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0080 夏休み

「すごくうるさくて集中出来ないわ」


翌朝、ユウキと神様は安土山の神社で、宿題を始めましたが工事の音がうるさくて集中出来ないようです。

安土のお山の周辺では、何社ものローカル建設会社が工事を始めました。

集落に続く道は、限界集落のためか手つかずで長い間、放置されています。

いたる所に大穴が開き、でこぼこです。その道の拡幅、舗装工事をてはじめに、会場作り駐車場作り、なにやら建物まで作っています。

会場は、川にかかった橋の向こうの隣の集落に決まり、全部つぶして平らにならしています。

大がかりな工事がはじまりました。


「そうだね。おばあさん達に迷惑をかけていないかなあ」


「ちょっと聞いてくる」


ユウキは、おばあさんのところへ走って行きました。


「ガンネス、勝手にこんなに派手に工事をしちゃっていいのかなあ」


「ふふふ、わしらは、外国人でやす。色々言われても『知らなかった』で、不起訴でやす。それにこんな山奥に行政は関心ありません。心配はいりやせん」


ガンネスは、安土のお山に礼拝に来ています。

神様の住みかということで、心からありがたがっています。


「では、わしは打ち合わせがありやす。下の集会所におりやす。用があれば声をかけてくだせい」


ガンネスは、三狂獣とヒサシを連れて山を下りていきました。


「では。おら達も手伝えることがあるかもしれないダニ。集会所へ行って来るダニ」


ダニー達、姫神の一族も安土のお山を下りていきました。

下の集会所では、姫神の一族とガンネス達が密談しています。

祭りの跡地を、地球防衛軍の大本営にするという密談です。

万博の跡地がカジノになる予定なのと同じで、お祭りの会場というのは表向き、本当はここにそんな物を作ろうとしていたのですね。

ガンネスは、ずっと真剣に考えていたようです。




「ただいま!」


「どうだったユウキ?」


「ええ、うふふ、大丈夫だって。老人ばかりだから、『耳が遠いから何も聞こえていないじゃろう』って言われました」


「ええっ!! さすがに聞こえるのじゃないかなあ」


「おばあさんが安土のお山でお祭りをするから、その準備をすると伝えてくれたそうです。みんな心から喜んでくれたそうですよ」


「そうですか。なら安心ですね」


「はい。でも、こううるさいと、私はつらいです」


「じゃあ、場所をかえようか? 部室なんかどうかな」


「ええっ!? そんなことが出来るのですか?」


「僕の紋章は目印です。紋章のあるところへ瞬間移動が出来ます。部室にはこっそり紋章をつけました。紋章からは、事故が起きないように、付近の様子が見えるのですよ。あっ、部室でチーちゃんとナナちゃんと吉田先生が、アイスを食べています」


「なな、な、なんですと。ちょうどいいじゃないですかー。行きましょう! 今すぐ行きましょう!!」


二人は宿題をカバンに詰めると、神様の移動魔法で幸魂女学園の部室に瞬間移動しました。


「きゃっ!!」


突然現れた、マモリ様とユウキに、先生とチーちゃんとナナが、かわいい悲鳴をあげました。


「うふふ、ここなら、静かに宿題が出来そうです」


「マモリ様、ユウキちゃん、どうしてここに?」


先生がいつの間に用意したのか大きな冷蔵庫に歩いて行き……確かこんな大きな冷蔵庫はなかったはずですが……アイスを二つ持って来て質問しました。


「はい、八月十五日に村で盆踊り大会をします。その工事の音がうるさいので避難してきました。お邪魔はいたしません。静かにここで宿題をするだけです。場所を貸してもらってもいいですか?」


「それは、良いのですけど、あの村、住民は五人の老人とユウキちゃんだけでしょ。そんなさびれた村の盆踊りでうるさいほどの工事って、いったい何をやっているのですか?」


さすがは社会の吉田先生ですね。村の事を良く知っています。


「盛大なお祭りになりそうです。そうだ! お姉様もチーちゃんもナナ先輩も来ませんか?」


ユウキは吉田先生を、お姉様と呼んでいます。

すっかり、お休み気分ですね。


「いくー!!」


チーちゃんとナナは即答です。


「お姉様は?」


「えーー、五人の老人しかいない村の盆踊りって、私はいきたくないなーー! 絶対つまらないもの」


「先生、私達を連れて行って下さい」


チーちゃんとナナが先生を拝んでいます。


「はーーっ、仕方が無いなーー」


どうやら三人の参加も決まったようですね。




八月一日、ユウキはソワソワが止まりません。

安土のお山は相変わらず騒がしいですが、今日は部室に行かないでお山で勉強会です。

ユウキは何度も鳥居をくぐって、安土のお山の下の空き地をのぞき見ています。


「来た!! 来たぁーー!!!!」


ユウキは叫びながら神様をほったらかしで、神社の階段を飛ぶように降りていきます。

何が来たというのでしょうか?


「マモリ様、お久しぶりですわ」

「マモリ様、お久しぶりです」


階段をのぼって来たのはエイリとノブコです。


「ふひぃーー!!!!」


ユウキのどこかから空気が漏れているような声をだしました。

顔から、いいえ全身からうれしさがあふれ出しています。

ぴょんぴょん飛び跳ねています。


「うふふっ」


これほどの美少女にこんなに喜ばれて、二人ともとてもうれしそうです。

そういえば、ユウキの友達がここへ遊びに来るのは初めてではないでしょうか。


「神様、いつまで宿題をやっているのですか。せっかく二人が遊びに来てくれたのですよ。今日はもうお終いです」


「う、うん。わかったよー」


とんだとばっちりですね。

神様は素直にユウキのカバンに宿題をかたづけました。


「ねえ、ユウキさん、まずは神社にお参りをしたいですわ」


エイリとノブコはおやしろの前で、手を合せてくれました。

せっかくなので、私はおやしろの中で正座をして二人を交互に見つめました。

私の姿が見える神様とユウキがその様子を、目を細めて見ています。


「さあ、家へ案内します」


お参りが終わったエイリとノブコを待ちきれないとばかりに、ユウキが二人の手を握ってグイグイ引っ張ります。


「僕は、クートのホットミルクが飲みたいので、集会所へ行きます」


神様は、遠慮したみたいですね。


翌日からは四人で、勉強をしたり、少し上流まで遠征をして、川で水遊びをしたり、カブトムシを捕まえたりして楽しく遊びました。

そうそう、三人はかわいい水着で水遊びをしていましたよ。

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