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0050 潜入

「立ち入り禁止です」


ユウキが悲しそうに言いました。

シベリア村までは、エイリの十田家の高級系列ホテルの送迎用のバスで来ました。

今晩はこの高級系列ホテルで泊まることになるようです。


「これでは、入れませんね」


ノブコが言いました。

奈々とちーちゃん、生徒会長がほっとした顔になりました。


「なにをおっしゃいますの、ちゃんと許可は取って有ります。これが鍵ですわ」


エイリに抜かりはないようです。


「せんせー!! せんせーー!! 付きましたよー!!」


ノブコがバスに残って出てこない吉田先生を呼びに来ました。

酔っ払って寝ていたようですね。


「えー、もう、晩ご飯ーー! じゃあ少しお風呂へいってきまーーす」


吉田先生は酔っ払ってボケています。

さっきご飯を食べたばかりです。


「くすくす」


そんな先生を見て皆が笑っています。

リラックス出来たみたいです。

エイリが鍵を開けて、いよいよ廃墟のテーマパーク、シベリア村です。


「ぎゃあぁぁぁーーー!!!!!! ななな、なんですかーーここはーー!!!!」


先生がシベリア村の宿泊施設を見上げて驚きの声を上げました。

屋根が野菜のカブを逆さにしたようなお城のような建物です。

立派な建物ですが、入り口が崩れていて、まるでお化け屋敷の雰囲気です。


「ここは、シベリア村ですわ」


エイリが笑いをこらえて言いました。


「でええぇぇぇぇーーーーなんで、に○潟県最恐心霊スポットに来ているのですかーー!!!! あー、酔いがぜんぶさめた!」


先生は何も聞かされずに連れ出されたようですね。


「では、続きは今晩、深夜二時ということで」


ユウキは夜、出直す気のようですね。


「おばかーー!!」


マモリ様とデェス以外の全員が怒っています。


「おばかですの、なんでわざわざ夜来る必要がありますの」


エイリが眉をつり上げてユウキに言いました。


「そそそ、そうです。わたし達は心霊動画を撮りに来たのではありません。目的を見失わないでください」


まったく、ノブコの言うとおりです。

夜なら私も同行はしません。

幽霊は恐いです。いるかどうかは知りませんけど。


「ふーむ、カルッパーン族だけの魔力じゃ無いなあ。デェスどう思う」


「そうデェスね。強い魔力を感じるデェス。カルッパーン族以外のなにものかがいマース」


マモリ様とデェスが誰にも聞こえないように会話をしました。

私は、お城のような建物を見つめてみました。

見えました。

いつもの様に、空気の揺らぎのような物が。

でも、異世界人のアジトから見えた揺らぎよりも、はるかに小さい揺らぎです。

それでも、マモリ様が警戒するほどの魔力のようですね。


「まったく、迷惑なはなしだ。そんなどす黒い恐ろしい魔力を出しながら近づいてくるんじゃねえだ」


崩れた入り口の中の暗闇から声がします。

昼間でもなお暗い、漆黒の闇の中に鋭い金色の眼光が見えてきました。

むこうもマモリ様の魔力を感じて警戒していたようです。

そして、出て来てくれたようです。

探す手間がはぶけました。


「僕の魔力は、どす黒くなっているのですか。最近冥界魔法を使いすぎているせいでしょうか」


「でしょうかじゃねえだ。おめーのは、冥界魔法じゃなくて、暗黒魔法だろう」


「なるほど、冥界魔法は世界二大魔法の暗黒魔法に属するのかも知れませんね」


「ぎゃあああぁぁぁぁーーーーーー!!!!」


マモリ様とデェスを除いた全員が悲鳴を上げました。

そして、尻もちをつきました。

廃墟のお城の崩れた入り口の外に声の主が姿を現したのです。


「何が『軽音部の合宿に同行して欲しい』ですかー!! これじゃあオカルト研究部の合宿じゃないですかーー!!」


先生は、何も聞かされていない訳ではなかったようですね。

軽音部の合宿と聞かされていたようです。

きっとノブコの策略ですね。

お気の毒です。

入り口から姿を見せたその姿は、ヘドロをかぶったようなオドロオドロしい……カルッパーン族の姿です。

見た事が無いのは生徒会長だけのはずですが、マモリ様とデェス以外の皆がしゃがんで怖がっています。


駄目ですよ! 先生とユウキ以外は短いスカートをはいて来ています。

おかげでスカートの中が丸見えです。

白や水色やピンクや、あらあら、大人な生徒会長は黒ですか。


「私が行くデェス」


「いいえ、ここは僕の出番でしょう」


マモリ様は、一人前に進み出ました。


「おめーは、なめているだか?」


「ふふふ、なめていないから僕が出て来たのですけど」


「おらは誇り高き戦闘民族カルッパーン族の戦士だぞ!!」


「知っていますよ。格闘においてはオーガの一族に並ぶ最強種族ですよね」


「それだけじゃねーだ!! オラの強さは、魔王直属の配下七剣に次ぐ実力と言われていただ。あの、七剣の次だぞ!!」


「そうですか。あの七剣ですか」


マモリ様は淡々と表情を変えずに会話をします。

魔王の直属の配下七剣とはとても偉い人のように感じますが、マモリ様のあの言い方は知り合いのようです。

お友達かも知れません、さすがですね。


「そう言えばおめー、なんでカルッパーン族や、七剣を知っているだ??」


「僕は、向こうの世界の人間です」


「ぎゃあああぁぁぁぁーーーーーーはっはっはっ!!!! 人間! 人間だとー、ふざけるな!! 最弱種族じゃ無いか!! 偉そうにするなーー!!」


「偉そうにはしていないと思います」


「『偉そうにはしていないと思います』その言い方が偉そうでむかつくだーー!! もういいだ!! ぶっ殺してやるだ!! その後は食ってやるだーー!!!! 女はまずいから逃がしてやろうと思ったのだがオエオエと、えずきながら全員食ってやるだーー!!」


そう言えばデェス達も同じような事を言っていましたね。

脂身が多いから、まずいって。

えずいちゃうみたいです。かわいいですね。


「ちょっと待ってください」


「そら来た、命乞いならもう遅いだ」


「いいえ、そうではありません。隠れている弱虫の方も出て来て一緒に戦ってください。個別では面倒くさいです」


「ぐああぁぁぁーーーーーっっっ!!!!!!」


いけません、はげた頭の天辺から湯気が出ています。

激高しているみたいです。大丈夫でしょうか?

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