さて、三日たった。
土曜日になったので一日掛けてのフロアボス攻略だ。
その間にマリちゃんの描いた絵がバズったり、『Dリンクス』の集合絵を描いてもらったりしたのだが、その辺は割愛する。
望月先生は色々悩んだが、結局
ポーションを自作できれば、生徒のパーティの安全が高まるからだそうだ。
理科室で錬金作業をしているが、まあまあの品質のポーションを作れているらしい。
武器装備は短剣どまり、装甲もローブまでだが、まあ仕方ないね。
まだ『
竹宮先生は、信仰心を上げるのに、一日中悪魔神殿に居て見学するという荒行を敢行したようだ。
転職の儀の時に出てくる神様達を見ると信仰心が上がりそうだから、との事。
回復の儀式とか、蘇生の儀式とかの雑用の手伝いをして、悪魔神父さんたちから結構重宝されたと言っていた。
たしかに信仰心は上がりそうだが、効果はどうなのかな。
そんなこんなで我々『Dリンクス』は早朝の駅に集まり、キオスクで行動食を買ったりしている。
「チョコバーと、あとおにぎりを買っていこう」
「おにぎりか、お弁当とはべつなのか、チアキ」
「別、おやつおにぎりツナマヨ」
お米好きなのか。
それぞれ、思い思いのおやつを買い込んだ。
レジ袋を貰って、マジックで名前を書いて管理する。
収納袋を使うから、誰のか解らなくなるからね。
電車に乗って、京急川崎着だ。
早朝だから人が少ないが、リュック持ちの配信冒険者っぽい人が多いな。
迷宮は二十四時間開いているから何時に来ても良いんだけど、朝から潜って夕方に帰る人が多いね。
ガチ勢は食糧を持ち込んで、安全地帯でキャンプして、三日ぐらい潜っている人もいるらしい。
「お、今日もお昼は崎陽軒のシウマイ弁当にしようぜ」
「おおおお、シウマイ弁当! 滅多に食べれなかった奴」
チアキの発言に、もう居ない半グレに対してメンバーの殺意が上がった。
ちゃんと喰わせてやれよ、もう。
とはいえ、最近はチアキも稼いでいるので何ら問題はない。
ちょっと肉が付いてふっくらして来た感じでとてもよろしい。
最初の頃はガリガリだったからね。
ねえさんはシウマイ弁当に中華弁当、みのりは横浜チャーハン、俺と泥舟はシウマイ弁当を買った。
チアキは散々迷った後、初夏のかながわ味わい弁当を買った。
いろいろとおかずが入って綺麗なお弁当だ。
「はあ、楽しみだなあ、早くお昼にならないかなあ」
「フロアボス前の安全地帯で食べる予定だよ」
「たのしみたのしみ」
マリちゃんも連れてきたかったが、変に養殖をすると冒険をする力が付かないから置いてきた。
彼女は先生方と一緒にレベルを上げてもらおう。
『
今日は配信で見てくれるそうだ。
全員の袋を分けて貰い、マジックで名前を書いて収納袋に入れる。
みんなほとんど手ぶらで身軽だな。
商業施設の広場に入った。
「あ、『Dリンクス』よ、タカシくん格好いい」
「フルメンバーね、フロア攻略かな」
「みのりんかわいー!」
広場に居るDチューバーファンの女の子に声援を受けた。
彼女たちは仁義として地獄門をくぐらない。
冒険をしない人がロビーにたむろすると邪魔だからね。
一説によると、関係のない人がロビーで長っ尻をしているとサッチャンが出て来てつまみ出されるという。
見た事は無いけどね。
あるかもしれない。
地獄門をくぐった。
温度が一度ぐらい下がり、硫黄の匂いがする。
ポータル広場に向かう。
「お、早いな『Dリンクス』」
「二十階狙いかな、強いからなああいつら」
「五十階まではノンミスで行けるだろうよ」
大人のDチューバーパーティが俺たちの噂をしていた。
かまわず十階ポータルの石碑の前に行く。
「チアキはねえさんにくっつけ」
「わかった」
「うーりうり」
「ぎゃはは、やめろう鏡子~」
二人はふざけながら十階に飛んでいった。
泥舟、ミノリと飛んでいく。
さて、俺も行こう。
石碑に触る。
ブンと景色が変わったと思ったら十階だ。
ねえさんがまたドアを開けてワーウルフを撫でに行ってしまった。
もう。
みんなの装備を出して準備をする。
『浦波』と『暁』を取り出して腰に下げて完了だ。
チアキもガンベルトを腰に巻きカウボーイハットをかぶって完了。
動画で見たみたいに銃を指でくるくると回しているな。
暴発とかしないのかそれ。
泥舟も足軽スタイルになった。
ねえさんが帰ってきたので、『金時の籠手』を渡す。
彼女はスポンスポンと両手にはめて終了だ。
みのりは
ふよふよとどこからか五匹のカメラピクシーが現れた。
「きょうも頼むよ、リボンちゃん」
リボンちゃんはまかせとけ、とばかりに親指を上げニコッと笑った。
さあ『Dリンクス』、二十階フロアボス攻略に出撃だ。