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0088 挑発

僕達は、国会議事堂の東側の茂みの影に移動した。

移動してみると、回りのビルからはまだ人の気配がする。

でも、少しだけ人に動きがあります。

信作じいさんの呼びかけが功を奏して避難する人達なのかもしれません。


国会議事堂の前の、アッガーノ王国軍は整列し司令官の命令を待っているようです。

司令官のまわりを報道の腕章をした、動画配信者とテレビ局のレポーターが囲んでいます。

テレビ局は映像をテレビには流していないけれど、撮影はしているようです。


僕達は、ゆっくり茂みから出て、整列するアッガーノ王国軍の前に進んで行きました。

同行しているのは、ユウキとエイリとノブコ、デェスとミミイさんとコング、そしてマーシーさんです。


ユウキとエイリとノブコはキュートルスリーのヒーローコスチュームに変身して、姿を隠しています。

そして、僕もキュートルスリーのピンク色のコスチュームに変身しています。

なぜか、僕だけミニスカートです。

もちろん変身は、ミミイさんの魔法です。

コングは、ミミイさんとマーシーさんの護衛で来ています。


デェスは、黒い悪の女幹部の様なハイレグで胸が半分出ているコスチューム姿です。

顔出ししていますが、デェスはこれが変身している姿なので問題はありません。

風もないのにポユンポユンと胸が揺れています。


「止まれーー!! なにものだーー!!」


アッガーノ王国軍の一番外側を守る、重装歩兵隊の隊長が僕達を見つけて叫びました。


「ふっふっふっ!!」


ユウキとエイリとノブコが笑いました。


そう、これがノブコの策です。

アッガーノ王国軍の侵攻を遅らせるため、一騎打ちで旅団長と司令官に重傷を負わせようというのです。

その、一部始終をマーシーさんが実況し配信する予定です。


「全国の、マーシーの幻覚チャンネルをご覧の皆さん、注目して下さい。あれが、あれこそが地球防衛義勇軍の美少女戦士キュートルプリンセスデェス。地球防衛義勇軍長官の旧仲信作長官の命により、アッガーノ王国軍に戦いを挑みます」


説明しないといけないですね。

キュートルプリンセスデェスとは。


旧仲信子、フルナカノブコ。

十田愛莉、トダエイリ。

留富勇希、ルフユウキ。

姫神守護、ヒメガミマモリ。

姫神デェス、ヒメガミデェス。


五人の頭文字を並べると旧十留姫姫。

最後の姫を名前のデェスにしたノブコによって、名付けられたユニット名です。


「キュートルブルー!!」


ノリノリでユウキが名乗り、決めポーズをしました。


「キュートルイエロー!!」


続いてエイリが決めポーズです。


「キュートルグリーン!!」


続いてノブコが決めポーズをしました。


「えー、これって僕もやらないと駄目なのー! だいたいなんで僕がピンクなんですかー!!」


「ちっ!!」


僕が不平を言ったら、三人が凄い勢いで舌打ちをして僕を見ました。

その顔をおおう、マスクの中の表情が想像出来るだけに恐い。


「キュッ、キュートルピンク!!」


何故かユウキ達三人はズボンで男の格好、僕はミニスカートなので女の子っぽく決めポーズです。すごく、はずかしい。


「デェース! デェーース!!」


デェスは女幹部のように決めポーズです。


「おおーーとっ!! これは斬新だぁーー!! 五人全員が女性のユニット戦隊だー!! これは八手三朗もビックリだーー!!」


ちがいますよー。

女性四人に、男が一人です。

しかも、男がミニスカートのピンクです。

BGMを、コングさんがスピーカーから流してくれています。

戦えキュートルスリーのテーマですね。

静かならもっと恥ずかしかったから、ナイスアシストです。


「4人あわせてキュートルーー!! プリンセス!!」

「4人そろってキュートルーー!! プリンセス!!」

「私達、キュートルーー!! プリンセス!!」

「僕達四人でキュートルーー!! プリンセス!!」


「デェース!!!!」


「おーーいっ!! なんで名乗りの決めが相変わらずバラバラなんだよーー!! ちゃんと練習しとけよなー!!」


マーシーさんがあきれながら、少し切れ気味に言いました。


「くそどもがーー!! 何を考えている。なめているのかーー!! 弓隊!! あのバカ共を射殺せー!!!!」


ふふふ、ノブコの策略通り司令官が激高しました。

そうです。

このように、僕達が恥ずかしい思いをすれば、司令官が怒るのでそこで、とどめのあおりを入れて一騎打ちに持ち込むというのが策士ノブコの策略です。

ここまでは順調です。


そういえば。

僕は「女の格好は必要ないのじゃないかなあ」と言ったら、ノブコは「男が女の子の格好をした方が余計に怒らせることが出来ます」と言っていましたが、そもそも男どころか誰かもわからない気がします。

なんだか、だまされたような気がします。

でも、順調に怒らせる事ができたのならよしとしますか。


「おおーーとっ!! いけません!! 10式戦車の装甲をも貫くアッガーノ王国軍の弓隊の攻撃です!! こ、これはキュートルプリンセスデェスの大ピンチです!!!! どーなってしまうのかぁーーーーっ!!!!」


アッガーノ王国軍の弓隊が、僕達に向けて弓を放ちました。


さすがは、デェスですね。

飛んできた矢をすべて、たたき落とします。

僕は、いつもの魔法で体の前で矢を止めて、そのまま道路に落としました。


「きゃーーっ!!!! いあったたたっ!!!!」


ユウキとエイリとノブコは、矢が体にポコポコ当たっています。

三人の体に当たらなかった矢が後ろに飛んでいきます。

何発かがマーシーさんに当たるコースです。

その矢は、コングがきっちりたたき落としてくれました。


「おおーーとっ!! これはすごい!! キュートルプリンセスには全く効果がないようです!!!!」


「なっ!? なにぃーーっ!!!!」


司令官が驚いています。


「ねえ、ユウキ。戦闘状態になっていれば、矢になんか当たらないと思うのですけど、なんで当たったのですか?」


「あーーっ!!!!」


ユウキとエイリとノブコが口の前に手を当てて声を上げました。


「まさか、忘れたのですか?」


「変身していたので、強くなっていると思っていました」


「たまたま、へなちょこの矢だったから良かったけれど気を付けて下さい」


「はーーい」


三人のいい返事です。


「な、なにぃー!! へなちょこだとぉー!!!!」


司令官の顔が真っ赤になっています。


「かみさまーー!!」


ユウキ達が手招きをします。


「バルキリー!! レボリューション!!」


五人で小指を高く頭上に上げて合わせます。

デェスまでやらされています。

僕とデェスは、いつも戦闘状態だから必要無いのですけどね。

ミミイさんがコスチュームの模様を替えてくれました。

コスチュームの模様に赤い縁取りを入れてくれました。

そして、デェスのコスチュームを白いウエディングドレスのように替えてくれたようです。


「うふふ、団長さんに司令官さん、兵隊さんの後ろに隠れていないで、私達と戦って頂けませんか? それとも恐くて出て来られませんか?」


ユウキがやっすい挑発を入れました。


「おおーーとっ!! これはキュートルプリンセスの、まるで高速道路上での危険なあおり運転のような、あおりが入りましたーーーー!!!!」


「ぐぬぬぬぬぬぅぅぅーーーー!!!!」


司令官の目が血走り、顔が真っ赤になっています。


「ぷっ!!!!」


その顔がおかしくて、僕達は吹き出してしまった。

どこかで、ブツンという音が聞こえた気がしました。


「行くぞーーーーっ!!!! ぶちころしてやれーーーーっ!!」


司令官が言うと、旅団長二人が弓隊と重装歩兵隊の上を飛び越えた。

そして、少しだけ遅れて司令官も大きなジャンプをした。

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