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第166話 マリちゃんを『Dリンクス』に勧誘する

 チアキとマリちゃんがムカデ鞭を振り回して狩りは進んだ。

 先生方も、ゴブリンに攻撃できるようになってきた。


「ああ、相手に刃物が刺さる感触が……、悪夢に出そうだ」

「矢も怖いですわ」

「鉄砲はちょっとましかもしれませんね」


 宮川先生は片手剣だからなあ。

 初心者用の片手剣はなまくらなのでなかなか切れない。

 基本的に刺殺に使うのが良い。

 そして、まだ敵のサイズが小さいので宮川先生の大柄な体で隠れて飛び道具が撃てない時がある。

 チアキとマリちゃんのムカデ鞭がピシパシと当たりダメージを稼ぐのだな。


 それでも慣れとは恐ろしい物で、宮川先生の動きもどっしりしてきたし、竹宮先生や望月先生も射線をずらして攻撃する動きを覚えた。


『いや、先生方の動き、練れてきたわ』

『宮川先生、盾の使い方上手いな』

『望月先生は良く見ている感じ』

『竹宮先生もだんだん当たるようになったな』


 そんな感じで四階をうろうろ狩り回った。

 魔石が出て、たまにドロップ品が出る。

 普通の出方だよなあ。

 やっぱりみのりが【豪運】の元かな。


 二時間ほど狩って、だんだんと空が暗くなってきたので、上がることにした。

 レベルはマリちゃんが二レベル、先生方も二レベルほど上がった。

 先生方のクラスチェンジは次回かな。

 宮川先生が『戦士』にジョブチェンジするともっと安定感が増すだろう。


「やあ、つかれましたな」

「だんだん当たるようになってきましたね」

「方喰さんとチアキちゃんの鞭のサポートが助かるわー」

「恐縮です」


 チアキは俺を見上げた。


「次回は一人で五階で狩りしていい?」

「一人は危ないぞ」

「【気配察知】はソロ狩りが生えやすいんでしょ、たぶん【気配消し】もそうだよ」

「魔銃が使えないよ」

「ムカデ鞭とナイフで行ってみる」


 チアキはまだ幼いから抵抗があるけど、こいつはもう立派な配信冒険者なんだよな。


「わかった、でも気を付けろよ」

「うんっ」


 チアキはニカっと笑った。


『安心しろタカシにいちゃんっ、俺たち『チアキたん見守り隊』がずっと見ていてやる』

『そうだそうだっ』

『任せとけ、タカシ兄ちゃんっ』


 うーん、それも不安だなあ。


 みなで一階ロビーまで上がり、魔石を換金した。


「宮川センセ、前に貰った配信料でもっと良い剣と盾を買ったらいかがかしら」

「うーん、しかし、あの配信料は『臨海第三ティーチャーズ』のお金だからね」

「良い剣と盾を買った方が良いですね。あ、あと、振込口座をパーティの口座にしておきましょう」

「おお、そうだな新宮」

「私も賛成ですよ、宮川先生、あなたはうちのタンクなんですから」


 先生達とインフォメーションに行った。


「いらっしゃい~~、おや、タカシさんと先生方、今日はなんですか?」

「我々教員は副業が禁止なんだよ、なので、配信料を一つにまとめて『臨海第三ティーチャーズ』の名前の口座にまとめてくれないだろうか」

「かしこまりました、先生方のDスマホをお貸し下さい」


 先生方は素直に女悪魔さんにDスマホを渡した。


「新設口座と、『臨海第三ティーチャーズ』さんへの配信料はまとめてここへと。さて、一昨日の配信料も移しますか?」

「おねがいできるかね」

「わかりましたー」


 山羊角の女悪魔さんはタタンと端末を叩いて処理してくれた。


「これが『臨海第三ティーチャーズ』のDカードと通帳になります」

「ありがとう、簡単だったな」

「なんでもありませんよ」


 女悪魔さんにお礼を言って、俺たちはインフォメーションカウンターを離れた。


「この口座であがなえるのは、おのおのの装備と薬と、あとはコーチ役の君らへの食事だな」

「良いですね、そうしましょう宮川先生」

「あれ、方喰さんの配信料はどうなるのかな」


 泥舟が首をひねった。


「「「……」」」

「え、配信料ってなんですか? 払うんですか」

「マリねえちゃん、貰える奴だよ、スパチャも結構入ってたし」

「え、え、Dチューバーにして貰っただけでありがたいから、お金とか良いんですけど」

「『臨海第三ティーチャーズ』で取ってしまうのもなんだな」

「じゃあ、方喰さん、『Dリンクス』か『オーバーザレインボー』に入る?」


 泥舟が勧誘をした。


「え、あの、足手まといになりますよ」

「レギュラーメンバーじゃなくて、クラン員としてサポートメンバーとしてだよ」

「あ、そんな手が、是非『オーバーザレインボー』に入ってくれたまえ」

「駄目だー、東海林、方喰さんはうちが貰うっ」

「ひゃあ、ほ、本当に良いんですか、お金とか良いんですけどっ」

「マーク代もあるしね、さ、選んで」

「あ、そ、その、タカシさん、お願いできますかっ」

「オッケー、今日から方喰さんは『Dリンクス』のサポートメンバーだ、よろしくねっ」

「マリねえちゃんっ!! よろしくねーっ」

「はい、チアキちゃん、よろしくおねがいします」

「やっぱり『Dリンクス』か」

「初サポーターゲットだぜ」


 パーティが育って行くと、だんだんとメンバーが増えて行く事がある。

 迷宮に入れるパーティ上限は六人だけど、外で待ってるメンバーは別に何人居ても問題は無い。

 そうやって膨れ上がったパーティはクランと呼ばれる。


 『ホワッツマイケル』なんかは、メンバーが二十人ぐらいいて、十人ぐらいはサポートスタッフだ。

 マネージャーや、装備メンテナンススタッフ、医療スタッフに広報用のスタッフもいるらしい。


 うちもそろそろマネージャーというか、会計スタッフが要るかな。

 ちょっと、峰屋パパに相談すべきだろうか。

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