どどどと凄い勢いで北村チヨリさんが売店に走り込んできた。
「
「ああ、たった今、バード用レアスキルとレア
「あ~~~っ、アンデット攻撃呪歌と毒効果軽減呪歌が欠品なのっ!! あ、あるだけ頂戴っ!」
「ひゃあ、良かった~~」
「峰屋みのりさんっ!! 今回は遅れを取ったけど、
「はっ、はひっ!」
北村チヨリは峰屋みのりが胸に抱えているレアスキルオーブとレア
「そ、それをよこしなさいっ!」
「い、いやれふ、これは私が買いましたっ」
「レアスキル~~~~!!」
峰屋みのりにつかみ掛かろうとした北村チヨリを、売店のお姉さんが割って入って止めた。
「あの、お客様、申し訳ありませんが売店内での強奪行為はちょっと」
「あ、はいはいっ、ちっ!」
「レ、レアスキル怖い……」
「お客様、レアスキルとレア
「は、はい、覚えまーす。ええとええと」
「珠を持ち上げて『スキルゲット』でございます」
「ぐぬぬぬぬ~~」
北村チヨリが般若のような顔で峰屋みのりを睨みつけた。
『スキルゲェーーット!』
スキルオーブが黄金の粒子になって峰屋みのりの胸に吸い込まれた。
「これでできたかな」
「うおっ」
「すごい澄んだ声に」
「おねえちゃんの声、綺麗だー」
「がるるるるうっ!!」
「そ、そうかなあ」
なんだか
鈴が鳴る声というか、すごく心に食い込む声の周波数だ。
『みのりんっ!! なんて綺麗なんだ~~』
『僕はみのりんのファンを始めます』
『燃2弾4鋼11』
『いや、解体すんな』
峰屋みのりはレア
きつね色のコモン
「ええと、これは」
「開いて読みますと、脳に呪歌が書き込まれます。負荷が掛かるので、一日二曲ぐらいにしておいた方がよろしいかと」
「んじゃ、【スロウバラード】と、ええと、【元気の歌】を読もうかな」
そう言って峰屋みのりは
ふわりと
『ゆっくりゆっくりゆっくりなりたまえ~~♪ あせってもしかたがないからのんびりいこうじゃないか~~♪」
峰屋みのりの澄んだ声が響く。
「わわっ、なんだか動きが遅くなるよっ!」
「歌声だけで効くのかっ!」
「すごいよ、峰屋さんっ!」
これは凄い、頭はちゃんと動いているのに動作だけがスローモーになる。
峰屋みのり以外の全員がゆっくり動いている。
これは十階のフロアボス『ワーウルフ』戦で効果がありそうだ。
峰屋みのりは
手元から
峰屋みのりは【元気の歌】の
こちらはコモン
『きょうはいいてんき~~♪ おひさまわらってぴっかりこ~~♪ さあげんきをだしておかのむこうまであるこうよ~~♪』
ほがらかな歌声が峰屋みのりから流れ、俺は体の芯から活力が湧いてくるような気がした。
『おお、画面越しで効果がっ」
『いろんな所が元気にっ』
『えーと、行軍とかに使われる疲労軽減の歌らしい。夜の元気の歌は別にあるらしい』
『それは聞きたい!!』
「チエミさん、【
「いらないわっ、もう買ったわよっ!!」
『『『『『それを覚えないとはとんでもないっ』』』』』
「覚えないわよっ!」
「じゃあ、残りの
「かしこまりました。大量にお買い上げ頂いたので送料はサービスいたしますね」
「わあい、ありがとうっ」
峰屋みのりは箱からリュートを出して背負った。
なんだか、
「それじゃ、俺たちはもう行くよ、タカシにいちゃん、ミノリン、デイシューにいちゃん、メガネにいちゃん、いろいろありがとうねっ」
「ぜったい凄いS級配信者になってみるからさ」
「おう、がんばれよ」
小学生ズは手を振って走って門を抜けていった。
「さあ、俺たちも帰ろうか」
「下で
「夜の迷宮はいろいろと危ないですぞ、峰屋さん」
「そうだよ、僕は疲れてしまったし」
「そっかー」
峰屋みのりは残念そうだ。
「あ、じゃあさじゃあさ、ファミレスで打ち上げをしようよっ!! タカシ君もご飯を食べなきゃだめでしょ」
「え? ファミレス?」
「嫌いなの?」
「いや、高いだろ、ファミレス」
「「「ぶふっ!!」」
三人が一斉に吹き出した。
俺の後ろにいた北村チヨリも吹き出した。
「タ、タカシくんっ! さっきは四千万の買い物をどかっとしてたじゃないっ!!」
「新宮、お前は本当に貧乏性だなあっ」
「いいんだよ、タカシ、お金はあるんだ、いっぱい使って社会を回そうよ」
「そ、そうなのか、うむ」
みんなに笑われて、なんだか俺は恥ずかしくなった。
だけど、ファミレスは高いよな。
「いこいこっ!」
「サイゼリアが良いのでは」
「駅前にあったっけ?」
「とりあえず、東口に出よう」
俺たちが門に向かうと、見た事のあるDアイドルたちが手に手に弓やボウガンを持って走り込んできた。
これは四階五階はしばらく混むだろうなあ。