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0054 友情出演

「あなたは、こんな所で何をしているのですか?」


マモリ様が言いながら、銀髪の女性に無造作に近づきます。

女性は、マモリ様を恐れているのか数歩後ろに下がりました。

その時窓からの光のかげんで、女性の影がさっきの天狗の影と同じになりました。

鼻だと思っていたのは、女性の長い耳だったようですね。


「わた、私は、ここに迷い込んで来る人が、カッパ達に食べられると可哀想なので脅かして追っ払って、守ろうとしていましたぁー」


「その言い方だと、余りうまく行かなかったのですね」


「はい。姿を消して脅かしても、ライトを小さい黒い箱で覆って光を消しても、おおきな音を出しても、黒い箱になっても、最後は地下の水の中に入ってしまいましたぁー」


女性は、うつむくとさみしそうな表情になりました。


「ここに来ていた人達は、地下の水に入るのが目的でしたから仕方がないです」


ユウキが慰めるように言いました。

この女性は人知れず、人間を守っていてくれた優しい人だとわかって、ユウキは安心したみたいですね。


「あなたは、大きな魔力を持っているようですが、姿を消すのと黒いボックスを出すのと、弓の威力を高める事以外ではどんな魔法が使えるのですか?」


マモリ様は、もう女性の使える魔法を見抜いているみたいですね。


「私は落ちこぼれで、魔力は多いのですが魔法はうまく使えません。あと使えるのは、収納魔法が使えるくらいですぅ」


「なっ、なんだって!!」


「ひいぃ!! す、すみませーん、すみませーん。もっと頑張って色々使えるようにいたしますぅ。だから殺さないでくださーーい」


女性は涙ぐんで怯えています。


「殺しませんよ。いったい何をそんなに怯えているのですか?」


「えーーっ、当たり前ですよぉ。カルッパーン族五人を子供扱いするような人を恐れない人はいませんよぉ」


「えーーっ。僕はあなたの魔力の方がカルッパーン族より、恐ろしいと思って警戒していましたよ。それに僕は、怒っているわけではありません、むしろ喜んでいますよ。……そうですか……収納ですか。いいですねー。素晴らしいです!! あの、ここから人食いカッパはいなくなります。よろしければ一緒に来て頂けませんか?」


「えっ!?」


「あなたの力が必要なのです。是非一緒に来て下さい」


マモリ様が女性の手を取り、自分の胸の前に置きました。めずらしく熱意を込めて頼んでいます。


「えへへぇーっ、本当ですかぁー?」


女性はうれしそうになりました。


「はい、お願いします」

「お願いします」


マモリ様が言うと、空気を読んでユウキも頭を下げました。


「うふふ、私はエルフのリリイですぅ。あなた達のように強い方達と一緒なら安心して暮らせそうですぅ。こちらこそよろしくお願いしますぅ」


リリイはあなた達と言いました。

ユウキも強い人に数えられているようですね。

たぶんこれなら、エイリとノブコも強い人に入っているかもしれませんね。

この部屋の窓からは、外にいる皆の姿がよく見えます。

ここの赤いイスに座って姿を消して、カッパ達と戦っているところを見ていたのでしょうね。


「リリイさん、姿を消せるのなら、耳だけを消すことは出来ますか?」


「ああ、これですかぁー? もちろんお安いごようですぅ」


リリイの耳は見えなくなり、普通の銀髪の美人のお姉さんになりました。


「じゃあ、行きましょうか」


マモリ様が言うと、ユウキとリリイがうなずきました。

三階のお姫様の部屋を出るとき、リリイはもう一度部屋の中を振り返って見ました。

そこに残った赤いイスが、とてもさみしそうにたたずんでいます。

きっと、リリイは長いことここに住んでいたのでしょうね。


「みんなーー!!」


ユウキは外に出ると、待っていてくれる仲間に元気に手を振りました。


「あの、私はリリイですぅ。年齢は永遠の二十八歳ですぅ。好きな食べ物はバニラアイスの溶けた所と、大きな丼に新潟県産コシヒカリのご飯をいれて、その上に八兵衛黄金焼きそばを乗っけてマヨネーズをたっぷりかけた、八兵衛黄金焼きそば丼ですぅ。得意なのは姿を消すことと弓ですぅ。今日から仲間になりますぅ。よろしくお願いしますぅ」


そう言うと大きく体を倒します。

大きな胸が、こぼれそうになります。

そして、もとに戻ると、ブルンブルンとゆれます。

でも、そんな物に関心がある人はここには一人もいません。

何の反応も無いのがわかると、リリイはさみしそうに笑顔になりました。


リリイの自己紹介が終わると、全員が自己紹介をしました。

この後、マモリ様御一行はシベリア村の前で待っているバスに乗り、十田家が誇る最高級リゾートホテルのペントハウスに移動してくつろいでから、温泉に入り、散歩をしてリゾート気分を満喫しました。


「さあ、皆さんここが、夕食のバイキング会場です。何でも食べ放題です。心行くまでお食事を楽しんで下さーーい」


夕食の時間になると、エイリは全員をホテルの巨大なバイキング会場に案内しました。

色々な料理が色とりどり並んでいます。


「見てくださーい。屋台ですぅ。八兵衛黄金焼きそばの屋台ですぅ」


リリイが見つけて喜んでいます。

バイキング会場には、お寿司の屋台があり、ステーキの屋台があり、に○潟県名物元祖八兵衛黄金焼きそばと書いた屋台があります。


「お作りしましょうか? この焼きそばは俺が元祖なんですよ」


太ったおじさんが笑顔でリリイに聞きました。


「ちょっと、待って下さい。丼にご飯が欲しいですぅ。おいしい新潟県産のコシヒカリのごはんですぅ」


「ほう! あずさー、大きめの丼に新潟県産のコシヒカリの美味しいご飯を半分よそってもらって来てくれー」


リリイが丼にご飯を欲しいと言ったら、屋台のおじさんが「ほう」といって目を細めました。

きっと通だと思ったのでしょうね。


「おう! とうさん。わっかりやしたーー!!」


ユウキにも負けないくらいの美少女が返事をして駆け出そうとしました。

娘さんでしょうか? 全然似ていません。

太ったおじさんは、まるで豚みたいな顔をしています。


「ま、まって下さい。僕も欲しいです」


リリイの横でマモリ様が言いました。


「私もーー!!!!!!」

「おらもーー!!!!!!」

「わたしもーー!!」

「おらも、ほしいデェース!」


エイリを除く全員が言いました。


「はーー、あなた達は、これだけ色々あるのにB級グルメですかーー。ノドグロのお刺身だってあるのですよー」


「じゃあ、エイリさんはいらないのですね」


ノブコが意地悪そうな顔で言いました。


「ふーーっ、仲間外れはいやですわ。わたくしもいただきますわ」


「それじゃあ、あずさ一人じゃ無理だな。ヒマリー!! ヒマリもあずさと一緒に行ってもらって来てくれ」


太ったおじさんは、娘さんでしょうかヒマリと言う少女を呼びました。

この子もとっても美少女です。

ほっこりするような、やさしげな美少女です。

焼きそばの屋台には太ったおじさんが残り、目にも止まらない素早い手さばきで焼きそばを焼き始めます。

そこに具材を入れてとき玉子を入れて黄金に仕上げていきます。


「とうさーーん、もらってきたよーー!!」


あずさちゃんとヒマリちゃんがお盆に丼をもらってきました。

太ったおじさんが、笑顔で丼ご飯に黄金焼きそばをのっけます。


「へい!! おまちー!! 八兵衛黄金焼きそば丼一丁上がりー!! ふふっ、これもいるんでしょ?」


おじさんは、マヨネーズを一本リリイに渡しました。


「いただきまーーす!!」


全員が席につくと実食です。


「うまーーーーい!!」


全員がこのあと、お替わりをしてデザートにバニラアイスを食べました。

リリイはバニラアイスをしばらく食べないでおいて、溶け始めてから溶けたところを少しずつ目を細めて食べます。

とても幸せそうですね。


「なんで、これだけ色々な料理があるのに、焼きそば丼とバニラアイスだけなんですかーー!! バイキングの意味を考えてくださーい!! がっかりですわーー!!」


エイリがしょんぼりしています。

でも、今日の八兵衛黄金焼きそばは、すごい人が作ったようにかんじます。

お腹一杯食べたのは正解だと思いますよ。


ステージではさっきの二人の美少女がアンナダメダーマンの主題歌を歌い出しました。

青色と黄色のアイドル衣装で、ピーツインと書いてあります。

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