『Dリンクス』と『オーバーザレインボー』がポータルコーナーへと足を運ぶ。
ここはちょっと広い広場みたいになっていて、これから各階に乗り込む冒険者パーティが装備を調えたり物資のチェックをしていた。
俺たちも収納袋から装備を出して付けて行く。
みるみる内に和服の泥舟が足軽になるし、みのりは帽子をかぶり、鏡子ねえさんは籠手を付ける。
泥舟以外はそんなでもないな。
俺も『暁』と『浦波』を出してベルトに吊すぐらいだ。
『オーバーザレインボー』の方はリュックから装備を出して付けるので少々時間が掛かる。
高田君がレア斧を腰に差してできあがりだな。
「収納袋はうらやましいお」
「すっごい便利だよ、銀箱だから、深い所なら設置の宝箱からも出るかも」
「売っても凄そうだけど、やっぱり物資が沢山持てるのはいいおん」
高田君はDチャンネルで話題になったから語尾を作ってる感じがするな。
まあ、Dチューバーにはそういうキャラ立ての努力も必要だよね。
「さて、行こうか新宮」
「そうだな、チアキ、鏡子ねえさんに引っ付いていろ、接触して無いと飛べないから」
「わかったあ」
「ほいよ」
鏡子ねえさんがチアキの手を握った。
なんか二人は仲が良くて良いな。
ポータルの石碑に手を触れる。
ブワリと視界がぶれて、石作りのホールに俺は出現した。
十階のポータルホールだ。
ここから一階のポータルホールにも行ける。
仲間が続々と現れてくる。
鏡子ねえさんとチアキも無事に出現した。
チアキはキョロキョロと辺りを見回している。
鏡子ねえさんはドアを開いて出ていってしまった。
もう、ねえさんは。
「鏡子はどこにいったの?」
「隣のボスフロア、ワーウルフの兄貴を撫でにいったんだ」
「なになに?」
チアキもドアを開けてボスフィールドに入った。
真ん中にはワーウルフの兄貴が三匹の狼と共に寝ていて、鏡子ねえさんは優しい目でワーウルフの頭を撫でていた。
「友達なの?」
「戦友というか、ライバルというか、気に入っているみたいだ。ねえさん行くよ」
「おう。じゃ、またな」
ワーウルフの兄貴の頭を一撫でして鏡子ねえさんがやってきた。
「行こうか」
「そうだね」
どこからか、ふよふよとリボンちゃんと、おだんごちゃんと、幼女ちゃんがあらわれた。
「今日もよろしくな、リボンちゃん」
彼女はにっこり笑ってうなずいた。
ポータルを使うとポータルホールあたりからカメラピクシーは現れるのだ。
『お、今日は本狩りか、『Dリンクス』』
『また鏡子はワーウルフを可愛がっておるのう』
『ねえさん、ワーウルフ兄さんが好きだからなあ』
『お、チアキが冒険者スタイルだ、ミニタカシみたいだな』
『愛らしいのう』
チアキも買ったばかりのコメントチェッカーを開いていた。
俺たちはポータルホールに戻る。
「あ、新宮、レイド設定をしよう」
「そうだな、ええと」
「一時登録と一緒で、リーダー同士のカメラピクシーの頭に手を置いて『一時レイド』だ」
「恒常レイドもあるのか」
「深度が深くなるとあるな」
今の所は一時で良いか。
俺は東海林のマリリンの頭に手を置いて「一時レイド」と唱えた。
東海林もリボンちゃんの頭に手を置き「一時レイド」と唱える。
これで良いのかな。
「あ、動画ソフトでレイドとなってるよタカシくん」
みのりがDスマホをみせてくれた。
たしかに、『レイド中』と表示が変わっているな。
「これで十二人まで一緒に行動できるのか」
「上限は三レイドまで、十八人パーティだね」
「三十階ぐらいからかな?」
「ミノタウロス戦だと二レイドぐらいが普通かな、強い所は一本で行くし。四十階マンティコア師匠戦ぐらいからレイドが増えて行くよ」
十階二十階のフロアボスでレイドを組まないのは宝箱が出るので分配が難しいからなんだよな。
良いレアスキルとかが出てレイド相手で殺し合いという事も良くあるそうだ。
まったく、悪魔のダンジョンは誘惑が巧みだ。
「さて、十一階に向かおう」
「『オーバーザレインボー』の最深到達階は?」
「十三階だな、オークたちもオークリーダーとか出てくるし、オーガーが強くて厄介だ」
こっちは十階以下を覗いて見ようと行って十二階ぐらいか、同じぐらいだな。
人数が増えた分、突破する力は増えているはずだ。
ポータルホールの端に下り階段があってそこを下りると十一階が始まる。
六階から十階までの洞窟迷宮が前座だとすると、ここからが本格的な洞窟迷宮で、落とし穴や回転床等のギミックや、謎解き、オーブに触らないと開かない扉などが出始める。
まあ、初見だとそうとう苦労しそうだが、今はネット時代だ、Dスマホのアプリ、Dマップに注意点は全部描かれているし、推奨ルートも載っている。
占有殺しが動きはじめたから、もしかしたら設置宝箱にも当たるかもしれないな。
「ドロップ品、宝箱の取り分は折半でいいか東海林」
「いや、いやいやいや、峰屋さんが居るし、悪いぞ新宮」
「なあに、折半が一番解りやすくて良い、どっちかに有利だと後々しこりがのこるしさ」
「すまん、配信料も『Dリンクス』の方が抜群に良いのに」
「一緒に儲けて、装備を買ったり、呪文を整えたりしよう。同盟パーティなんだから」
「ありがとう、助かる」
俺たちは十一階に入った。
階段下はいつものように安全地帯だ。
何組か別のパーティも居て準備とかしているな。
さて、狩りを始めよう。