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0044 たいじ

ユウキとエイリとノブコは意気揚々と最寄り駅に到着しました。

静かなローカル駅です。


「何も、かわりありませんわ」


「きっと、ここではないのでしょう」


エイリが言うと、ノブコが答えました。

三人は大きな街の駅へ電車で移動します。


「わあぁぁーー!! すごぉーーいぃーー!!!!」


三人は街の駅舎を一歩外に出ると声が出ました。

駅の回りには、ゴミが無くなりとても綺麗です。

そして、悪臭もなく三人はまるでハイキングで深い森林に来た人のように深呼吸をしながら言いました。


「とても綺麗です。何も問題はなさそうですけど……」


駅のロータリーを歩き出すと、ノブコが言いかけて途中で足が止まりました。

すぐに異変に気が付いたようです。


「へっへっへっ」

「おい見ろ!! 滅茶苦茶可愛いじゃねえか!!」

「幸魂女子にはブスしかいないと思っていたけど、こいつらはすげーー」


大勢のたちの悪そうな男子高校生がしゃがんでいます。

そして、頭を地面に近づけてエイリとノブコの短いスカートの中をのぞき込みます。


「何をするの!!」


ノブコがスカートを押さえて声を出しました。


「何をするにょ! 声まで可愛いぜ!」 

「ひっひっひっ」


「……」


ユウキとエイリとノブコが、無言で顔を見合わせます。

「あーー、そういうことかー」と、顔が言っています。


この近くには、工業系の男子生徒ばかりの高校があります。

そこの生徒でしょうね。

髪型や制服の着方を見ると、真面目な生徒のようには見えません。

悪そうな外国人の姿が消えたら、たちの悪い高校生が発生しているようです。

それはまるで、ネズミを退治したらG虫が大量発生するのに似ていますね。


「真ん中の奴は、顔が滅茶苦茶いいなあ」

「でも、スカートはなげーし、胸がペッタンコだ」

「いろけがねえよな。ありゃあ男じゃねえのか」

「ああ、メガネの胸がでけえ奴一択だな」

「そうだな。メガネだな」

「いや、あの背がたけーのもよくみりゃあ、スタイルがモデルみたいだ。頭も小せえ。ペッタンコよりはいいぜ」


ユウキだけはペッタンコだから、人気が無いみたいです。

でも、そんなことを言って良いのでしょうか。

エイリとノブコの顔が怒りに満ちあふれてきます。


「チッ!!」


エイリとノブコが同時に舌打ちをすると、ユウキの悪口を言った男子高校生達に近づきます。

大丈夫でしょうか。

人数が多いですよ。十人ぐらいいます。


「いでーーっ!!!!」


エイリとノブコは、ユウキの悪口を言った男子高校生の、お尻の割れ目の真ん中を蹴り上げました。

蹴られた男子高校生が悲鳴を上げながら五回転ぐらい前転しました。


「な、なにをしゅりゅ……」


けられなかった男子高校生が、蹴ったエイリとノブコの方を見ながら言いました。

見るとエイリとノブコの足が宙に浮かび、この世の物とは思えないような美しい白いパンツが目の中に飛び込んできました。

とびっきり美少女の生パンツです。

男子高校生が夢にまで見た女子高生の生パンツです。


だからつい噛んでしまったようですね。

全員、鼻を押さえています。

鼻血は出ていませんよ。

そんなに簡単に鼻血は出ません。

しばらく沈黙が続きます。


「きゃっ!!」


エイリとノブコが男子高校生の視線に気がつき急に恥じらいました。

スカートを押さえてしゃがみ込んでしまいました。

あなた達、それは駄目です。

しゃがんだら、しゃがんでいる男子高校生から中が丸見えです。


「おほっ!!」


男子高校生の鼻を押さえた手の指の間から赤い物が流れ出してきました。

あら、意外と鼻血は出るものなのですねえ。

もし手で押さえていなければ、前に吹き出していたかもしれません。


「おまえらー!! 何をやっとるんじゃあー!! なさけねえー!!」


集団の後ろから、薄い学生カバンを持ち、持っていない方の手をポケットに突っ込んだリーゼントの男が歩いてきました。

その横に角刈りの男子高校生が並んでいます。


「そ、総長!!」

「ふ、副総長!!」


しゃがんでいた男子高校生達が、立ち上がって頭を下げました。

すでに、二人は顔が悪の顔になっています。

とても高校生には見えません。

昭和のツッパリの風格です。


ユウキはその姿を見ると数歩後ろによろけました。

全身が震えています。

おびえているようです。


「か、かっこいい!!」


両目をウルウルさせながら言いました。

どうやら、ユウキは感動していたようです。


「ざ、残念姫だぁ」


エイリとノブコが声をそろえて言うと、スクッと立ち上がり総長と副総長の前に立ちふさがりました。

私は恐いのですが、二人はなんともないようですね。


「なんじゃおまんら?」


副総長がノブコの顔に自分の顔を近づけて言いました。

眉間にたてじわを入れて、頭を斜めにしてにらみ付けます。

私は知っていますよ。これはミンチです。


「すごい!!」


ノブコがにらみ付けられて、声を出しました。

でも、その言い方はユウキ同様うれしそうです。


「本当に!! まったく恐くありません。こいつらにはオーラがありませんわ」


エイリは、総長に近づいて顔を見て言いました。


――そうか!!


この二人はガンネスファミリーで本物のマフィアを見ています。

それと比べると確かにオーラがありません。

いえ、もっとオーラのあるマモリ様の側にいるので恐さを感じないようです。

そう考えると、私も恐くなくなりました。


「なにーーっ!!」


総長と副総長が同時に言いました。


「おまえらー、なめとんのかーー!!!!」


まわりを囲む男子高校生が全員で言いました。

そんな大声を出したら恐いですよ。


「俺は、男女平等だとおもうちょる。だから女でも手加減せんぞー!!」


かよわい女の子を手加減せずにぶん殴れると言っているようです。

最低野郎ですね。

三人は小指を見ました。

小指の爪のマモリ様の紋章は青く光っています。

この時は、マモリ様の防御魔法が起動している状態です。


「じゃあ、こっちも本気で行きます。全員でかかってきなさい」


ノブコがなるべく怖がらせるように低い声で言いました。

でも、やっぱり可愛いだけです。


「バルキリー、レボリューション!!!!!!」


三人が右手を天高く上げて小指を突き出しました。

小指の爪の紋章が赤く輝き戦闘モードになります。


「おおおおーーーーー!!!!!」


まわりの男子高校生達から声が上がりました。


「……」


三人の勢いに思わず、声を出した男子高校生達でしたが、次に何が起るのか待ち構えています。変身でもするのかと思っているようです。


「おまんら、裸になってちょっとエッチなコスチュームに変わるんじゃねえのか?」


副総長が聞きました。


「馬鹿じゃないの、なんで裸になんかならなきゃならないのよ。ちゃんと変わっているでしょ」


ノブコは小指の爪を見せます。


「赤くなっている時は戦闘モードなのよ!」


「じみーー!!!!」


総長と副総長が叫びました。


「うるさーーい!!!!」


エイリとノブコが総長と副総長に襲いかかりました。

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