翌朝、僕はお腹が空かないので朝食を食べずに、河川敷から橋の上にのぼった。
対岸の河川敷からは朝食の煙は上がっていない。
直接非常食でも食べているのでしょうか。
僕はキュートルピンクの姿で橋の中央に立って、しばらく河の流れを見ていました。
「団長、もう誰か来ています」
「あれは、キュートルピンクです」
自衛隊の集団が河川敷から上がって来ました。
「なに!? お前達が滅茶苦茶可愛いと言っていたお嬢さんか。どけ!! 俺も一目見て見たい」
「き、危険です。相手はテロリストです!」
「ばか、おめえ。本当のテロリストは、可愛いわけがねえんだよ。見て見ろ! あっちがお嬢さん一人で来ているんだ。俺が恐れてどうするんだよ。どけーー!! 道をあけろーー!!」
「道をあけろーー!!」
「道をあけるんだーー!!」
配下の自衛官が左右に分かれると、道が出来きました。
そこを団長がゆっくり歩いて来ます。
やさぐれた感じのする団長さんです。
なんだか、上の人の言うことを全然聞かなさそうな感じがします。
「だいたい、おめえ、俺はこれでも結構いろんな女優さんを間近で見ているんだ。あの子は名前何だったかなあ。可愛かったなあ。その人達に比べたら、おめえ、素人さんなんか比べもんにならんだろうがよう!」
ぶつくさ言いながら、近づいてきます。
そして、集団の先頭まで来るとさらに進んできます。
近眼なのでしょうか。
でも、顔は驚きの表情になっています。
もう見えているみたいですけど。
「ぐわああぁぁぁぁーーーー!!!! くるしいぃぃーー!!!! 息をするのを忘れたーー!!!! な、なな、なななな、なんじゃこりゃあぁぁああーーーーーー!!!!」
「息をするのを忘れると死んでしまいますよ」
僕は、とびきりの笑顔になりました。
最近はこの位のことを平気で出来るようになりました。
なれとは恐ろしいものですね。
「ぐわああぁぁぁぁーーーー!!!! 息をしていても死ねるーー!!!! なんちゅうかわいさだーー、日本一、いや世界一の美少女じゃねえかーー!!!! 次元が違う。あの女優、名前なんだっけかなあ、美人で有名な、あの女優より何倍、いやいや、何十倍も可愛くてキュートだあぁーーーー!!!!」
「ありがとうございます。でも僕より、キュートルブルーの方が可愛いですよ」
「なななな、なんと奥ゆかしい。しかも、ぼくっ子。情報量が多すぎる。お嬢さん、名前は??」
「は、はい。姫神マモリともうします」
あっ!
思わず答えてしまいました。
「そうですか。名前まで可愛いですな。ところでマモリちゃん。ここは危険だ。そろそろ引き返した方がいい。こわーい顔をしたテロリストが一杯やってくる」
僕は言われて、頬をふくらませて恐い顔を作りました。
「うふふ、僕がそのこわーーい顔をした義勇軍の戦士です。うちのメガネの軍師に一人で戦うように言われました。お手柔らかに御願いいたします」
「ふふふ、そんな可愛い恐い顔は見たことがねえ。だが、戦うとなれば話は別だ。最高責任者、総理大臣に皆殺しにしろと命令された。手加減はできねえ。大丈夫なのか?」
団長ははじめ笑っていましたが、後半は真剣な顔になって言いました。
「やってみないとわかりませんが、たぶん大丈夫です」
僕が言うと、間髪を入れずに集団から声がしました。
「やめておけーー!! キュートルピンクーー!! あんただけは国会議事堂の前で何もしていなかったーー!! パンツを見せていただけだーー!!!!」
「そうだ、そうだーー。スケスケのパンツを見せていただけだーー!!」
「誰か強い奴とかわってもらうんだーー!!」
「あんたがケガをするのを見たくねえーー」
ふぐうっ!!
たっ確かに! 僕は国会議事堂の前で侵略軍と戦ったときは、パンツを見せていただけでしたーー!!
でも、自衛隊もやっぱりマーシーの幻覚チャンネルをしっかりチェックしているみたいです。
「見て見ろ、あれを!! 機関砲まで用意してある。普通の人間なら秒でミンチになるぞ」
河川敷に土嚢が積まれ、中に巨大な銃が用意されています。
「僕の名前はマモリです。守る事なら義勇軍で1番です。遠慮しないで撃ちまくってください」
「ふーむ、ここでマモリちゃんが死んでしまっては、世界の損失なのだが仕方がねえ。こんなことなら新品の弾をちょびっとにしておけば良かったなあ。賞味期限切れ間近の廃棄処分寸前の弾を全部持って来てしまった。おい、お前達、目標はマモリちゃんだ。準備しろ!!」
言いながら団長が集団の中に入っていきます。
「目標、橋の上のキュートルピンクだーー!! 射撃準備!!」
「おーーい、マモリちゃぁーーん、いくぜーー!!」
「はーーい!! いつでも、どぉーーぞおぉぉーーー!!!!」
「ちいぃ! どうにもしまらねえなあ。おーい、お前ら、はじめチョロチョロ、様子を見ながら射撃開始だーー!!」
団長が言うと、一斉に射撃が始まった。
地響きをともなうほどの恐ろしい音を立てながら、射撃が始まりました。
全然チョロチョロじゃないですよ。
なんだかでかいのが飛んできました。
それが防御魔法で作った壁にぶつかり、大きな音と共に大量の煙を上げて爆発します。
僕は煙で何も見えなくなりました。
「おいおい、いきなり全開かよ!! おいおい誰だーー!! 120ミリ迫撃砲なんか打ち込んだのはーー!!!! こりゃあーー駄目だな。惜しい命を無くした。なーむー」
団長が言うと、銃声が一瞬止まりました。
「ふふふ、僕は無事です。全然効きません、本気で攻撃してくださーーい!!」
「な、なんだと!! 嘘だろ!! よしっ!! 構わねえから全弾撃ち尽くせーー!!!!」
再び攻撃がはじまりました。
すごく長い時間に感じました。
永遠に続くと思われた攻撃が段々と、まばらになります。
やがて、止まりました。
ノブコの策略通りになりました。
これで、自衛隊は弾切れです。
補給に戻るでしょう。
「す、すげーーーー!!!!」
「ななな、なんだあれはーー!!」
自衛隊から声がします。
煙が消えると、僕のまわりには弾丸が止まっています。
砲弾は爆発しましたが、弾丸はまるで壁のように空中に浮かんだまま止まっています。
「なるほどなあ、すごい光景を見せてもらった。かくなる上は剣での戦いだ。全員銃剣を装備しろーー!!」
「銃剣装備しろーー!! 急げーー!!」
「無いものはナイフでも何でもいい装備しろーー!!」
「装備が終わったら突撃だ。目標はキュートルピンクだーー!! 全軍突撃ーーーーーー!!!!!!」
「うおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!!!!」
河川敷から自衛隊が銃剣や刃物をもって、土手をのぼってこっちに走ってきます。
全軍が突撃してきました。
「ええええええぇぇーーーーーっ!!!!」
僕は想定外すぎて大きな声が出ました。
ノブコーー!!
どどどどど、どうするのぉーー。