『史上二番目の
『みのりんっ
『すげえぜ、なんでだ、必要パラメーターは幾つよ』
『数値は解らねえが、たぶん魅力値が最重要、サブで知性値、器用度って所か』
『魅力値……、あっ、コモンスキルの【魅惑】で下駄が履かされたのかっ!!』
『それだーっ!!』
大騒ぎのコメントが怒濤のように流れて行く。
峰屋みのりが
そして、間髪を入れずに転職をした。
タタターーン。
どこからか透明な音色の弦楽器のメロディが聞こえてきて、真っ白な雲が天井にもくもくと広がり、中から巨大な美しい女の顔が現れた。
『異世界の
あまりに神々しいお姿に我々は自然と床に膝を付けて頭を下げていた。
山羊頭さんだけが普通にしている。
『転職中継だーーっ!』
『あ、みたことない女神様っ』
『
『ええと、芸事の守護神メルリカさまかな、お美しい』
カメラピクシーたちもハイテンションで飛び回り、あちこちを激写している。
峰屋みのりも土下座をしている。
「ははぁ~~」
『鳥のように歌い踊り遊べ、その調べで友を癒やし、活力を与え、敵を弱らせよ。ミネヤミノリよ、お前の行く末に幸有らんことを願う。世界の果てまでも旅をし英雄を語り継げ』
「ががが、がんばりますっ!」
女神さまは満足そうにうなずくとにっこりと微笑んだ。
峰屋みのりに光が注ぎ込まれてあふれた力がキラキラとこぼれ落ち、床に跳ねて消えた。
「あ、体、膨らむ膨らむ」
レベルアップの時と同じか。
あれは不思議だよな、体は別に膨らんでないんだけど、膨らんだ感があるんだ。
光が天に去って行き、雲がだんだんと薄れて女神さまの頭は消えた。
「や、おめでとう、君は
峰屋みのりはすっくりと立った。
うわ、さっきよりずいぶん綺麗に見える。
峰屋みのり
「ありがとーっ!! 山羊さんーーっ!!」
「ワシはバフォメットな」
「バフォメットさんっ!! ありがとーっ!!」
バフォメットさんは目を細めてニコニコと笑った。
というか、意外に有名悪魔さんだった。
『有名なサバトの悪魔じゃん、なんで神父さんやってん?』
『悪魔の中で信仰値が高い奴が交代で神父役をやっとるのじゃ』
『人間の僧侶でよくね?』
『この世界の人間の僧侶のレベルでは蘇生もままならんし、職替えの儀式もできんわい』
『悪魔も大変だな』
峰屋みのりがこちらに振り返った。
「や、やったよ、みんな、
「やっぱり青い羽根が転職アイテムだったんだ!」
「峰屋さん、すごいよ、史上二番目の
「やったなあ」
「みのりねえちゃんすげえっ!!」
「さっきより綺麗だ!!」
みんなに褒め讃えられて、峰屋みのりは頬を赤らめてとても嬉しそうだ。
見ているこっちもなんだか嬉しく……。
あっ!
「峰屋、こっちにこい!」
「え、ちょ、どこ行くのタカシくん!!」
「売店」
「な、なんで?」
「いいから来いっ!!」
『『『『『あっ!! タカシ鋭いっ!!』』』』』
『俺もこうしちゃいられねえっ』
『乗るしかねえ、このビックウエーブに』
『え、何々? なんで売店?』
『リュートでも買うのか?』
俺はデモンズ神殿を飛び出しフロアを横切って売店に飛びこんだ。
「いらっしゃいませー、あら、タカシさん」
「お姉さん、売店にある
「あらあら、
「全部押さえて、支払いは……」
くそ、少なくとも数千万クラスの売買になるな。
お姉さんは端末をタッチして、品物を押さえてくれた。
ふう、一安心だ。
「もう、なんなのよう、呪歌を使う
「あー!! そうか、新宮、お前は偉いっ!!」
「ん? どゆこと?」
「今、
「う、うん」
「どうして、迷宮の売店にこんなにも
「あっ!! みんなが、
「そうだ、Dアイドル垂涎の的の
東海林の説明は明快で解りやすいな。
「そうかーっ!! ありがとうタカシくんっ!!」
「いや、レアスキルオーブまであってラッキーだった」
「いつもはもう少し数があるんですけど、アラブの方で
「それは惜しいけど、一個だけでも助かる」
さて、支払いはどうしようか。
下界に出て俺の口座から下ろしてくるかな。
昨日は一千万入っていたが、今日の支払いはもう在ったのかな?
公式まとめ動画のロイヤリティとかも入ってくるはずだが。
最優先は、レアスキルオーブ、レア
コモン
あれば便利だけど、入手難易度が低いから頑張ればなんとか。
「あ、じゃあ、あそこのリュートも下さい」
「はい、呪歌効果がとっても上がる魔法の品ですよ、二千五百万となります」
「おおっ? お金たりるかな、はい、これで」
峰屋みのりがお姉さんに差し出したのは、限度額一億円のブラックカードだった。
そうか、こいつの実家は大富豪だった。
貧乏人の俺が心配することは無かった。
お姉さんに精算して貰ったところ、迷宮売店の定価なので思ったよりも安くすんだ。
まあ、それでも四千万とか行ってたけどね。