「なんですか?」
「へい、こちらへ来てもらえやすか」
ガンネスは歩き出しました。
「神様。最後の魔法、恐すぎデェス。まだ全身が震えていマース。あれは何デェスか?」
ガンネスの後ろを歩きながらデェスが聞きました。
「あれは僕が最後に憶えた魔法です。僕の持つ魔法の中で最高位の魔法です。ですが、発動条件が難しくて今まで使えなかったのです。でも、やっと今日1ランク使いやすくなりました。と言っても初級レベルなので本当にわずかに使いやすくなっただけですけどね」
「神様のちょっとは、あまりちょっとではない気がしマース」
デェスは大きく体をブルッと震わせました。
「本当にちょっとですよ。初級レベルの魔法耐性の人にも使用可能になったのと、同時に収容できる人数が増えた程度です」
「初級の魔法耐性の人に使えるのなら、すでにほとんどの人に使えるようになったということデェス」
「そんなことは無いと思いますが、僕の世界の人にも使える様になったのは良かったです」
「デェスには使わないでくだサーイ」
「デェスは、いい子だから使えませんよ。使えるのは悪人にだけです」
「お、俺にも使わねえでくだせい」
ガンネスがマモリ様とデェスの会話に割り込んで来ました。
「善行を重ねれば、地獄には行かなくても済むようになります。緊急性が高いときには、周囲にいる人全員に使うかも知れません。天国に行けるように普段から良いおこないをして下さい。それに、そうしないと、どのみち死んだら地獄行きです」
「へ、へい……神様つきました。ここを昇って下せい」
ガンネスは朝礼用なのでしょうか、一段高い台にマモリ様と一緒に昇りました。
「ヤローーどもー!!!! 注目しねーか!!!!」
台にあがるなり、ガンネスは大声を出しました。
「!?」
ガンネスの声を聞くと全員が集り、台の上を見つめます。
「初めて見る奴もいるだろうが、我がガンネスファミリーの守護神様だーー!!!! 正真正銘本物の神様だぁーー!!!! 神様一言どうぞ」
「ええーー!! 聞いていないよー!!」
マモリ様が困った顔をしました。
「おねげえしやす」
「しょうがないですねえ。ゴホン!」
「すげーあれがチンコの神様だ」
「綺麗な女神様だ。女神のチンコの神様だ」
「チンコの神様のパンツが見えそうだ」
集った手下が小声でゴソゴソ言っています。
それが聞こえたのかマモリ様はスカートを両手で押さえました。
すでに、仕草まで可愛くなっています。
「てめーら、静かにしねーか!!!!」
ガンネスが一喝しました。
手下は一瞬で静まります。
「みなさん、信じられないと思いますがもうじき、異世界人がこの世界に侵略してきます。いえ、もう侵略はすでに始まっています。仲間を集め、組織を大きくして下さい。日々戦いが続くでしょうけど僕が全面的に協力します。一緒に戦いましょう」
「……」
マモリ様が言ったことが信じられないのか反応がありません。
「あのー、神様。俺達は神様の言うことなら明日世界が滅びると言われても信じやす。本国から大勢人を呼び寄せやしたが、全員とことん教育いたしやす。逆らう奴は、強制送還いたしやす。『信じられないでしょうが』とかは、言わねえでくだせい。神様が言えば白い物でも黒でやす。神様の言葉は絶対でやす。なあみんなーー」
「おおおおーーーーー!!!!!」
「あんなものを目の前で見せられれば何でも信じますぜーー!!!!」
「チンコの神様ーーーー!!!!! バンザーイ」
「あーー、ちんこの神様はいやだなあ」
「ぎゃあぁはっはっ!!!!!!」
全員から爆笑が起りました。
「こちらへ」
ガンネスはさらにマモリ様を連れて歩き出しました。
巨大倉庫のいっかくの事務所へ向っています。
「なんですかこれは? お葬式ですか?」
事務所の中には花が飾られ果物が沢山供えられています。
それを見て、マモリ様は驚いています。
「ちげーやす。神様の祭壇でやす」
その祭壇の中央に貧相な銀色のパチンコ玉をガンネスは丁重に戻しました。
立派な祭壇の中央にマモリ様の紋章の付いた銀色のパチンコ玉が鎮座します。
「おい!! あれを持ってこい!!」
ガンネスが手下に言いました。
「はっ!!」
手下は、高級そうな布に包まれた物を大切に持って来ました。
それを祭壇のパチンコ玉の横に小さな座布団を置き、その上に包みを置きます。
ガンネスは震える手で布を外しました。一体何でしょうか?
中からぬるりと光る金色の玉が出て来ました。
「敵のマフィアの金庫にあった純金で作りやした」
「そうですか。これがなにか?」
「へい! これを、その……」
ガンネスが言いにくそうです。
でも、たぶん紋章が欲しいのでしょうね。
御神体にしたいのでしょう。
「ああっ!! これで良いですか?」
神様が察して、純金の玉に手をかざすと、紋章が浮かび上がります。
「お、おおっーー!!」
事務所に集っているガンネスファミリーのみんなから声が漏れました。
パチンコ玉とは比べものにならないほどの品格の御神体の出来上がりです。
「少し大きな玉なので、魔力が多く込められました。他にパチンコ玉はありませんか?」
「へい、そう言われるのではないかと思いやして用意いたしやした」
ガンネスは、プラスチックのケースに沢山入ったパチンコ玉を持って来ました。
マモリ様はそれにも手をかざします。
全てのパチンコ玉にマモリ様の紋章が入ります。
「このパチンコ玉と純金の玉はセットです。純金の玉の近くでパチンコ玉を持っている人は、少し強くなれます。戦闘の時は是非両方持って行って戦って下さい。純金の玉は三度こすれば僕が呼び出せますからね」
「へい。なるべく神様に手間をかけねえようにいたしやす」
「いいえ。気にせずドンドン僕を呼び出して下さい。あまり時間が無いのですから」
「へい。みんなー聞いたかーー!!!! ガンネスファミリーはこれより、他国マフィアと次々戦争をする。だが、安心しろ俺達には神様が付いてくださるのだーー!!!!」
「おおおおーーーーーっっ!!!!!」
事務所に集っているガンネスファミリーの手下達から勇ましい声が上がりました。
「ありがてー、金玉のかみさまーー!!」
「金玉のかみさまーー」
「金玉のかみさまーー!!!! バンザーイ!!!!」
純金の玉に全員が手を合せて頭を下げました。
マモリ様はチンコの神様から金玉の神様になりました。
この後、ガンネスファミリーは近所のマフィアを駆逐すると、その仕事と、財産を奪い組織をドンドン大きくしていきます。
同時に、ガンネスは自分だけ天国に行こうと、手下の家族にボランティアで街の清掃などをさせています。
おかげで、駅のまわりも綺麗になり悪臭も無くなりました。
マモリ様はガンネスに呼ばれると、惜しげも無く究極冥界魔法ヘルグレートエンペラーを使い、ケガをした部下には治癒を使い全面的に協力します。
ガンネスファミリーは瞬く間に一大勢力になっていきました。