数日の後、マモリ様はガンネスファミリーの巨大倉庫にリリイと連れだって訪れました。
「こ、これは、マモリ様」
迎えてくれたのは、ボサボサの赤い髪の大男アスランでした。
「ガンネスはいますか?」
「ボスは最近手に入れた、東京の大きなビルに転居しました」
「そうですか」
「そちらに行かれますか? 案内しますよ」
「いいえ。ガンネスに会うのは目的ではありません。僕の用事があるのは倉庫なので、ガンネスには僕が来たことをアスランから伝えてくれたらいいです」
「へい! あ、あのーー」
アスランは視線をリリイに向けて、紹介して欲しそうにしています。
「おお、マモリ様!!!!」
遅れて、金髪の大男カブランと銀髪のクートが駆けつけて言いました。
若い衆が二人にマモリ様が来たことを伝えたのでしょう、あわてて来たみたいです。
カブランとクートは肩で息をしながら、マモリ様を見つけると、うれしそうにしています。
「ああ、丁度よかった。紹介します。この方はリリイさんです。とても大切な人です。失礼は許しません」
マモリ様はいつになく厳しい口調で言いました。
ちゃんと言っておかないと、ここの人達は失礼しまくりそうですもんね。
「私はリリイですぅ。年齢は永遠の二十八歳ですぅ。好きな食べ物はバニラアイスの溶けた所と、大きな丼に新潟県産コシヒカリのご飯をいれて、その上に八兵衛黄金焼きそばを乗っけてマヨネーズをたっぷりかけた、八兵衛黄金焼きそば丼ですぅ。よろしくお願いしますぅ」
「八兵衛黄金焼きそば丼? なんですかそれは?」
アスランが想像も出来ない様子で言いました。
「うふふ、新潟県の名物の焼きそばですよ。それより後ろの方は誰ですか?」
「おお、この方は渡世人のシマズヒサシさんです」
三人のガンネスファミリー三狂獣の後ろに、渋い刃物のような表情をしたおじさんがいます。
「手前、生国は薩摩、桜島で有名な鹿児島市出身、親分無し、子分無しの半端者にござんす。姓は島津、名は久、家業駆け出しの未熟者にござんす。以後万事万端御見知り置きくださいますよう、お頼み申します」
ヒサシは、手を前にだして頭を下げて言いました。
私はこれを知っています。
仁義と言う奴です。
「ヒサシさんですか。僕は姫神守護です。ここでは皆にマモリと呼んでもらっています。僕の方こそ未熟者です。知らないことが多いので色々教えて下さい」
「へい、ありがとうござんす」
ヒサシは鋭い目でマモリ様を見ました。
既にマモリ様については、ある程度聞かされているみたいですね。
でも、自分で評価をするために観察をしているみたいです。
おめがねにかなうといいですね。
「ところで、マモリ様。今日はどのような御用で?」
アスランが聞きます。
「ああっ、ここに集めた、水と保存食をしまって置こうと思って来ました」
「し、しまっておくーー???」
三狂獣がそろって声を出しました。
「おい、金玉の神様がまた変なことを言い出したぞ」
「うむ、チンコの神様はいつも俺達の想像が出来ないことを言う」
「そうだな、チンポの神様はいつも訳がわからねえ」
三狂獣がヒソヒソ話し出しました。
「もぉーー!! なんでもいいから、集めたところへ案内して下さーい!!」
マモリ様が口をとがらせて言いました。
もはや、可愛らしい女の子にしか見えません。
「案内して下さいも何も、ここにある荷物は全部そのためのものです」
巨大な倉庫の中には所狭しと段ボールの箱が置かれています。
これが全部、保存食と飲料水と言う事のようです。
「リリイさん、全部収納出来そうですか?」
「うふふ、この程度なら余裕です。この二千倍位の量なら収納出来ますよ」
「ええっーーー!!??」
マモリ様が驚きの声を出しました。
「ひいぃぃーー!! す、すみませーーん!! けけけ、謙遜しましたー。本当は五千倍位でーすぅ」
「……!!??」
マモリ様は驚いた顔でリリイの顔を見つめます。
マモリ様が驚くほど、すごいことのようです。
「リリイさん。僕は怒っている訳ではありません。すごすぎて驚いたのです。では、ここの荷物を収納して下さい」
「わかりましたぁー」
リリイは両手を天に向って真っ直ぐあげると、長い銀色の髪が風も無いのに広がって舞い上がりユラユラ揺れます。
後れ毛が光を反射してキラキラ紫色に輝きます。
そして、体が少し宙に浮かびました。
大きな胸が、風も無いのに激しく揺れます。
両手をそのまま大地に水平になるように弧を描きながらおろしました。
パンッという音と共に両手を大きく揺れる胸の前で合わせました。
「おおおぉぉぉっっ!!!!」
様子を見ていた全員から思わず声が漏れました。
まわりをみると、既にここにいるガンネスファミリーの手の空いている全員が、リリイのまわりに集っていたのです。
パンッという音が聞こえた瞬間、倉庫の中の段ボールの箱が全て消えてしまったのです。
「すげーーっ!!!!」
集っている全員から感嘆の声がでました。
「アスラン、さっきの僕とリリイさんの会話は聞いていたのでしょ。今後は米も集めて下さい。精米してあっても大丈夫です。リリイさんの収納なら腐ることも虫が発生する事もありません」
「わ、わかりました。全力で集めます。米の価格が値上がりしそうですね。ふふふっ」
「マモリ様が、リリイさんが大切な人と言った意味がわかりました。こりゃあすげーー!!」
クートが、からっぽの倉庫をぐるっと見回していいました。
「あ、あのーー」
カブランが恐れ入りながらマモリ様に声を掛けました。
「はい、なんですか?」
「チンポの神様、いいえ、マモリ様。マモリ様はどの位、収納できるのですか?」
「あーーっ、僕の収納は既に無限大になっています。どれだけでも収納出来ます」
「ええーーっ!! む、無限大!!」
全員が驚いています。
もっとも驚いているのはリリイですね。
それが、どれだけのことか一番理解出来るはずですからね。
「でも、僕は訳あってここの非常用の食糧や水は収納しません。リリイさんここに集めた食糧と水はお願いします」
何かマモリ様には考えがあるようですね。