学校に行くとみのりがデデデとやってきた。
「タカシくんっ、タカシくん、これみてこれみてマリちゃんが書いたの」
「は、恥ずかしいですっ、みのりさんっ」
メガネでおかっぱの方喰(かたばみ)鞠子さんがみのりを止めるが奴はそんな事では止まらない女だ。
みのりが手に持った紙を見ると、カワイイ山猫とDリンクスとレタリングされたマークが描かれていた。
「おお、これはこれは、良いね」
「良いでしょ良いでしょ、刺繍してみんなの服に張ろう」
「は、はずかしいですっ」
「マリさんは絵を描くんだ」
「ま、マンガ研究部におりますっ」
「版権使用料って幾らだせばいいんだっけ、十万、二十万?」
「いえいえいえいえ、素人の落書きなんでそんなそんな」
「只とはいかないよ、Dリンクスのグッズの話も来てるし、マークとして使うならお金を払わないと」
「で、でしたら、あのお願いがあるのですっ」
「お願い? カエル饅頭が欲しいとか」
「い、いえっ、カエル饅頭もアタックドッグホットドッグも食べたいですが、そうではなくて、私、Dチューバーになりたいんですっ」
おやおや。
この子は地味な文系だと思っていたのに。
やっぱりバズりたいのかな。
「
「まさかそんなっ、あの『
「ああ、それは良いね、丁度今日は先生と迷宮に行く日だよ」
東海林が話に割り込んで来た。
「そうだね、先生と今日行くから一緒に来たらどうかな」
「い、良いんですか!」
「俺も『
「ありがとうございますっ!」
女の子だけど、竹宮先生が居るから大丈夫だろう。
マリちゃんはみのりと一緒に俺に付いて来た。
自分の席に座るとみのりは前の席に座り、東海林は椅子を引っ張って来て、マリちゃんも椅子を持って来た。
「あのあの、タカシさんの動画全部見て、Dリンクスの配信も楽しみにしておりまして、鏡子さんが大好きで、このリンクスは鏡子さんをイメージしておりましてっ」
「あ、良く見ると鏡子ねえさんっぽいね」
「いやいや、上手だなあ、プロ並だね」
不良二人が寄ってきてマークをガン見した。
「へえ、いいじゃんかよう、おいっ、方喰(かたばみ)わたいらのマークも作れよっ」
「そうだそうだ、タカシたちだけずるいぞっ」
「えっ、えっ、えっ?」
後ろから腕が出て来て、不良娘を二人まとめてこめかみに拳固でぐりぐりした、梅干しだな。
「おめえら、タカシに迷惑かけんなって言ってんだろっ」
「あ、後醍醐せんぱい、ちーっすっ」
「いや、格好いいんすよ、このマーク見て下さいよ」
「おおっ、おーーー、鏡子さんっぽいなあっ、すごいなあんたっ」
「あ、ありがとうございまふっ」
マリちゃんは後醍醐先輩にびびって挙動不審になっている。
「こんど『迷宮ぶっ潰し隊』のマークも作ってくんねえかな、もちろん金は払うよ」
「あ、ありがとうございますっ、考えてみますっ」
「あたいらのも~~」
「作ってくれよう~~」
「姫川と高木のパーティは名前付いてんのかよ?」
「え、付いてねえ」
「そろそろ付けなきゃなあって思ってた」
「付いてから頼めよ」
まったく、不良は馬鹿だな。
二人はブツブツ言いながら離れて行った。
「あいつら両方戦士ですか?」
「いや、高木は『
「そうですか、『
「僧侶と魔法使い、あと射手とか居れば良いんだけどよ、もー不良は戦士ばっかでなあ」
「こんな所でも職業の不均衡があるんですね」
後ろのドアが開いてチヨリ先輩が入って来た。
「そうなのよ~~、女の子はみんな
「あ、チヨリ先輩、おはようございます」
みのりが立ち上がってぺこりと挨拶をした。
ここらへんの礼儀作法はやっぱり上流階級な感じだな。
「おほほほ、気持ちがいいわ」
チヨリ先輩が寄ってきて、『Dリンクス』のマークをしげしげと見た。
「まあ、良い出来ね、今度社長に紹介してあげるから、作品をファイルして持って来なさいな」
「ほ、本当ですかありがとうございますっ」
マリちゃんは立ち上がってペコペコと頭を下げた。
「チヨリ先輩の知り合いに『
「あんまり居ないわね、戦闘にあまり関係が無い
「寺回りにもいないなあ。仏師とか、絵師とか、需要はありそうなんだけどな」
そうなのか、冒険配信者でもやっぱり闘う人がメインで、あまり『
京都の陰陽鍛冶の人達が『
今度美春さんに電話して聞いてみようかな。
先生がやってきた。
「おーう、みんな席につけ~、後醍醐と北村は自分のクラスに戻れ~~」
「へーい」
「はーい」
マリちゃんも椅子を持って自分の席に戻った。
『Dリンクス』のマークはみのりが持って行った。
鏡子ねえさんに見せるって言っていたが、気に入るかな?