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あの日から(後編)

 ロックスが気がついた時には、クラハはもうすぐ目の前にまで迫っていた。ある程度離れていたはずの彼は、既にこちらを間合いに捉えており。その剣を、大きく振りかぶっていた。


 暖かな陽の光に照らされ、剣の刃が冷たい輝きを放つ。その様が、ロックスにはまるで哀しんでいるような。剣がこちらのことを憐れみ、落涙しているように見えていた。


 無論、それはただの錯覚だ。何ということのない、つまらない馬鹿げた錯覚でしかない。そんなことは、ロックスが一番わかっていた。


 刃がこちらの首を刎ねるまで、あと数秒もかからない。その事実を他人事のように認め、その現実を他人事のように受け止め。瞬間、ロックスは垣間見る。


 こちらに迫るクラハの顔を。感情という感情が消え失せた、彼の無表情を改めて目の当たりにし。その直後、ロックスの脳裏をが激しく、そして一気に駆け抜ける。


 あの光景が────影より深く、夜より広く、闇より昏いかの存在モノの姿が駆け抜け、想起され。




 そして、




 ──ッ!!


 こちらの首が刎ねられる未来は認め、受け止めたロックスであったが。しかし、それだけは。だがそれだけは、彼は認めることができなかった。受け止めることができなかった。


 ロックス=ガンヴィルは、決してを認めたくもなければ、受け止めたくもなかったのだ。故に、それ故に彼は叫んだ。その場から退かずに────






「クラハッ!!」





 ────その名を、叫ぶのだった。瞬間、今にでも叩き込まれんとしていた剣の刃は。ロックスの首筋に触れるか触れないかの瀬戸際で、止まった。


「……そ、んな」


 止めたその剣を、弱々しげに情けなく震わせながら。呆然とした声が漏れる。それを聞きながら、ロックスは再度見やる。


「何、で。どう、して……」


 と、呟くクラハの顔は────愕然としていた。そのことを確認したロックスは────。ああ、良かったと彼は安心したのだ。


 何故ならば、其処にあったから。其処には、クラハの感情が確かにあったのだから。……そう、今のクラハは感情を取り戻していたのだ。たとえそれが驚きや悲しみだとしても、それらは歴とした感情だ。人が持つ、人の感情なのだ。


 ──ああ、そうさ。当然さ、当たり前のことさ。クラハ、お前は人だ……俺が知っているお前は、ちゃんとした人間なんだぜ……。


 そう、クラハは人間である。誰が何と言おうと、彼は一人の人間である。少なくとも、ロックスにとってそれが現実で、事実で、そして覆ることのないたった一つの真実だった。


 もう既にロックスから恐怖は失せていた。慄くことも、怯えることもなく。彼はクラハの顔を見つめる。


「ロックス、さん……?」


 対し、クラハは愕然としすっかり青褪めたその表情のままに。剣と同様に震えてしまう声で、まるで信じられないようにロックスの名を口にする。次いで、彼は咄嗟に剣を下ろし、続け様に弁明の言葉を紡ぐ。


「ち、ちが、違う。違うんです、ロックスさん。これは、これは違う、違う違う違う。これは違うんです、よ。ぼ、僕はここ、殺そうなんて。貴方を殺そうなんて、思って、なんか。なんかない。絶対、絶対違う。これはま、間違い、です。何かの間違い、で。何かの、間違いで、何か、何かの間違い、間違いで……っ」


 ……まるで、などではなく。その様子は壊れた機械そのものだった。焦燥、動揺、恐慌。今のクラハは、それら三つの感情に囚われ覆われ、包まれていて。その顔は、悲嘆と哀切に歪んでいる。


 恐らくきっと、途方もないその罪悪感に。あと一歩、今一歩でこちらのことを手にかけてしまっていたかもしれないという、途轍もない悪辣極まったその罪の意識に。クラハの心は容易く噛み砕かれ、喰い潰されてしまったのだろう。その結果として今、彼の様子にそう表れているのだろう。それがわからない程、ロックスは鈍い男ではない。


 ……しかし、そんなロックスでも迷っていた。彼は、判断することができないでいた。


 罰するべきか、それとも赦すべきなのか。一体どちらがクラハの為で、そして正しい選択になるのか────ロックスはそれを、決められないでいた。


「僕は、僕は……ロックスさんッ!僕はッ!!」


 そうしてロックスが選択を決められないでいる内に、クラハの精神は限界へと達しかけ。その既で、ロックスは。


「…………落ち着け、クラハ。とりあえず、今は落ち着くんだ……クラハ=ウインドア」


 そう、クラハに言葉をかけた。声を荒げることなく、あくまでも平然とした風を装って。……結局のところ、ロックスは決められなかった。その二つの選択肢、そのどちらかを彼は最後まで決められなかったのだ。


 ロックスに諭され、ハッとクラハが目を見開かせる。それから彼は顔を俯かせ、沈黙してしまった。


 ロックスとクラハ。そして、森。それらにようやっと訪れた静寂は数秒続き、その静寂を最初に破ったのは────────




「……ロックスさん」




 ────────クラハであった。


「女性、が。灰色の女性がいたん、です。一人じゃない。二人、三人……全員同じ顔、同じ姿をした無数の灰色の女性たちがいて。そして、僕に……迫った。僕は貴方を殺そうとしたんじゃない。僕は、彼女たちを殺そうと……殺す、為に」


 と、俯かせていた顔を上げ、クラハがそう言う。ロックスはというと、そんな彼の言葉を黙って聞いていた。


「……」


 灰色の女性────それを耳にしたロックスの脳裏に、呼び起こされる。


 つい先程、クラハによって斬殺されていく、あの灰色の女性たちの最期の光景が。その上で、ロックスは。


「……クラハ。お前は、


 と、言葉を返した。瞬間、堪らず固まるクラハへ、ロックスは言葉を続ける。


「最初から今まで、お前は一人だったよクラハ。お前の言う灰色の女性なんて奴は、一人だっていない。……それはただの、お前の幻覚なんだ」


 その言葉はクラハに対するものであり、そしてそれと同時に己への言葉でもあった。ロックス自身、そう思いたかった。


 ……だが、しかし。あれを幻覚、幻影だと。ただの幻など片付けてしまうには。あの灰色の女性らは────あまりにも生々しく、確かにそこにるという、残酷じみた現実味を帯びていた。


 それ故に、今でこそ周囲には緑色の草木しかないが、ふとした拍子に。ロックスは赤色の肉塊を幻視してしまうのではないかと、恐れている。


 けれど、それでも彼はクラハの言葉に同意する訳にはいかなかった。先程は迷い、一体どちらが正しいのか判断を下すことができなかったロックスであるが、そんな彼でもこれだけはわかっている。


 その言葉は否定しなければならなかった。そう、他の誰でもなく、何よりも────クラハの為に。


 たとえ自分でも現と見紛う幻と錯覚していても。たとえ、当人以外が目にした光景であっても。ロックスはアレを決して認めてはならないのだ。


「…………」


 そんなロックスの心情を知ってか知らずか、彼の言葉に固まるクラハであったが。やがて思い出したかのように、震える声で絞り出すように彼は言う。


「ええ。そう、ですね……ロックスさんの言う通り、です。僕は……最初から一人だったんでしょうね」


「……ああ」


 そこでまた二人の会話は途切れ。しかし、今度はロックスが先に口を開いた。


「肩貸してやる。……街に戻ろう、クラハ」


 ロックスの言葉に、クラハは俯いたまま、黙って小さく頷いた。











 肩を貸しながら、クラハと共に今帰るべき場所である街──オールティアを目指して歩くロックス。その傍ら、彼はすぐ隣のクラハに相談することなく。彼は独り、深く考え込んでいた。


 ──さっきの……あれ。


 と、心の中で呟くロックスが思い出しているのは────かの存在モノのこと。


 あの影より深く、夜より広く、闇より昏い存在。巨大という言葉ですら足りぬ、悠久なる果たしなきその大巨躯。この世のありとあらゆる獣を彷彿とさせるその姿。


 頭に二つの巨角を戴き、そしてその巨角からも七つの角を生やし。それぞれが歪に連なったその様は、まるで絶対を示す冠のようで。


 逆立つ十の尾には、その一本一本に漆黒の円環が纏わり。憤怒そのものと言い表しても差し支えのない、世界の全てを焼き尽くさんばかりの大火を噴き荒らす竜の瞳は、矮小なる人間ロックスを睥睨していた。


 それらを思い出し、想起させて。ロックスは呆然と呟く。


 ──あれは……結局のところ、一体何だったんだ……?


 言葉でも表現するにしても、およそ人智人域から何処までも逸した、天地開闢の怪物、空前絶後の化け物としか言いようがなく。そしてそこまで無理矢理に表現したところで、それでも到底届き得ない、足り得ない安っぽさだと言わざるを得ず。


 正直なところロックスとしては────


 あれこそが、かの存在モノこそが。ロックスが垣間見た幻覚だったのかもしれない。ただの幻影、つまらない幻だったのかもしれない。……そう、ロックスは思いたがっていたのだ。


 でないと、。あれが幻などではなく、現であるならば。この現実に実在しているのならば。それはあまりにも……恐ろしいことなのだ。


 恐怖────それは人も獣も全てが持ち合わせる、原初の感情の一つ。始まりの感情の一つ。


 しかし理性なく本能のままに生きる獣でなく、人であれば。恐怖をどうにかすることができる。克服はできずとも、どうにかするその術を、人は皆持っている。


 無論、ロックスとて持っている。彼程の冒険者ランカーとなれば、恐怖の一つや二つ。それを成すのは、冒険者として積み重ねてきた経験によるものだ。


 ……だが、そんなロックスでさえ。恐怖を誤魔化せる彼でさえ。あの時相対した、かの存在モノの前では────どうしようもなかった。どうしようもなく、どうすることもできず。ロックスは内に押し込み留めていた恐怖を、無理矢理に。そして根刮ぎ全てを引き摺り出されてしまった。


 絶望と諦観の下、ロックスは改めて考える。もし、仮にもしどちらかが。


 クラハも見たという、あの灰色の女性たち。そしてロックスだけが垣間見てしまった、かの存在モノ。このどちらかが真に幻なのかと問われたのなら、自分は────────






 ──俺は、






 ────────ロックスはかの存在の方を幻だと思いたがっている。それは紛れもない、彼の心の奥底からの本音である。それは嘘偽りのない、本音なのだ。


 二人の人間が同じものを見た。ならば普通、どちらが幻なのかと訊かれれば、ロックス当人しか目撃していないあれこそが幻だと答えるだろう。無論、彼とてそれはわかっている。わかった上で、しかし彼は答える────灰色の女性たちが幻である、と。


 ならば何故か。何故、ロックスは女性たちが幻だと答えるのか。それは至極単純シンプルな理由。


 圧倒的、決定的、絶対的な────。見るからに非現実的であるというのに、確実とした現実の中に在るとしか思えぬ程の、その存在感を。ロックスはこれでもかと浴びたからだった。


 恐ろしい。恐ろしくて、怖い────そんな恐怖に押し潰されそうになる最中、ロックスはまるで現実逃避するでもかのように、こんなことを考える。


 ──そういや何だって……あの一瞬、あれとクラハが重なって見えたんだかな……。


 そのことを考え






 ──駄目。キミみたいな部外者モブは、駄目だよ──






 ──────────という声が、ロックスの頭の中でシンと響いて。


 ──ッ……!!!?


 肩を貸しているのも忘れて。すぐ隣にクラハがいるのも忘れて、ロックスは堪らず叫びそうになった。全身から冷や汗を滝のように流しながら、彼は自らの本能に従い、咄嗟にその考えを頭の隅に追いやり抹消する。


 それ以上、これ以上それについて思考してはいけないと、彼の生存本能が警鐘を全力で鳴らしていた。


 関係ない。あれとクラハには一切、何の関係だってない────そう自分に必死に言い聞かせながら、苦し紛れに彼は心の中で呟く。


 ──気がつけば、今日でもうか。もう、…………。
















「んじゃ行ってくる。とりあえずいつも通りでいいんだろ、メルネ?」


「ええ。私は家のことをちょっと色々済ませてから行くわ。だからお願いね」


「おう。俺に任せとけ」


 と、元気に言うその声を聞きながら。彼女は────冒険者組合ギルド大翼の不死鳥フェニシオン』の受付嬢、メルネ=クリスタは────────




 ──……これで、良いの?




 ────────という、複雑な思いを心の内に抱いていた。


 最初は良かれと思って起こした行動だった。見ていられず、咄嗟に差し伸べた手だった。


 だがそれは、今になって思えばただの利己エゴだったのかもしれない。見ていられないから、居ても立っても居られないからと。何かともっともらしい理由にかこつけて、浅ましくいやらしい自己満足に浸りたかっただけなのかもしれない。そう思えて、メルネは仕方がなかった。心底、自分が嫌になった。


 事実、最初は勝手に手を差し伸べておいて────






『嫌だ、やだ……置いてくな、捨てんなぁ……クラハ、クラハぁぁぁ……っ!』






 ────いざとなったら、助けられないでいる。本当に助けなければならない時に、自分は助けることができないでいる。


 わかっている。可哀想だからと、安易に一方だけに手を差し伸べても、それが本当の為にはならないということは、メルネとてわかっている。だがそれは、所詮体のいい言い訳でしかない。


 ただ黙って傍観するだけの、そんな都合の良い楽な立場に今いる自分が嫌になる。


 ……しかし、そう思う傍らで。少なからず、メルネはこうとも思っている。


 ──本当に、二人はこれで良いと思っているの……?


 今や小さく華奢になってしまったその背中を見つめながら。メルネは、閉ざした口を再度開かせた。


「ねえ、ラグナ」


「?まだ何かあんのか、メルネ?」


 名を呼ばれ、いざ扉を開け玄関から飛び出そうとしていたラグナが振り返る。少しばかり怪訝そうな表情を浮かべるその顔を目の当たりにして、メルネは────────




「……気をつけてね。いってらっしゃい」




 ────────と、即座に取り繕ったなけなしの笑顔で、誤魔化しの言葉を贈った。


 今になっても本音を隠す自分に、心底嫌気が差す。けれど、それでも表に出せない。何故なら、怖いから。そうするのが、恐ろしいから。


 、と。そう思ってしまうと、本当に怖くて、本当に恐ろしくて。


 だから本音を隠してしまう。既のところで、心の奥底に引っ込めさせてしまう。……そんな臆病な自分が、メルネは本当に嫌いだった。


「お、おう。……急にそんなこと言って、どうしたんだ?」


「ごめんなさいね。何か、急に言いたくなっちゃったの」


「ふーん……変なの。まあ別に俺は構いやしないけど」


 と、胡乱げになりながらも特に疑わず。メルネの言葉を素直に受け取り、ラグナは再び彼女へ背を向け扉を開く。そして玄関から外へと一歩踏み出した────その直後。


「メルネ」


 振り向かず、その小さな背を向けたまま。さっきまでとは打って変わって真剣な声音でメルネの名を呼び、ラグナはこう言った。




「こんなことしか、俺にはできねえんだ」




 ──ッ!


 何故、ラグナはこちらに背を向けてそう言ったのか、その意図をメルネは測りかねたが。しかしこの時だけは、ラグナがそうしてくれたことに彼女は感謝せざるを得なかった。


 何故なら、その言葉を聞いた瞬間────メルネは目を見開かずにはいられずに、ラグナの言葉を受けて大いに動揺してしまっていたのだから。


 しかし、そんなにも動揺しながらも。メルネは咄嗟にラグナのことを呼び止めようと。その小さな背中を止めようと口を開き。


 バタン────それとほぼ同時に、扉が静かに閉められた。


「…………」


 ここから遠去かる足音を聞きながら、メルネは独り玄関で立ち尽くし。数秒が過ぎてようやっと、開かせたその口から彼女は掠れた声を出す。


「どうして……どうして、こんなことになっちゃったの……?」


 という、メルネの独り言は。誰に聞かれることもなく、宙に流れて、そして消えて。そうして彼女は最後に、今度は心の中でこう呟く。


 ──もう、今日で。今日でから…………。



















 そう、あの日から。日常が非日常と変わり果て、そしてその非日常すらも壊れてしまったあの日から、もう。




『そうだ。俺はライザー……一年前、『大翼の不死鳥フェニシオン』から抜けたS冒険者ランカーのライザー=アシュヴァツグフだ』


『絶対の絶対にお前をクラハに謝らせてやるッ!!ライザァァァアアアッッッ!!!!』


『今のアンタにわからせてやる。理解させてやる……その身体と、そして心に。そうすれば、その瞳だってきっと


『……クラハに、謝りやがれ……!』




 あの日から。




『さあ、お楽しみはこれからだぜぇッ!?クラハよぉおッ!!』


『僕は……僕はこんなことの為に強くなった訳じゃないッ!』


『この俺が憎いか?この俺が恨めしいか?クラハァ!』


『ライザァァァアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!』


『クラハァァァアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!』




 嫌悪と哀愁。悔恨と激憤。そして────狂気と狂気。負の感情という負の感情が、様々に絡み合い、複雑に入り組んだそれが。激突し、衝突を繰り返したあの日から。




『クラ、ハ……?』


『どうしてですか、先輩。先輩はどうして、こんな場所に一人で乗り込んだんですか?一体どうしてこんな無茶をしたんですか?』


『お前の、為。俺が一人でここに乗り込んだのは、お前の為だ』


『つまり……と、先輩は言いたいんですか……?』


『はあぁっ!?だから違えって!どうしてそうなっちまうんだ!確かにここに乗り込んだのはクラハの為だけど、それは……!』


『止めてくださいよ。僕をに使うのは』


『こんな俺にでも、クラハの為にできることをしたかった。何でも、どんな些細なことでもいいから、お前の先輩として、お前の為になることをして、やりたかった。それは、本当、だから……!』


『今の先輩が僕の為に、一体何ができるっていうんですか。……僕の知っているラグナ先輩じゃない、今のなんかが』




 一人は大事で大切な存在モノの為に。しかし、一人はそれを否定し拒絶したあの日から。




『助けに来てくれて、あんがと。……じゃあな』


『……はい。さようなら、




 全てが壊れ、全てが終わったあの日から────────もう、一週間が過ぎていた。


 とうにその歯車は歪んでしまった。それでも、回る。運命の物語ストーリー・フェイトの歯車は回り続ける。たとえさらに歪になろうとも、軋んだ音をけたたましく響かせながら。


 知らない。誰も知らない。クラハ=ウインドアも、ラグナ=アルティ=ブレイズも。無論、メルネ=クリスタもロックス=ガンヴィルも────そして、力を呑んだかつてのライザー=アシュヴァツグフですらも。誰も彼もが、知る由はない。


 その先に待つ末路を。その果てに在る結末を。この物語が辿る、運命を。


 唯一それを、その全てを知る存在モノは──────────今はただ、嘲笑っている。

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