鏡子ねえさんが飛びこむようにして三段突き。
三発に見えたパンチが無数の弾着になってマイケルを襲う。
ドガガガガガガッ!!
「ちいいいっ!!」
マイケルは『十柄』を使って【受け流し】。
刀身にガキンガキンガキンと弾着痕が発生する。
「なんてぇ速度だっ!!」
マイケルは剣を切り返しレア戦技を放つ。
「【縦横斬】」
一瞬で剣の前に格子のような軌跡が発生した。
十振りほどの斬撃を前方に発射する技か。
鏡子ねえさんはしなやかに避ける避ける一発籠手で受け、さらに避ける。
『は、はええっ!!』
『さ、さすが上級職同士の戦い』
『縦横斬は[草薙]効果付きかっ』
バッシバッシとねえさんの蛇柄スーツに切り傷が増える。
が、意に介せず
「ひゃあるうああるううぅっ!!」
マイケルは一歩退き、【受け流す】そして、【身かわし】で避ける。
陸橋の地面が[楔]の影響か、えぐれる。
「畜生! 剣が傷むじゃねえかっ!!」
俺も前に出る。
「邪魔だ、タカシ、てめえの出る幕じゃっ!」
さっき覚えたばかりの、切り返しを使った蹴りを放つ。
ドッカン!
「ぐおっ!!」
蹴りが来るとは予想できなかったのか、スキルでの避けはなく、マイケルの腹に俺の蹴りがもろに入った。
だが、効果はあまりないか。
「てめえっ!!」
「あいらぁえるぅうううぅっ!!」
こちらに気を向けたマイケルの横から鏡子ねえさんが突撃する。
「くそっ! 忙しいっ!!」
当たり前だ、三対一だぞ。
普通に戦えているだけ、マイケルの技量が脅威すぎる。
マイケルは鏡子ねえさんに斬り込み、避けられた所を引き戻し反対側の刃での斬りを狙う。
バックエッジという剣で使う技だ。
鏡子ねえさんの左二の腕に裏刃が掛かる。
ニュルンという軟体みたいな動きでねえさんは刃を避ける。
ねえさんも何か回避系のスキルがあるな。
[草薙]の権能で切り傷は負うが、即座に煙を噴いて塞がっていく。
『すげえすげえ』
『マイケルも、鏡子さんもうめえっ!』
『その中に分け行って行くタカシもクソ度胸だ、一手間違えただけで即死だぞ』
『デイシューは無理すんな、技量が足りなすぎる、ポーション係で』
『みのりんが謡の維持に手を取られてなきゃあなあっ』
野次馬の前面で座り込んだ白虎くんが呆けたような顔で見ていた。
「こ、これがDチューバーの戦い……」
「こ、こんなに……」
「次元が違う……」
鏡子ねえさんが俺に視線をくれた。
合点だ。
俺が前にでて、マイケルの気を引く。
勇気を持って斬り込む。
「邪魔だっ!! 沈めタカシ!!」
間合いの中に踏み込む。
マイケルは【足捌き】がある、すり足で大剣の距離を取られる。
こちらは片手剣、間合いが短い。
だから、さらに踏み込む。
ねえさんを信じる。
ねえさんが体をねじる。
マイケルが視線をねえさんに送る。
キンカキン!!
「ちっ! 囮か!!」
マイケルがバックステップで距離を開けようとした。
俺は姿勢を低くして間合いをぎりぎりまで詰める。
「ぐっ!!」
大剣は間合いが長い、が、それは超接近戦では振り切れないという事だ。
柄での打撃が飛んで来た。
『浦波』が[自動防御]、俺はマイケルの軸足を狙って『暁』を振る。
【身躱し】でするりと避けられた。
が。
避けた先はねえさんの正面だ。
「ちっ!! 小賢しいっ!!」
「きぁらるううううっ!!!!」
白虎を倒した一直線のパンチがマイケル目がけて飛んだ。
『『『やったか』』』
『やめろばかっ』
「[
赤黒い逆さになった馬のようなエネルギーが虚空から現れ、鏡子ねえさんの必殺パンチと一瞬拮抗した。
バキュアルッ!!
「【オカン乱入】」
奔馬のようなエネルギーが『十柄』から吹き出して鏡子ねえさんに直撃した。
俺はとっさにかーちゃんを飛んでいくねえさんの向こうに呼んだ。
必殺パンチを弾き飛ばし相殺してなお、真権能[
光の柱から現れたかーちゃんが鏡子ねえさんを受け止めた。
「え、鏡子しっかりせえっ!! 『我が女神に願いて、ここに
かーちゃんが【ハイヒール】の呪文を掛ける。
ねえさんは全身から治癒の煙を出して立とうとしているが、無理だ。
被害が大きすぎる。
「は、ははっ、はははははっ!! なんてぇ威力だっ!! すげえぜっ『十柄』!!」
マイケルは『十柄』を見て歓喜の表情を浮かべた。
「さあて、タカシ、次はお前だっ、どうだ、降伏するか、ああ?」
だめだ、あの権能が凄すぎる。
勝てない……。
「タカシっ!! 気持ちで負けてはあかんでっ!!」
「うるせえ、おばはんっ!! じゃますんな、先にぶっころすぞっ!!」
「がうううっ」
「鏡子、ちょっと待ってな、うちがあの伊達男をぶっ飛ばすわ」
かーちゃんがねえさんを地面に横たえて立ち上がった。
「タカシ、なんでも諦めてはあかんで」
「かーちゃん」
「一緒に伊達男を倒そうや!」
「解った!!」
「頭が悪いなあっ!! 日本人って奴はよおっ!!」
ねえさんの元に泥舟が駈け寄った。
しばらくすれば鏡子ねえさんも回復するか。
それまでに、なんとしても[