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朱月の王と小さな靴の踊る町
朱月の王と小さな靴の踊る町
KaoLi
現代ファンタジー都市ファンタジー
2025年04月13日
公開日
1.1万字
連載中
 とある町の小学校に通う、佐藤砂糖は吸血鬼だ。  彼自体、その事実を隠すつもりもなく、現在は平穏に日本での生活を義理の姉であるレガロとともに過ごしていた。  その日も平穏な一日になるはずだった……。  いつものように砂糖は小学校に登校したのだが、どうやら周りの様子がおかしい。担任教師に理由を聞けば、どうやら近隣の小学校で学生が次々に誘拐されているのだという。  このままでは自分の平穏な日常が脅かされてしまう。  それに、この誘拐事件はただの誘拐事件ではなく、自分と同じ「異形」である可能性があったのだ。  縄張りを荒らされると焦った砂糖は自らの手で事件を解決すべく、ある方法で犯人との接触を図ろうとして……?  これは、  平穏を何よりも好む吸血鬼が、「ただの日常」を掴むために異形の悪と対峙する、そんな物語――。

第1話

 ——「お前も、一緒にくるかい?」



 その時、どうしてそんな言葉を「彼女」にかけたのか、正直なところ憶えていないし、むしろ自分が聞きたいくらいだった。

 けれど今思えばその出会いは必然であり、逃れられない運命だったのだと断言できる。


 ただ彼女にも思うところはあったのだと思う。

 無理もない、目の前の惨劇は僕自身が招いた結果である。


 血濡れの僕の手を、掴む確率など1%にも満たないと思っていた。しかしながらその1%を満たしたゆっくりと伸ばされた手は、少女らしく震えていた。


 掴み、思う。


 彼女は僕が守らなければ……と——。

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