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0057 脅し

「ヒデキ、いったい何の用だ。てめーは俺がマモリ様と一緒の時ばかり邪魔しやあがる!!」


アスランはライオンの咆哮のような声で言います。

ヒデキと呼ばれたのは、この前の幸魂工業高校の総長と呼ばれていた子供です。

ヒデキと同じ黒い学制服の生徒が、十人ほど倉庫の軒下に並んでいます。その前にブレザーの制服を着た学生が五人、正座をさせられています。

ブレザーの生徒は顔にあざがあり、全員ボロボロです。


「は、はい。こいつらは北川商業の番長と副番、そして幹部の連中なんですがね。幸魂女学園の生徒を襲いやがったんで、ヤキをいれたんですが、全く言うことを聞きません。それで仕方がねえので、連れて来ました」


「ふん、なるほどなあ。不敵な顔をしてやあがる。で、ヒデキ! ガンネスファミリーの名は出したのか?」


「は、はい。出しました」


「ふふふ、じゃあそれは、俺達マフィアのガンネスファミリーをなめていることになるなあ」


「ぺっ!! なにが、マフィアだ!! なにがガンネスッ――」


北川商業の番長が、ツバを吐き、しゃべっている途中で、アスランが拳銃を取り出して番長の頭を吹飛ばしました。

大きな銃声があたりに響き、しばらくエコーが鳴り止みません。

正座をしている番長の頭の上から後頭部に抜けた銃弾は、番長の後頭部を大きく吹飛ばしています。

銃声のエコーが鳴り止むのと同じタイミングで、後頭部を吹飛ばされた番長の体がゆっくり、正座をする副番達の前に倒れました。


バチャッという音と共に、番長の頭の中の物が、正座をする北川商業の副番と幹部の太ももにかかりました。

白い固形物も見えます。


「ひひひひぃぃぃぃぃーーーー!!!! ふゅぎぃぃぃぃーーーーー!!!!」


四人はすごい勢いで悲鳴を上げながら後ずさりします。

正座をしながら、後ろへ移動するとは器用なものです。


「誰が動いていいといったーー!! 勝手にうごくんじゃねえ!!!!」


アスランが再び吼えます。


「ひぃぃぃぃぃーーーーっっ!!!!」


北川商業の副番長と幹部達四人は固まって、人間の言葉を忘れてしまったかのように泣き声しか上げられません。

そして、股間からシャーーッと勢いのいい音が聞こえてきます。


「ちっ! 女の潮吹きは可愛いが男の潮吹きは、くせえだけだな」


「ひひっ、ちげーねえ」


アスランが言うと、カブランが笑いながら言いました。

全員の顔を見ると笑っているのは、アスランとカブランの二人だけです。

幸魂工業の総長と副総長は漏らしていないみたいですが、他の生徒はズボンから液体がポタポタ落ちています。

目の前で、頭を吹飛ばされるのを見るのは初めてなのかも知れませんね。

客人、島津ヒサシはさすがですね。無表情で腕を組んだままです。


「いいか、くそがき! マフィアに立てを突くというのは、こういうことだ。今回は一人で勘弁しておいてやる。今後はヒデキの言うことをよく聞いて、いい子にしておくことだな。わかったかーー!!!!」


アスランはすでに半笑いです。


「ひゃ、ひゃっひぃー!!」


北川商業の四人は「はい」も言えないようです。


「ひできーー!!!!」


「ひゃ、ひゃっひいー!」


総長のヒデキも「はい」が言えないみたいです。


「きっちり、ガキ共をしつけておけ。何かあったら、次はてめーにも責任を取らせるからな」


「ひゃ、ひゃ、はい!!」


「てめーらは、もういい、ヒデキとケンイチを残して、とっとと帰れ!!!!」


アスランが再び吼えます。


「ひゃいいぃぃぃぃーーーーー!!!!」


ズボンが濡れている連中は、大急ぎで脇目も振らずに逃げ出しました。

総長と副総長が残っていますので、ヒデキが総長でケンイチが副総長ということなのでしょうね。


「やれやれ、騒がしい奴はいなくなったか。カブラン! マモリ様を呼んで来てくれ」


「わかった」


カブランは笑いを押し殺しながら、食堂へマモリ様を呼びに行くようです。


「ふふふ。ヒデキ、ケンイチ、そしてお客人、ここから先は奇跡をお見せする。俺達ガンネスファミリーが、何故マモリ様を神様とあがめ、お慕いしているのかがわかるはずだ。そして、その後はマモリ様がガンネスファミリーでは、ボスより偉いお方だと知ってもらい、失礼の無いようにしていただきたい」


アスランは恐い顔を余計に恐くして言いました。

いそがしいなあ、私はカブランより先に食堂に戻ります。






「ねえ、クート。シマズヒサシって人はどんな人なの?」


「あーっ、あの御仁ですか。あの人はとんでもねえ人です。とある三十人くらいの組に単身乗り込んで、十五人ほどぶち殺して組長までぶっ殺しちまったんです。それで全国のジャパニーズマフィアから指名手配がかかっているという御仁です」


「なんでそんなことを?」


「なんでも、一宿一飯の世話になった組の組長が、だまし討ちにあって、その敵討ちだそうです」


「なるほどね。そんな人をかこって、ガンネスは火の粉が飛んできたら、こんどはジャパニーズマフィアと戦争をするということですか?」


「さすがですね。ガンネスファミリーは、既に正規構成員は三千人を越えるまでに膨れ上がっています。下部組織や配下の半グレまで含めれば六千人を越えています。いまなら二つ三つのマフィアと事を構えてもどうという事はありません。もちろんマモリ様のチンコ玉と金玉ありきですがね」


「マモリ様ーー!! たたた、たいへんです!!!!」


カブランが食堂に飛び込んできました。


「なななななな、なな、なんですってーー!!!! たたた、たいへんだってーーーー!!!!! そ、それは、たたた、たいへんじゃないですかーーー!!!! こ、こうしてはいられませーーん!!!! ななな、何をしているのですかーー!!!! クート!!!! すぐにいきますよーー!!!!」


「くひっ!!」


カブランとクートが口を押さえていますが、笑い声が漏れました。

まったく、悪い大人です。

相変わらずマモリ様は「たいへん」という言葉に弱いようです。

たかが、高校生が頭を打ち抜かれて、パカーッと後頭部が割れて脳みそをぶちまけているだけです。


――ああっ、けっこうたいへんな状況です。

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