悪魔神殿のドアを開けたら、悪魔神父さんが大目玉閣下だったので黙ってドアを閉めた。
「え、タカシさん、ジョブチェンジ診断はして貰わないんですか?」
「方喰さん、世の中には知り合わなくて良い悪魔さんがいるんだ」
『『『『わかる~~!!』』』』
『奴も勤務態度は真面目なのじゃが、なぜか人気が無いのう』
ドアがドカンと開いて大目玉閣下が顔を出した。
「良く来たね、僕の悪魔神殿に」
「神殿の外に出てこれるんですかっ!」
「出てこれるとも~~、ロビーまでは魔力があるからね、ささ入って入って」
「こ、このお方って……、その……」
「大目玉閣下だ」
「米国妖怪大統領の……」
閣下の触手に引っ張られるようにして、俺たちは神殿の中に入った。
「やあ、良く来たね、歓迎するよタカシくんと先生さんたちと、東海林君」
「な、名前を覚えられている~~」
東海林が少しショックを受けたようだ。
「こ、こんにちは」
「怖い感じなのに気さくなんですね」
「そうとも、僕は好感度ナンバーワン悪魔神父を目指しているんだよ。さあ今日の用事はなにかね」
好感度一位はたぶん無理だと思うが。
俺的にはゴーゴンさまかな。
「先生方と方喰さんのジョブチェンジ診断をお願いします」
「そうかね、ちなみにチアキちゃんは診断はしないのかい?」
話しかけられてチアキはビュッと俺の後ろに隠れた。
「しない……」
「そうかい、残念だ」
『『『『このロリコンめっ!!』』』』
「しっけいだよ、君たち~~」
大目玉閣下はペタペタと先生方を触った。
「そうだね、宮川先生はもうちょっと、竹宮先生は僧侶になるならしばらくかかるね、望月先生は『
「そうですか、信仰心ってどうやって上げたら良いのかしら」
「なんでも良いから神様仏様にお祈りしなさい。信じる者は救われると言うではありませんか」
「はい、ありがとうございます。阿弥陀様に一心に帰依するべきかしら」
竹宮先生は浄土真宗なのか。
マリちゃんがおずおずと前に出た。
「よ、よろしくお願いします」
「はい、よろしくいたしますよ~~」
大目玉閣下が触手をうにょうにょ伸ばしてマリちゃんをまさぐった。
『( °∇^)]もしもしポリスメン?』
『なんか、絵面が犯罪だ』
「お、器用度が高いねえ、知力も良いね、もう『
「な、なりますっ!」
「それでは転職の儀を行おう、『
ぽこりとマリちゃんの前に『
マリちゃんが『はい』のボタンを押すと、ドコドコドコと腹に響く太鼓の音が響き、地面を割って髭面で大きなハンマーを持った筋肉男が現れた。
『鍛冶神キター!!』
『ドワーフの神様ぽい~~』
『絵は苦手そう~~』
『そんな事は無いわい、鍛冶神ブコフスは鍛冶工芸の神ぞ、絵も書もかの柱の縄張りじゃ』
ブコフスさまと言うのか、なんだか立派な神様だなあ。
神様の威に打たれ、我々は自然とひざまずき土下座をしていた。
大目玉閣下だけがふよふよ浮いている。
『異世界の餓鬼どもよ、魔法も知らねえ無知なやからよ、よくぞ『
「あ、ありがとうございますっ」
マリちゃんは土下座をしたまま感謝の言葉を述べた。
『鉄を鍛え武具を作れ、木をくみ上げて家具を作れ、皮を縫い合わせ衣服をつくれ、天を地を眺めそれを画板に写し取れ、お前の手から全ての工芸が生み出される。その作品で、人々の生活を豊かにし、人々を楽しませ、人々の心を豊かにせしめろ』
「がんばります、神様」
ブコフスさまがハンマーでドーンと地面を叩くと、マグマがぶっぱぷっぱと吹き出し、マリちゃんの体に吸い込まれていく。
「ああ、神様!」
『マリコよ、口を動かすな、手を動かせ、精進しろや、じゃあな』
ゴゴゴと音を立ててブコフスさまは地面の中に消えていった。
「すごい、神様だ」
「言葉が心に染み入りますね」
「ふうむ、素晴らしい体験だった」
マリちゃんは胸に手を置いて、ブコフスさまの消えた後を熱い眼差しで見つめていた。
「ブコフスさま、私、がんばります!」
「おめでとう、これで君は『
「はい、大目玉閣下にもお世話になりました、ありがとうございます」
「うむ、よきかなよきかな。ちなみに私の絵を描いてデモッターにアップしても良いんだよ」
『うわ、露骨なおねだりキタコレ』
「はい、閣下とブコフスさまの絵姿を今晩アップしたいと思います」
「わあ、それは楽しみだなあ」
大目玉閣下は目を細めて喜んだ。
マリちゃんは椅子に座って、ブコフスさまと大目玉閣下の絵をボールペンでさらさらと描いた。
「「「「すごいーっ!!」」」」
『『『『すげええーー!!』』』』
「おお、私の高貴さが良く出ているね、すごいよ、マリコくん」
「えへへ、ありがとうございます。なんだか、さらに上手く描けるようになりました」
そう言ってマリちゃんは笑った。
『