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第168話 タカシとチアキは家に帰る

 売店を覗いて『創作者クリエイター』のレアスキルが無いかお姉さんに聞いて見たが、無いそうだ。


「クリエイションも幅が広いですし、『創作者クリエイター』の活躍場所は迷宮の外なので、レアスキルとか、レア道具とかは無いんですよ」

「絵の上手くなるペンとかないの?」

「ありませんねえ、異世界ならばあるかも知れませんが、迷宮のドロップにはありません」


 そうか、がっかりだなあ。

 武器も、ハンマーとかの打撃武器ぐらいらしい。

 甲冑はフルプレートも着られるようだ。

 基本的に迷宮で活躍する職業ジョブでは無いんだな。


 当のマリさんはチアキと一緒に売店の品物を見て楽しんでいた。

 まあ、サポーターだから、あまり育成は考え無くて良いかな。


 迷宮の外に出たら夕暮れだった。

 空が赤いなあ。


「今日はありがとうございました、念願のDチューバーになれましたし、『創作者クリエイター』にもなれました、みんなタカシくんのお陰です」

「ああ、いいよ、別に、『Dリンクス』の仲間なんだから、水くさいよ、方喰さん」

「そうだそうだ、水くさいぞ、マリねえちゃん」

「ありがとうございます。チアキちゃんもありがとう」


 マリちゃんはペコペコと頭を下げた。

 辺り一帯が赤く変わって良い雰囲気だ。


 と、思ったら、みのりと鏡子ねえさんがデデデと走ってきた。


「マリちゃ~~ん、配信見た~~、『創作者クリエイター』おめでと~~」

「『Dリンクス』参入もおめでとおめでと、私の絵も描いてくれっ」


 やれやれ、いつも通りの雰囲気になってしまったな。


 今日は先生方にファミリーレストラン『メメント』につれて来て貰った。

 ただ飯はいつでも嬉しい。

 みんなでワイワイ騒いで、食事をして地元に戻った。


 東海林とマリちゃんは先生方の車に乗ったので、電車は『Dリンクス』だけだった。


「初サポートメンバーね、だんだん『Dリンクス』が大きくなって嬉しいっ」

「絵が描けるって良いよな、ダンジョン攻略には?」

「方喰さんは戦力的に期待は出来ないね」


 駅からぶらぶらと夜道を歩いて家を目指す。


「じゃ、私の家こっちだから、明日は狩り?」

「そうだな、また十六階まで潜るか」

「ム、ムカデハウスは嫌だよっ」

「あそこは行かない。一パーティでの感触を確認だな」

「よかった、じゃあ、おやすみなさい」

「よし、送って行く。チアキは先に部屋に行ってろよ」

「解った鏡子」


 ああ、そうか、今日から鏡子ねえさんとチアキがマンションに住むんだな。

 みのりと鏡子ねえさんが仲の良い姉妹のように夜道を歩いていった。


「いいなあ、マンション、僕も家を出ようかな」

「卒業してからにしろ、色々と面倒だぞ」


 泥舟が自分の家に入って行った。


「またあしたな」

「お休み、泥舟にいちゃん」

「おやすみ、二人とも」


 チアキと二人で夜道を歩く。


「タカシ兄ちゃん」

「なんだい」

「Dチューバーって楽しいね」

「これからもっと楽しくなるよ」


 そう言えば、チアキの学校とか考えないとな。

 教育が無いと将来が心配だ。

 ダンジョンが出来て、社会が激変していくけど、やっぱり学校で勉強することは意義があると思う。

 【思考】と【学習】は人類が持つ一番のチートスキルだからな。


 マンションに着いたのでチアキと一緒にエレベーターに乗って三階へ上がる。

 今日もどこかの部屋で呑み会なのか、騒いでいる声が聞こえる。


「このマンション、丸ごとDチューバーなの?」

「そうみたいだ、俺も挨拶に行って無いから解らないけどな」

「挨拶かー」

「今度、ねえさんと三人で三階の人に挨拶して回ろうか」

「そうだねっ」


 引っ越し蕎麦という訳にはいかないから、タオルかな、三久屋さんのお蕎麦券とかでも良いか。


 俺の部屋の方が手前だから鍵を開けたら、チアキに袖を引っ張られた。


「私たちの部屋、見ない?」

「いいね、見せてくれ」


 チアキに連れられて、一軒挟んで向こうの部屋まで足を伸ばした。

 ガチャリとドアを開けて、チアキが電気を付けた。


「おお!」


 なかなか良い感じに人の部屋っぽくなってるな。

 奧の窓際に、チアキと鏡子ねえさんのシングルベット。

 キッチンには冷蔵庫や電子レンジもある。

 部屋の手前はリビング的に使うのか、大きいテレビにプレステ5あった。

 ちゃぶ台に座布団があるな、なかなか良い感じだ。


「良いなあ、住みやすそうだ」

「でしょでしょ」


 チアキが満面の笑顔で答えた。


「お茶を入れてあげよう」

「ありがたいね」


 座布団は二つだったので、直に床にあぐらをかいた。

 チアキはキッチンで踏み台にのって、お茶を入れていた。

 猫のマグカップにお茶をいれて持って来た。


「これはねえさんのカップだろ」

「鏡子は気にしない、と思うけど、どうだろう」


 あんまり気にしなそうだけどな。

 あとで洗っておこうか。


 チアキは自分の座布団に座って、リモコンを操作した。

 開いたのはDチューブ動画だった。

 西部のガンマンの早撃ち講座動画が流れる。


「偉いな、勉強してるのか」

「うん、足手まといになりたくないから」


 大型テレビの中のガンマンは銃をくるくる回したり、右手と左手と銃を持ち替えたりしていた。

 チアキは熱心にそれを見ていた。


「ただいま~~、お、タカシ来てたのか」


 鏡子ねえさんが部屋に入ってきた。


「ああ、あ、カップ借りてるよ」

「ああ、そうか、こっちにも人が来るかもだから、予備のマグカップも要るな」

「明日買いに行こう」

「そうだな」


 うん、仲間が近くに住むのは良いな。

 なんだか安心感があるね。

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