「あ、すいません、ドリンクバー追加で」
「あ、僕もお願いします」
「僕も」
なに! ドリンクバーだと!!
二百円でジュース飲み放題……。
フランスパン一個が買える、だがジュースは飲み放題なのか。
沢山飲めば元が取れる?
「あと、ドリンクバーもう一つ、取るよねタカシ」
「あ、え、ああ、そうだな」
「かしこまりました、ドリンクバー四つですね」
お姉さんが端末に注文を打ち込んだ。
俺は水でも良かったんだがなあ。
うーん、二百円。
万札万札。
「諦めて飲もう、タカシ」
「新宮は初ドリンクバーか」
「タカシ君かわいいっ」
「めんぼくない……」
みんなでドリンクバーに並んだ。
ええと、カップを取ってジュースを入れるのか。
おっと、温かい物もある、コーヒーか、何年も飲んでないな。
缶コーヒーは高いからな。
東海林はジンジャーエール、泥舟はコーラ、峰屋みのりはカルピスを注いでいた。
俺は……。
『食事の前に甘いもの飲んじゃだめやで、ご飯がまずうなるし』
かーちゃんの言葉が頭に蘇った。
そうだな。
俺はウーロン茶をカップに注いだ。
みんなで席に戻る。
「タカシ君渋いね」
「あ、まあ、食事前に甘いもの飲むなって言われてたから」
「あー、私も言われた事ある」
「親世代はみんなそう言うね」
「タカシはお母さん子だから」
ほっといてくれ。
ウーロン茶を一口飲む。
苦いけど美味しいな。
「おまたせしました~」
ウエイトレスさんが料理を運んできてくれた。
泥舟はミックスグリルセット。
東海林はボロネーゼスパゲッティ。
峰屋みのりはメメントハンバーグセット。
そして、俺の目の前にパチパチ音を立てるメメントチーズハンバーグセットが。
ああ、なんだか子供の頃のワクワク感が戻って来たようだ。
チーズとハンバーグの良い匂いがする。
「いただきます」
「いっただきまーす」
「うん、いただく」
「い、いただきます」
泥舟にシルバー入れから、ナイフとフォークを取ってもらって、俺は熱々のチーズハンバーグを切り取って口に入れた。
美味い。
ああ、なんだか泣きそうなぐらい美味い。
チーズの風味とナツメグが効いたハンバーグの味わいが絡み合って天上のご馳走のようだ。
「おいしいね、タカシ君」
「あ、ああ」
「これからはさ、新宮、ちゃんと自分でお金を使える高校生らしい生活を楽しもうぜ」
「タカシは我慢しすぎてたからね」
「毎日狩りして毎日打ち上げをしよーっ!」
「いやそれはさすがに」
「毎日狩りしないの?」
「わりと疲れるから、うちは土日ぐらいだな」
「結構疲労しそうな感じだね、タカシが毎日潜っていたのがおかしいよ」
「そうなの?」
「鉄人の域だよ」
そうなのか?
俺は慣れたから気にしなかったが。
あーー、コーンスープが甘くて美味しい。
「とりあえず、一日おきぐらいでやろうか」
「そうだね、明日は行こうか」
「今日は本当にちょっとだったしね」
「ああ、いいよ」
「やったあ、タカシくんありがとうっ」
峰屋みのりの
「所で、
「なんでも出来る」
「全部」
「オールマイティ職だよ、峰屋さん」
「え、ええ?」
「回復の歌でHPを回復できる。解毒の歌で毒の効果を下げる事ができる。弓や剣も使える。初歩魔法も覚えられる。歌や踊りで味方を支援したり、敵の攻撃を妨害する事もできる」
「すす、すごいっ、
うん、こう聞くと
「欠点としては、専門職よりは何割か弱い。僧侶の回復にはかなわないし、弓も射手よりは落ちる、魔法も中級魔法は覚えられない、だが支援系は専門だ」
「ほえーほえー」
「峰屋はレアスキルとレア
「すっごいっ!」
「僕もまだコモン魔法を全部は覚えてませんからね、他のDアイドルに比べて圧倒的に有利ですよ」
東海林がしみじみと言った。
コモン
「そうかー、私が今、世界一かーっ」
「まあ、今晩にもDアイドルの誰かが
「でもまあ、私は凄い有利だねっ。
まあ、金を払ったのは峰屋みのりの親なんだが。
俺はちょっと気が付いただけだ。
「
「うん」
峰屋みのりは華のように笑った。
「うん、私は、タカシくんを、泥舟くんを、東海林くんを、応援するよっ! みんなで150階を目指そうっ!! 私の天職だよっ!!」
「僕は別パー……、ま、いいか」
「野暮はいいっこ無しだよ、東海林君」
泥舟が東海林を見てにっこり笑った。