人の行動を分身でずっと監視し続けます。






「ユウキさん」


エイリとノブコが学園の教室でユウキの席に来て呼びかけました。

二人の制服は夏服に替わっています。

ユウキも今日は夏服です。そして、少し前の土曜日に買ったばかりの清楚な新品の真っ白なパンツをはいています。良かったですね。

でも、おばあさんが手直しをしたボロは、捨てられずにちゃんとしまってあります。


「はい、何ですか?」


「あのーー……」


二人は赤い顔をして、もじもじしています。


「ト、トイレですか?」


「ちっ、違います!!!!」


エイリとノブコがキッと目をつり上げていいました。

ですよね。

トイレならモジモジしないで、自分でかってに行きますよね。高校生なのですから。


「じゃあ、なんですか?」


ユウキは、二人の怒った顔がおかしかったのか、ニコニコしています。

きっと、違うことは最初から分かっていたのでしょう。


「あの……、神様に会いたいのですが……」


再びモジモジしていましたが、今度はちゃんと言えたみたいです。

なんだか二人は、神様禁断症状が出ているみたいです。


「ええっ!! でも、何も用が無いのに呼ぶ事は出来ません」


「やっぱり、そうでしたか」

「いろいろ、忙しいのでしょうね」


エイリとノブコは暗い表情になり、小さな声で言いました。


「いえ、神様は暇だと思います」


ユウキは神様がどうしているのか想像が出来るのかキッパリといいました。

――確かにそうです。

神様は、最近は神社のおやしろの前の階段に座って、ボーッとしている事が多いです。

とても、暇なように見えます。


「ええーーっ!! 暇なのですか?」


エイリとノブコの声が合わさります。


「では……」


エイリがうれしそうな顔でユウキを見つめます。

でもユウキは首を横に振ります。


「何か呼ぶ口実が無いと」


ユウキは、それでも用事が無いのに呼ぶのは違うと思っているようです。

別にそんな物はいりませんよ。

呼んであげれば、喜んで来てくれると思いますけどね。


「では、土曜日までに何かを考えましょう」


ノブコが言いました。


「そうですね」


エイリが言ったその時、始業のチャイムが鳴ります。

二人は自分の席に戻って行きました。

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