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0102 凱旋

「フンスーー! フンスーー!」


私は、マモリ様にハグをされてうっとり、とろけそうな時間が少しでも長く続くようにと、しがみついています。

すると、すごい鼻息が近づいてきます。

がに股で近づいてくる、ある意味この中で1番ガラの悪い2人組です。

キュートルブルーとキュートルイエローです。

またもや2人に、無造作に引っぺがされました。


「マモリ様。わたくし達も、大勢救助いたしましたわ」


イエローが少し声を荒げて言いました。


「そうですね。でも会長とは全然意味合いが違います。2人は万全の準備をして救助をしようとして来ています。でも会長は救助される側の人でした。それなのに、危険をかえりみず、恐怖に打ち勝って、気力をふりしぼって、誰よりも多くの人を救助してくれたのです。とても感動しました。もし、求婚されたら結婚してしまいそうです」


――な、なな、なんですとーー!!


私は瞬間的に求婚をしようと思い、息を深く吸いました。


――結婚してください!!


そう言おうとしました。


「ふんっがあーー!! ふんごぉーー!!」


ああー!! こいつら、間髪入れずに私の口をふさぎゃあがりました。

なにをするんじゃーー!! こいつらーー!!

いけません、言葉がつい乱れました。

キュートルブルーとキュートルイエローが私の口をふさいだまま、私の耳に顔を近づけて言いました。


「会長! 冗談で、それを言ってはいけません。神様は有言実行の人です。必ず約束を守ろうとしてしまいますので、軽い気持ちでそれを言ってはいけませんよ」


「本当ですわ。危ないところでしたわ」


いいえ、いいえ、軽い気持ちではありません。

本気の本気です。

もはや、同性婚とかどうでもいいのです。

私はマモリ様と……


「さて、アスラン! 健康な人を幸魂市へ案内してください」


ああーーっ、千載一遇のチャンスを逃してしまいました。


「会長はお母さんのところにいてあげてください。僕もすぐに行きます」


マモリ様は、言い終わると恐ろしい顔をした人達に次々指示を出します。

とても、りりしくてかっこいいです。

男でもあそこまでかっこよく立ち回れる人は、そうそういないと思います。

もしマモリ様が男の人なら、ほれない女はいないのじゃ無いでしょうか。


「ほーーっ」


あらあら、まあまあ私の邪魔ばかりしていた、キュートルブルーとキュートルイエローがため息をついてマモリ様に視線を向けて動きが止まっています。

もし、顔が出ていたのなら赤い顔をして、目がウルウルしているでしょうね。

私は言われるまま、久しぶりにお母さんの所に向かいます。

本当は、そんなに時間はたっていないので、久しぶりはおかしいのですけど、私にはとても久しぶりな感じがします。


「お母さん、ケガは痛くありませんか?」


私はお母さんの横に腰掛けました。


「ええ、全く痛くありません。二塁に盗塁出来そうなぐらい調子がいいわ」


でも、お母さんの足はすねの中間から下は無くなったままのようです。

無理をして、笑わそうとしてくれています。

私は少し涙が出そうになっています。


「ひゃははは、その足で二塁へ盗塁とは、どこの大谷だよって突っ込みたい気分だ」


「ああ、カブランさん!」


「ふふふ、俺は引き続きあんたら親子の護衛と、ここにいるケガ人の護衛だ。よろしく頼むぜ。お嬢ちゃん」


「とても、心強いです」


恐い顔をしたカブランさんですが、護衛をしてくれるとなると別です。

とても心強く感じます。

ふふふ、人間とは身勝手なものですね。


「会長、お待たせしました」


しばらくすると、マモリ様がキュートルブルーとキュートルイエローと一緒に、私の所に来て下さいました。


「いいえ。それより、ケガ人が多いようですが、どうするのですか?」


ここは、重傷の人が集められています。お母さんより重症の人も大勢います。

歩けないほどのケガ人です。どうするのでしょうか。


「うふふ、魔法を使います。あまり人に見られないようにとノブコに言われていましたので、健康な人は先に行ってもらいました。全員包帯を取ってください」


「はい」


言われるまま、私はお母さんの包帯を取ります。

家族の付き添いがいる人は良いのですが、いない人はカブランさんとカブランさんの部下が手分けして包帯を外していきます。


「では、いきます」


マモリ様が片手を高く上げて、手のひらを大きく開いて、ケガ人に向けていきます。

私のお母さんのところを向いた時に奇跡は起きました。


「あああああああぁぁぁぁぁ!!」


ここにいる人達から感動の声が漏れ出しました。


「おおお、神様。かみさまーー!!」

「奇跡だーー!! 奇跡だーー!!」


回りから感動の声がします。

マモリ様に手を合せて拝む人までいます。


「うふふ、これはマジックです。イリュージョンです。神様の奇跡ではありません」


「そ、そうか、マジックか」

「すごーーい、どうやったのか種がわからない」

「とんでもない手品じゃ」


まわりから盛大な拍手がおこりました。

うそ、こんなの手品のわけがないじゃない。

だって、お母さんの足がすっかり治っていますもの。


「具合の悪い人はいませんか? いなければ僕達も出発しましょう」


マモリ様は、上げていた手を肩まで下げると幸魂市の方向を指さしました。


「ふふふ、本当に二塁に盗塁ができそうね」


お母さんが私に笑顔で言いました。

私の目から、たまっていた涙が玉になってポタポタと足元に落ちていきました。


「さあ、嬢ちゃん、お母さん、俺達も遅れないように行こうか」


カブランさんが笑顔で声をかけてくださいました。

私達が歩き出す頃には、ここにいる全員が幸魂市にむかって歩き出しました。

後ろを見ると、マモリ様を挟んでキュートルブルーと、キュートルイエローが集団の1番後ろを歩いています。

私は、さっきの仕返しで、がに股で歩いてキュートルブルーとマモリ様の間に割り込みました。


「くひひひっ」


カブランさんが笑いながら、お母さんに何かを耳打ちしました。


「まあ!?」


お母さんが口に手を当てて驚いています。

カブランさんはお母さんにいったい何を言ったのでしょうか。


「なんで、こっちなんですかーー!!」


ユウキさんが言いましたけど、どう考えてもこっちでしょう。

素顔を知っている人なら全員こっちを選択すると思いますよ。

マモリ様と歩いていると時間が過ぎるのがはやいですね。

動画で見た、黒い角のある隊長さんの姿が見えてきました。

近くで見ると、滅茶苦茶大きいです。

見上げる程の大男です。


「マモリ様、お疲れ様にございます」


こんなにすごい人がマモリ様の家臣の様にあいさつをしました。

いったい、マモリ様とはどのようなお方なのかしら?


「やあ、コング!! 見ていました。お疲れ様です。後は僕が引き受けます。全員疲れているでしょう。帰って全員で美味しいご飯を食べてください」


「あ、あの、マモリ様。お一人で、残られるのですか?」


黒い角のある隊長さんが心配そうに聞き返しました。


「いえ、ノブコが手配しているはずです。リリイさんが来ているはずです」


「ふふふふ、マモリ様ーー! リリイはここですぅーー」


どうなっているのでしょうか。

まるで、透明にでもなっていたかのように、リリイさんが突然あらわれました。

いったい、これから2人で何をするのでしょうか?

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