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0043 危険な依頼

「ないわねぇー」


放課後の部室のパソコンの前で、ノブコがつぶやきました。






あの日、ノブコを先頭に吉田先生とエイリとユウキの四人は理事長、と言ってもノブコのお婆さまなのですが、その理事長の所へ直談判に行きました。


一通りノブコとエイリが熱意を込めて、異世界人の侵略の話から妖怪の話までしましたが、理事長はその全てにニコニコやさしい笑顔で返していました。

何処まで心に届いたのかは分かりませんが無事、光回線とパソコン、エアコンをゲット出来ました。


まあ、その全ての費用をエイリの十田家が寄付をする、という事なので、学園は懐が痛まないというところが、よかったのかも知れません。

エイリは「一億円寄付をしましたわ」と言っていましたが、「全部の工事代と機器代を足しても一千万円もしないのじゃ無いかしら」とノブコが驚いていました。


その会話を聞いていて吉田先生は言いました。「○ども家庭庁と同じですね。予算七兆円以上で、実際子供に使われるのは、一体いくらなのでしょうか。毎年生まれてくる子供の数は減っています。去年は七十二万人でした。○ども家庭庁を廃止すれば、生まれてきた子供達全員に一千万円ずつ配れるはずです。その方が絶対いいはずですよね。誰でもわかります。きっと十田家の寄付も中抜きやキックバックに変わり九割消えてしまったのでしょう。政府の税金の使い方と同じです。よかったですね。学校でこんな良い勉強ができて」


吉田先生は皮肉たっぷりに言って笑っていました。

政府の予算も九割くらい、誰かの懐に消えているということなのでしょうか。少なくとも吉田先生はそう思っているみたいですね。

吉田先生の笑顔を見て、エイリとノブコは悲しそうに笑いました。

ユウキは「ええっ! このパソコン、一億円なのですか。ガクガクブルブル」と言っていました。

良くわかっていないようです。






「こっちも、あまり有力な情報はありませんわ」


エイリも言いました。

エイリとノブコはレイセイと妖怪について調べています。


「うーーっ、疲れましたーーーー!!!! 毎日、毎日、心霊系動画を見続けてぇーー」


ユウキは眉をしかめて言いました。

良い情報は無かったみたいですね。

ユウキはカッパの情報を集めていました。


「やっぱり駄目ですか」


ノブコが残念そうに言います。


「ふっ、ふっ、ふっ、恐らくここには居ます」


ユウキはふくらみの無い胸を反り返しました。


「ええっ!!」


エイリとノブコが驚きの声を上げました。

そして、残念姫のユウキの顔を見つめます。

本当だと思っているみたいです。

エイリちゃん、ノブコちゃん、あなた達は忘れていませんか。

ユウキが残念姫だということを。


「まずは、これを見てください」


「ゴクリ」


二人はモニターをのぞき込み、ツバを飲み込みました。

外ではセミが元気に鳴いています。

でも、部室はエアコンのおかげで快適です。


「さーー、練習の時間でーーす」


ちーちゃんが元気に言いました。


「えーー、このタイミングでーー!!」


エイリとノブコが同じタイミングで言いました。


「でも、約束ですからー」


ちーちゃんが明るい可愛い笑顔です。


「むーー!!」


エイリとノブコは不満そうですが、これだけはしょうが無いですね。約束ですからね。

軽音部の練習をする時間になったようです。


「あっ、あのーー」


その時、部室の引き戸がノックされて声がしました。


「はい、どうぞ」


奈々とちーちゃんが、同時に言いました。

ドアを開けたのは、お下げ髪のメガネを掛けた真面目そうな少女でした。


「あのーー、私、生徒会長の後藤智子です」


「はっ!?」


全員が、生徒会長が何の用? という驚きの声を出しました。


「あの、生徒会長さんが軽音部へ何の御用でしょうか?」


奈々が代表で聞きました。


「えっ!? 軽音部? オカルト研究部と聞いて来ました」


「だ、だれから??」


「理事長先生から伺いました」


「ノブコさん、理事長先生に、どう説明したのでしょうか?」


奈々がノブコの顔を見ました。

どうやら、理事長は何かを勘違いしたようですね。

可愛い孫が、妖怪とか不思議なオカルトの研究をしたいと言っていたとでも思ったのでしょうね。


「はっ!! 軽音部とは一言もいっていませんでした」


「もーーっ!!」


奈々が頬をぷくっとふくらませて、ノブコの顔をにらみました。

いえいえ、その顔、可愛いだけですよ。


「それで、何の御用でしょう?」


ちーちゃんが、生徒会長に聞きました。


「はい。実は、電車通学の子達が困っていまして、生徒会に苦情が来ました。それを理事長先生に相談したら、こちらで受け付けていると」


「はぁぁーーーーっ!?」


奈々が恐い顔で生徒会長の方を見ました。


「わかりました。駅へ行ってみればいいのですね」


ユウキがうれしそうに言いました。

部活の練習よりはこっちの方が楽しそうだと思ったようです。


「よろしいのですか? あの結構危険ですけど」


「危険?」


エイリとノブコがうれしそうな顔になって同時に言いました。

最近マモリ様は、ガンネスファミリーの所へ行きっぱりで、こちらには余り来ていません。

あわよくば、マモリ様を呼ぼうと考えているのかも知れません。


「やります!!!!」


ユウキとエイリとノブコが内容もよく聞かないまま引き受けました。


「と、いうことなので部長、わたし達は駅へ行ってきます」


ユウキがうれしそうに奈々に言いました。


「しょ、しょうがないわねえ」


奈々が言うと同時に三人は部室を飛び出しました。


「あ、あの、私、相談の内容を言いましたでしょうか?」


部室を意気揚々と飛び出す三人の背中を目で追って、生徒会長が言いました。


「ああ、大丈夫です。行けばわかるのでしょ。なら心配はありません。あの三人は特別ですから」


奈々が、苦笑しながら言いました。


「はっ、はぁ」


生徒会長が心配そうな顔をして奈々の顔に視線を移しました。

いったい、駅に何があるのでしょうか。

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