晩ご飯は東郷先生が迷惑を掛けたから、と言って祇園の料亭に連れて行ってくれた。
うん、もの凄く場違い感が凄い。
政治家が来そうなもの凄い格式が高そうな料亭であった。
高校生が来ていい場所では無いと思うんだが。
「和食のコースか、たのしみだなあ、はもとか出るかな」
「鏡子さん、昨日食べたじゃないですか、はも」
「え、あの焼き魚はもなの?」
俺も知らなかった。
泥舟は和食に詳しいなあ。
上品な仲居さんに通されたのは趣味の良い和室であった。
なんだか雰囲気あるな。
窓から綺麗なお庭が見える。
上座に乃木先生と東郷先生、んで、鏡子ねえさんにみのりと美春さん、俺と泥舟は下座だ。
これで良いのだろう?
うん、泥舟が文句を言ってないから良いらしい。
東郷先生がビールを頼んで、乃木先生と鏡子ねえさんに注いでいる。
先付けに綺麗に飾られた何かが出て来た。
なんだろうこれ。
みのりが食べ始めたので、俺も箸を取って口に運ぶ。
なんか、イクラが乗った練り物っぽいものだ。
なかなか美味しい。
「テリーヌだね、とても美味しいなあ」
「そうか、テリーヌなのか」
なんだか知らないけど美味しい。
次に小ぶりのお寿司が出て来た。
押し寿司っぽいね。
「美味い美味い」
鏡子ねえさんがばくばく食べている。
そんな勢いで食べて良い物なのだろうか。
なんだか、ゆっくりと沢山ちょっとずつ出てくるね。
お吸い物、お刺身、煮物。
「ここは美味しいですね」
「峰屋のお嬢さんに褒められるとは、板長も光栄だろうね」
「いえいえ、私なんか庶民舌なので~」
みのりが謙遜しているな。
彼女が庶民舌なら、俺なんかは牛の舌だよ。
でも、どれもとても美味しい。
高い和食なんかは初めての経験で楽しいな。
マナーとかちゃんとしていると良いんだけど。
「鏡子くん、これがはもの天ぷらだよ」
「おお、これがはもかあ」
ねえさんはうまいうまいとははもの天ぷらを食べていた。
うん、サクサクして美味しい。
白身の淡泊な魚なんだな。
炊き込みご飯とお漬物、お味噌汁が出て来た。
うん、美味しいなあ。
結構お腹いっぱいになったな。
これで終わりかな。
ゆずのシャーベットが出て来た。
どうやら終わりらしい。
ねえさんは満足したかな?
「おいしかったっ、ありがとう東郷先生」
「それは良かった、今日は迷惑を掛けたからね」
「きにすんない」
鏡子ねえさんはニハハと笑った。
「麒麟さんは不満そうでしたが、もう来ませんか?」
「ああ、白虎は清明派の中で一番できる、あの子がタカシくんに子供扱いされたのだ、もう、打つ手は無かろう」
「そうですか、それは安心しました」
「そうだな、鬼人化すればと思ってもな」
「鬼人の肉が無いわい、もうすでにな」
「鬼人化?」
「陰陽師にも奥の手があってな、酒呑童子の肉という触れ込みの物があって、口にすると鬼の力と速度を得られる、が、反動がな」
「半数は死ぬ、半数は再起不能だな」
「そんな物が」
「明治の時に全部使って最後の妖怪変化を封印してもう無いんじゃ、安心せい」
それならば安心か。
権八の時のように注射を勧められても打ちはしないだろうし。
和コースを完食した。
京都らしいご馳走を食べられて良かったなあ。
昨日の鉄板焼きのお店も美味しかったけど、料亭の料理は繊細さが違うかんじだね。
さて、ホテルに帰りますか。
乃木先生達とは料亭の前で別れた。
「じゃあ、明日も迎えにくるからね」
「はい、お願いします美春さん」
「私も観光したい~~」
「鏡子は明日も採寸だ」
「できあがりを取りに来る時にまた京都に来たまえよ」
「わかった、その時にみんなと観光する」
そうだね。
俺たちも鏡子ねえさんがいないのでちょっと寂しいし。
四人で夜の京都の町をぶらぶらと歩く。
そして前方に、赤い服を着てかっこつけたポーズを取っているマイケル氏がいた。
「げえええ」
「また来た」
「お、世界一か!!」
俺は黙って収納袋から武器を取り出して、みなに配った。
「へいっ、その子が、全裸狂女の鏡子さんだねーっ、ヒュー、可愛いじゃないのう」
「うるせえ、世界一」
「なんの用ですか?」
「決まってるネエ、『暁』だよ~~」
「銃は取り上げられたんですか?」
「そうだよ、聞いてくれよ、ヘイベイビー、日本の警察は頭が固くて、次に迷宮の外でガンを使ったら国外退去処分とか言うんだゼ~」
銃は封印されたのか?
使わないように言われただけか?
「じゃあ、もう、マイケルさんに勝ち目は無いですね、どいてください」
「そうでも、無いゼ~」
そう言った瞬間、後ろ頭がチリチリした。
【危険察知】!!
反射的に身をよじると、真っ黒なスーツに身を包んだ外人の女性がびっくりしたような顔で俺を見た。
腰に差した『暁』に、彼女が手を伸ばして届く寸前だった。
「ホワイ、気付かれるナンテー!」
「ええっ! なんで、なんでタカシくん、パティの【気配消し】を破れるんだーいっ!」
俺は飛び退いてパティさんから距離を取った。
「タカシ、『ホワッツマイケル』の
「おお、よく知ってますねえ、デイシューボーイ、うれしーでーす」
【気配消し】持ちの